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また、千代が病に倒れる直前、おもちゃを粗末に扱い、千代にたしなめられていた幼い息子の篤二が、寝込んだ母を、不安そうに黙って見守る姿にも胸が詰まった。
さらに、一歩引いた立場で千代を案じる大内くに(仁村紗和)。たった一人、千代を失った悲しみに沈む栄一の姿を捉えたラストシーンの直前、栄一を案じつつ、無言で部屋の扉を閉めたのもくにだ。一言も発しないにもかかわらず、愛人である自分を受け入れてくれた千代への思いがにじむその姿も印象的だった。
熱弁をふるう栄一の元気な姿と無言の対比。吉沢の演技力の幅広さとともに、緩急をつけた演出がここまで心に残った回は他にない。この悲しみから栄一がどう立ち直り、これからの人生を歩んでいくのか。これまで期待を裏切ることのなかったドラマだけに、元気だった頃の千代の姿を胸にとどめつつ、この先の展開を見守っていきたい。(井上健一)