【芸能コラム】“ジャニーズドラマ”だけに終わらない見応えがある「真夏の少年」

2020年9月18日 / 07:03

 次世代のジャニーズを担うグループとして人気を集めているジャニーズJr.「美 少年」のメンバーが総出演する連続ドラマ「真夏の少年~19452020」(テレビ朝日系)。ジャニーズJr.のお披露目ドラマかと思われたが、金言にあふれた、見応えのある作品に仕上がっている。

(C)Michell

 「美 少年」は藤井直樹、那須雄登、浮所飛貴、岩﨑大昇、佐藤龍我、金指一世からなるグループで、2016年に「東京B少年」のユニット名で結成されると、メンバーの増員や改名を経て今に至る。その名の通り、抜群のルックスを武器に活躍中で、最近はバラエティー番組などにも出演しているため、ジャニーズに疎い人でも、きっと一度は目にしていることだろう。

 そんな彼らが、グループとして初主演を務める本作は、クラスメートを自殺未遂に追いやったと見なされて停学処分を受ける悟(佐藤)をはじめ、それぞれに事情を抱える高校生たちが、戦時中から現代にタイムスリップしてきた軍人の三平(博多華丸)と織り成すひと夏の成長物語だ。

 前クールの「年下彼氏」(テレビ朝日系)では、関西ジャニーズJr.の伊藤篤志、「なにわ男子」「Aぇ! group」「Lil かんさい」のメンバー総勢19人が、桜井日奈子、浅川梨奈、小島藤子といった若手女優と淡い恋物語を繰り広げた。とはいえ、15分間の短い時間で、1話につきJr.メンバーの1~3人が出演するオムニバスであり、さらに、ドラマ初出演のメンバーも多かったことから、“お披露目”感が色濃く出ていた。

 そのため、「美 少年」以外のJr.メンバーも出演している本作も、その類いのものかと思われた。しかし本作は、三平がタイムスリップするSFと、悟が加害者扱いされている自殺未遂問題を二本柱に据え、友情、いじめ、毒親、家族の絆、恋愛、将来の夢、SNSトラブル、町開発、戦争といったさまざまな要素が散りばめられていて、1話ごとに高い満足感が得られる仕上がりになっている。

 華丸のほか、長谷川京子が町の命運を握る権力者役、水野美紀が毒母役、神保悟志が高校教師役、草村礼子が三平の娘役で出演しており、ベテラン勢の好サポートが作品の重厚感にもつながっている。もちろん、美 少年のメンバーや学生役キャストのみずみずしい演技も魅力的に映る。

 何よりも視聴者の心を捉えているのは、悩み多き高校生たちに向けて、43歳で出征し、戦時中のグアムから現代にタイムスリップしてきた三平が投げかける説得力ある名言の数々だ。

 ぬれぎぬを着せられたまま何もしない悟には、「怒りをどう生かすかで人間の価値は決まる」「自由は与えられるものじゃなく、自分で得るもんだ」と力強い言葉で魂を揺さぶった。

 悪意を込めて、他人を「あざとい」と評する人たちには、「非難するなら責任を持ってください」とたしなめる。

 「みんなが、私をこうしたんじゃん」と思い通りにいかないことを他人のせいにする女子高生には、「流されたのは自分じゃないの?」とズバリ指摘。

 家族関係に悩む篤(浮所)には、「家族とはバラバラに暮らしていても片時も忘れることができない、ものすごい厄介なもの」と説く。

 さらに、「今は戦後か? 新しい戦争の始まる前ともいえる」と平和に見える現代に警鐘も鳴らす。

 
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