エンターテインメント・ウェブマガジン
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』(6月30日公開)
若者の部屋からザ・ビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」が流れ、アポロ11号の月面着陸祝賀パレードで沸く1969年8月のニューヨーク。考古学者で冒険家のインディ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)の前に、旧知のヘレナ(フィービー・ウォーラー・ブリッジ)が現れ、インディが若き日にヘレナの父バジル(トビ―・ジョーンズ)と共に発見した伝説の秘宝「運命のダイヤル」について語る。
それは人類の歴史を変える力を持つとされる究極の秘宝であり、その秘宝を巡って、インディは因縁の宿敵である元ナチスの科学者フォラー(マッツ・ミケルセン)を相手に、全世界を股にかけた争奪戦を繰り広げることになる。
「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作。前作から15年ぶりの新作となり、前4作を監督したスティーブン・スピルバーグはジョージ・ルーカスとともに製作総指揮に回り、ジェームズ・マンゴールドが監督を引き継いだ。音楽はおなじみのジョン・ウィリアムズ。サラー役のジョン・リス・デイビスがカムバックし、アントニオ・バンデラスも登場。そしてラストには、あっと驚くあの人も…。
このシリーズは、毎回とんでもない秘宝が登場するが、今回も「アンティキティラ」という秘宝の奪い合いが、第2次大戦末期の1945年と、この映画の現在である69年という二つの時代で描かれる。
というわけで、CGの助けを借りた若き日のインディと実年齢とクロスする69年のインディをフォードが演じ分けているのだが、それが『レイダース 失われたアーク《聖櫃》』(81)からの40年という月日の流れとも重なって見えるところがあり、感慨深いものがあった。
そして、冒頭の連続アクション、敵はナチスドイツ、秘宝の奪い合い、勝ち気な女性相棒と少年、車やバイク、乗馬、飛行機によるチェイス、超常現象など、シリーズに一貫する“決まりごと”をきちんと踏襲し、連続性を感じさせるところが面白い。
また、前作『インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国』(08)のときは、スピルバーグの演出にスピード感の衰えを感じたので、今回の見事なアクションシーンを見ると、マンゴールドへの交代は正解だったと思う。
そして、明かされる秘宝の特性、フォードの風貌の変化、ちょっと泣けるラストも含めて、この映画の核となるのは“時の流れ”だろう。そう考えると、ハリソン・フォードの“最後のインディ・ジョーンズ”としては、実にいい形での幕引きになったと思う。
(田中雄二)