【大河ドラマコラム】「青天を衝け」第三十回「渋沢栄一の父」栄一に受け継がれていく父・市郎右衛門の教え

2021年10月13日 / 12:59

 10月10日に放送されたNHKの大河ドラマ「青天を衝け」第三十回「渋沢栄一の父」では、新政府による廃藩置県の断行と、その騒動に巻き込まれた主人公・渋沢栄一(吉沢亮)の奮闘が描かれた。他にも今回、栄一は五代友厚(ディーン・フジオカ)や料亭の女中・大内くに(仁村紗和)と出会うなど、相変わらず盛りだくさんの内容。その中で改めて振り返ってみたいのが、サブタイトルにもなっている栄一の父・市郎右衛門(小林薫)にまつわるエピソードだ。

(左から)渋沢ゑい役の和久井映見、渋沢市郎右衛門役の小林薫、渋沢栄一役の吉沢亮

 今回の冒頭、内輪もめを繰り返し、物事が進まない新政府に失望した栄一は、国の行く末を案じる中、幼い頃、市郎右衛門から聞かされた、上に立つ者の心掛けを思い出す。

 「公方様でも、親でも師匠でも、人の上に立つ者は皆、上(かみ)だ。上に立つ者は、下の者への責任がある」

 そして栄一は、さらに妻・千代(橋本愛)の前で次の言葉を口にする。

「その通り。下々がいくら頑張っても、上に立つ者がよほどしっかりしてねえと、国も人も守れねえ」

 この教えは、これまで栄一の行動の基本指針となってきたが、今回もそれに従った言動が繰り返される。

 まず、井上馨(福士誠治)が廃藩置県の断行を決意すると、栄一は藩がなくなることで職を失う士族たちの暴動が起きることを憂慮。「武力で抑えつければいい」と答える井上に、「上に立つ者は、命を下すとき、まずそれを受ける民のことを考えねばなりませぬ」と告げ、対策を講じるよう献言する。

 さらに、大久保利通(石丸幹二)に国庫から多額の軍事費の支出を命じられた際も、栄一は「民の税を、振れば出てくる打ち出の小づちと同じにされては困る」と反論した。

 いずれも、農民から幕臣となり、幕府崩壊後は駿府藩で旧幕臣たちと共に事業を起こすなど、世の中のさまざまな立場を経験してきた栄一ならではの言動と言える。

 その根本にあるのが、幼い頃の父の教えだったことが改めて裏付けられた形だ。だが、そうやって自らのポリシーを貫いた結果、数々の実績を上げてきた栄一率いる改正掛は、大久保によって廃止されてしまう。

 
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