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公開中の映画『デスノート Light up the NEW world』、『何者』、連続ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ系)に出演し、CMの“鬼ちゃん”役でも人気の菅田将暉。2016年の出演作は、これからの予定も含めて映画9本、連ドラのレギュラーが2本と、今最も旬な若手俳優の一人である。
08年にジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストとなったことをきっかけに芸能界入りした経歴に加え、手足がスラリと伸びた細身の体と涼しげな顔立ち。紛れもなく今風のイケメンだが、『共喰い』(13)、『そこのみにて光輝く』(14)などで演技も高く評価されており、その活躍は決してルックスだけが理由ではない。
『デスノート Light up the NEW world』(以下、『デスノートLNW』)では、死神のノート“デスノート”争奪戦に加わるサイバーテロリスト役。『何者』で演じたのは、屈託のない性格で要領よく就活の荒波を乗り越えて行くごく普通の大学生。「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」では、作家兼モデルとして活動する才能豊かな大学生役。現実味のある人物からフィクション性の高いキャラクターまで、幅広い役を生き生きと演じてみせる。
人気と実力を兼ね備えた俳優と言えるが、その魅力はどこにあるのだろうか。
菅田の特徴としてまず挙げたいのが、その演技スタイルだ。『海月姫』(14)では女装するために食事を制限して体重を落としたというが、『デスノートLNW』の劇場用パンフレットを読んでも、入念に役作りをしている様子がうかがえる。
その一方、撮影現場では直感的な芝居も披露。雑誌『J Movie Magazine』Vol.12では菅田の特集が組まれているが、そこには出演作の監督たちの証言も掲載されている。それによると、『何者』の三浦大輔監督は菅田について「直感やその場で感じたことを頼りにやるんです。」と語り、『セトウツミ』(16)の大森立嗣監督も彼のアドリブを評価している。
入念な役作りと、直感的なアドリブの瞬発力。その二つが、菅田の生き生きとした演技を生み出していると言えそうだ。
さらに、他の俳優と共演した時のアンサンブルの良さも見逃せない。これまでの菅田の出演作を振り返ってみると、単独主演もあるが、助演もしくは三人以上が共演する形での主演級の作品が多いことが分かる。
『何者』は、佐藤健、有村架純、二階堂ふみといった若手実力派たちとの共演、『デスノートLNW』の東出昌大、池松壮亮との演技合戦も見応えがある。いずれも、他の共演者とのバランスの良い演技が印象的だ。
主演、助演を問わず臨機応変に演じられることも、菅田が多くの作品で活躍できる理由ではないだろうか。
来年はNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」や、『週刊少年ジャンプ』連載の人気コミックを実写映画化した『銀魂』といった話題作への出演が決まっている。それぞれ重要な役を演じるそれらの作品で、菅田がどんな演技を見せてくれるのか。今年最も旬な若手俳優の活躍は、来年も続きそうだ。
(ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)