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AI企業にアルゴリズムの学習用として著作権作品の利用を許諾するライセンスを与えることがどれほど複雑であるかを理解するには、あなたがヨーロッパの著作権管理団体を運営していると想像してみてほしい。作曲家や音楽出版社にロイヤリティを分配する団体だ。この例のために、仮にその団体をCOMPLEX(Cooperative for Original Music Publishing Licensing Excellence=優れたオリジナル音楽出版ライセンス協同組合の略)と呼び、架空の国フリードニアにおける演奏権と機械的複製権を管理し、年間約3億ドル(約441億円)のライセンス収入を得ているとしよう。
多くのAI企業はすでにあなたが管理する作品をスキャンしている(ここでは仮定の話なので「おそらく」を省略する)。あなたはそれに対して料金を払わせたいと考えている。そんなある日、別のAI企業がやってきて、実際にそうしたいと言ってきた。つまり、あなたが管理するすべての作品をスキャンしてアルゴリズムを学習させたい。その見返りとして、彼らは一度限りの3億ドルの支払いを提供する。これ以上の義務は双方にない。あなたがしなければならないのは契約書にサインしてお金を受け取るだけで……その後はどうなるのか?
あなたならこの契約を受けるだろうか? この問いは、スウェーデンの著作権管理団体STIMが現地時間9月9日にAI学習のための初の包括的ライセンス契約を結んだと発表したことで、より切実なものになっている。その前には、8月初旬にElevenLabsとKobalt、Merlinの間で契約が結ばれている。アメリカではAIアルゴリズムの学習のために作品をコピーすることがそもそもライセンスを必要とするのかどうかがまだ不明確なので、これらの契約は実験とみなすべきだろう。
筆者の考えでは、たとえ可能だったとしても、この契約を結ぶべきではない。なぜなら、どの権利をどの地域で管理しているのかによって契約可能性が変わるからだ。作品を分析するにはそれを取り込む必要があり、そのためにはコピーを作成する必要がある。これは著作権法上、機械的複製にあたる。AIアルゴリズムを使うことがコピーに該当するかどうかは決着していないが、アルゴリズムを学習させることは明らかにコピーを伴う。つまり、AI企業は作品を1度コピーするだけで済む可能性がある。
その場合、3億ドルの支払いは一度きりのものになるかもしれない。そして一度受け取ってしまえば、作曲家たちは自分たちの作品を学習したアルゴリズムと競争しなければならなくなる。しかも、権利者の許可なしにそのような契約が結べるのかも不明だ(STIMやKobaltの契約はオプトイン方式だ)、さらに契約の適用範囲も不確かだ。だが最大の問題は、権利者がすでに結ばれた契約に対して、後から対策をしなければならない点にある。
CISACが2028年の生成AI音楽の価値を推定した40億ユーロ(6,931億円)という数字に基づく「40億ユーロの問い」は、権利者がライセンス可能な権利をてこにして、ライセンスできない権利をどうコントロールするかということだ。これは実務的にも戦略的にも重要である。実務的には、アルゴリズムがどの作品にどれほど依存しているかを把握しなければ、締結した契約から得られるロイヤリティを分配できない。(例えば3億ドルの契約を受けた場合、COMPLEXはその収益をどう処理するのか?)戦略的には、AIが著作権曲をもとに新しい曲を生み出すのであれば、権利者は継続的な収益を得るべきである。その理由は、それらの新しい創作物が彼らの作品に基づいていること、そしてそれらが必然的にオリジナルと競合することにある。
ドイツのGEMAが2024年9月に提示したライセンスモデルでは「学習データに対する一度限りの一括払いは、生成される収益を考えれば作者を補償するには全く不十分だ」とされている。このモデルでは、作曲家が新しい作品の生成に自分の作品がどの程度使われたかに基づいて支払いを受けることを提案している。STIMのライセンスはさらに一歩進め、生成AIアルゴリズムで作品が使われた際に収益の一部を還元するだけでなく、そのAI音楽が利用されたときにも再度補償する可能性がある。
これは非常に強力なてこだ。この契約はAI企業に対して、学習のための作品利用だけでなく、その結果生成された作品にまで義務を課すからだ。特に興味深いのは、多くの国ではAIが生成した音楽は著作権で保護されていないため、自由に利用できる点だ。だがこの仕組みによって、契約上のルールに基づいて権利者がその作品から利益を得られる可能性が生まれる。もちろん、それがうまく機能するかどうかは不明であり、2035年に使われるAIライセンスが現在のものと同じ形をしているとは想像しにくい。それでも、新しいビジネスの形を作る最初の動きが始まっており、それは大きな影響を及ぼす可能性がある。来週は、これらが一見しただけではわからない形でどのように影響を与えるのかについて掲載する予定だ。
Text: Robert Levine
Photo: Courtesy of Billboard
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