<ライブレポート>ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO──異才同士が火花を散らす、話題のコラボ作『LINK』を携えた熱狂のビルボードライブ公演

2025年5月7日 / 16:30

 2016年にアルバム・デビューして以来、ほぼ毎年作品を世に送り込んでいる人気アルト・サックス・プレイヤーのユッコ・ミラー。2014年にモントルー・ジャズ・フェスティバルへの出演を機に快進撃を続ける3人組 H ZETTRIO。意外なことに、それまで両者の面識はなかったという。そんな中、次のアルバム制作を構想していたユッコが突如(?)共演を思いつき、昨年7月にオファーしたところ、H ZETTRIOが快諾。互いに5曲ずつ書き下ろし、2ヶ月後にはレコーディングを実施。こうして昨年12月に『LINK』を発表してファンを驚かせたのは記憶に新しい。

 そしてこの度、その『LINK』を引っ提げての待望のライブが4月17日にビルボードライブ大阪、4月20日にビルボードライブ東京で行われた。両者が同じステージに立ったのは、いずれもH ZETTRIOのライブにおけるサプライズ共演で、昨年10月の横浜BAY HALL公演での2曲と、今年3月の浜離宮朝日ホール公演での1曲のみ……本格的な共演はこれが初となっただけに両公演とも多くの人達が詰めかけたのは言うまでもない。

 筆者が観たのは東京公演の2ndステージ。メンバー登場の時点で目を引いたのが、ユッコがH ZETTRIOとお揃いの衣装を身に纏っていたこと。さらに鼻は蛍光ピンクに光っており、演奏前から気合いが伝わってくる。

 演奏は『LINK』の1曲目にも収録されている「Emotional」でスタート。曲の中間部でテンポがばらけてフリー・インプロヴィゼーションになると、早くもユッコが曲名のごとくエモーショナルに吹きまくり、追随するH ZETTRIOとのインタープレイが炸裂する。ちなみに、ユッコのアルトはYAMAHA YAS-62(旧型)で、マウスピースとリガチャーはBeechler、リードはLegere The American Cut(新素材)とのこと。

 ステージは、7曲目の「甘い生活」(野口五郎オリジナルで、H ZETTRIOのカバー企画番組で披露された楽曲)を除き、すべてがオリジナル曲で構成されていた。「危険なアリバイ」では、刑事ドラマを想起させるタイトルとは裏腹に、H ZETT Mが鍵盤を連打に次ぐ連打でソロを展開。演奏後には大きな拍手が起こった。

 「Moments」は、ユッコはそれまでに吹いたことがないタイプの曲と言い、逆にユッコ作のバラードの4曲目「Sent of the Day」は、H ZETTRIOが“彼女と出会っていなければ演奏しなかったかもしれない曲調”と言い、互いの新たな一面が垣間見える楽曲だった。

 続くレゲエ調のリズムが魅惑の「絶体絶命」では、H ZETT KOUのドラム・ソロが4分音符をキックしながらの変幻自在のスティック捌きで引き込まれた。コードがAmとFを繰り返すラテンのモントゥーノを刷新したかのようなピアノのイントロ・リフでスタートした「Free Fall」では、H ZETT NIREとKOUが繰り出す軽快なラテン・ビートを追い風に、ユッコが縦横無尽のアルト・ソロを展開。続く「甘い生活」ではピアノとサックスのソロ・バトルがスリリングで手に汗を握る。ピアノとアルトのデュオでスタートした珠玉のバラード「日付変更線」では、ユッコの切々と吹くアルとの音色に酔いしれていると、ステージはあっという間に終盤へ。

 Key=E♭7の9曲目「All Set(Funky)」はタイトル通りファンキーなナンバー。ユッコのグルーヴ満点のアルト・ソロに続いてはMのみによるピアノ独奏も。ホンキートンクのようなブルージーなアプローチの中にモーダルな要素も加味し、88鍵を網羅したかのようなレンジの広いダイナミックなプレイで魅了させられる。続いてはユッコが曲の入り口が最も難しかったと言う「Strong Point」へ。そのユニゾン・イントロを一糸乱れずにクリアすると、その勢いのままユッコがソロの最後を天空を突き出すハイ・ブローで締めくくり、それを受けたMがショルダー・キーボードで白熱したソロをとるにつけ、場内のボルテージはさらに上昇。そして本編最後は、前述した横浜BAY HALLで「危険なアリバイ」と共にプレイされた「Dragon Funk」が飛び出す! ちなみに、曲名はKOUがユッコの後ろに昇り竜が見えて思い付いたという(笑)。そのユッコのアグレッシヴなフレーズがこれでもかと炸裂すれば、ここでもMがショルダー・キーボードによるスペイシーなソロを展開。また、このときのNIREのローからハイ・ポジションまで躍動感に満ちたベース・バッキングも白眉で、場内は割れんばかりの拍手が沸き上がった。

 アンコールはアベレイジ・ホワイト・バンドのヒット曲で、ジャズではキャンディ・ダルファーのカバーでも知られるポップ・ファンク・チューン「Pick Up The Pieces」だ。Mのピアノ・ソロは左手のブロック・コードを半音上下にずらしてのモーダルなアプローチがスリリングで、続くベースとドラムのソロ・バトルも熱気十分。とどめはユニゾン・エンディングがドンピシャの着地で、場内の興奮は頂点に。さらにサプライズとして、6月1日に配信予定の新曲「Mood in the Dancing feat. Yucco Miller」が一足先に披露された。思わぬプレゼントに観客も大満足の様子で、東京では初となるこの共演ステージは、大きな拍手とともに幕を閉じた。

 なお、両者によるコラボ第2弾の制作も進行中とのことで、今後の展開にも期待が高まる。

Text:石沢 功治
Photo:板場 俊

◎セットリスト
【ユッコ・ミラー feat. H ZETTRIO】
2025年4月20日(日)東京・ビルボードライブ東京 2ndステージ
1.Emotional
2.危険なアリバイ
3.Moments
4. Scent of the Day
5. 絶体絶命
6. Free Fall
7. 甘い生活(cover)
8. 日付変更線
9. All Set(Funky)
10. Strong Point
11. Dragon Funk
En1. Pick Up The Pieces
En2. Mood in the Dancing feat.Yucco Miller

◎公演情報
【Special Speed Music Night with H ZETTRIO】
2025年3月6日(木)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA ※公演終了
2025年6月6日(金)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
2025年9月13日(土)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
2025年12月6日(土)神奈川・Billboard Live YOKOHAMA

【STANDING LIVE -Mood in the Dancing- H ZETTRIO with YUCCO MILLER】
2025年8月1日(金)東京・東京キネマ倶楽部


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