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バズ・ラーマン監督による名作映画をミュージカル化し、トニー賞で最優秀作品賞をはじめとした10部門を受賞した「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」が開幕した。ゴージャスの限りを尽くし、世界中で大ヒットした約70曲をマッシュ・アップして作られた本作は、1899年のパリを舞台に、ムーラン・ルージュのスター、サティーンとアメリカ人作曲家クリスチャンとの激しい恋を描く。クリスチャンを井上芳雄とともにダブルキャストで演じる甲斐翔真に開幕直前にインタビュー。役作りについてや本作の見どころを聞いた。
手応えしかないです(笑)。先日、帝国劇場の舞台セットを初めて見たキャストたちの反応を撮った動画が公開されましたが、お越しいただいた皆さんも同じような反応をなさると思います(笑)。「え? ここは本当に帝劇?」となると思うので、まずはそのセットから手応えを感じています。
比べることではないですが、今までで1番、責任重大だなと思いました。今後も上演が続いていく作品だと思いますし、自分の代表作になれたらいいなとも思います。たくさんの作品をご覧になっている日本のミュージカルファンの皆さまを驚かせられる作品だと思いますし、革命的なものになったらいいなと思います。
クリスチャンは実はすごく難しい役柄だと思います。劇中のムーラン・ルージュで起こった出来事は過去の話で、今現在はクリスチャンが一人で、その当時を振り返っているという構造になっています。なので、ストーリーテラーという立ち位置でもあるし、過去の物語の中でのクリスチャンもいる。その演じわけがとても難しい。演じる上では、クリスチャンの若さやアグレッシブさを大切にしたいと思っています。彼は、自分がこうなりたいというパワーや根拠のない自信があるんですよ。それは若さゆえですが、この役柄にとってとても大事な要素で、そうした彼の勢いがあるからこそ、ここで描かれている彼の運命につながるんだと思います。
そうですね、彼がたくさんのことを経験したいと思い、行動するパワーにはとても共感できます。僕はまだ25年しか生きていないから、知らない世界の方が多い。だからこそ、知りたいという気持ちが大きいですし、世界にも飛んでいきたいと思っています。昨年、初めてニューヨークに行き、そこで「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」を見てきました。その時の僕は、パリを訪れた時のクリスチャンと似ていたと思います。クリスチャンは、パリに着いた日に、ロートレックやサンティアゴ、サティーンに出会って、その日のうちに恋に落ちます。展開がとんでもなく速いんですよ。でも、その歯車が一気にあって、バーッと物事が進み出す状況はすごく理解できます。環境が変わった瞬間に滞っていた何かが弾けるというのは、きっと多くの方に共感していただけることだと思います。
芳雄さんとダブルキャストだと最初に聞いたときは、本当に驚きましたが、とてもうれしいことですし、楽しくやらせていただいています。稽古場では、「ここはこうだよね」と芳雄さんから声をかけてくれ、役について話してくださるので、僕をダブルキャストの俳優として扱ってくださっているのを感じます。もちろん、それは当たり前のことなのかもしれませんが、何しろレジェンドですから。僕は勝手に生徒と先生のような感じになるのではないかとイメージしていたので、“俳優と俳優”として接していただけていることがすごくうれしいです。
本番ではプリンシパルはさまざまな組み合わせで上演しますが、稽古は分けた方がやりやすいということで、「エレファント・チーム」と「ウィンドミル・チーム」の2チームで行っていました。「エレファント・チーム」は芳雄さんと望海さん、「ウィンドミル・チーム」は僕と平原さんだったので、おのずと平原さんとお芝居をする回数が多かったのですが、平原さんはとても不思議な吸引力のある人だと思います。1本道を歩いていたら、気付くと後ろにたくさん人が連なっているという印象です。望海さんは、みんなで肩を組んで横一列で歩いていくようなイメージ。その真ん中にいるのが望海さんです。
愛と感じる瞬間は、いろいろな場面でありますよ。個人的には、“思い”を感じた時に愛を強く感じます。人間のすごいところは、目に見えないものを伝い合えることだと思います。愛も目に見えないものですが、それを感じられて、伝えられるのは人間の特権なんじゃないかなと。伝えたいとか、幸せな気持ちに満ちてもらいたいとか、共有したいという思いから愛を感じます。
お客さまがこの作品を見た時の感情を想像すると、僕たちまで楽しみになります。この帝劇で、誰も見たことがない空間を全力で作り上げて、両手を広げて待っていますので、そこに抱かれにきてほしいです。
(取材・文・写真/嶋田真己)
「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」は、6月29日~8月31日に都内・帝国劇場で上演。
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