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シリーズ24作目でダニエル・クレイグが4度目のジェームズ・ボンドを演じた『007 スペクター』が12月4日から公開される。
今年は『キングスマン』『コードネーム U.N.C.L.E.』とスパイ映画の話題作が公開されたが、最後に真打ちの「007」が登場といったところだ。
007シリーズには、毎回オープニングのアクションで度肝を抜かれるが今回もすごい。メキシコシティの死者の日、仮面をつけた男女が行列にまぎれながらホテルに入る。仮面を取ると男はボンドでいきなりラブシーンかと思いきや、ボンドはホテルの窓から外に出る。そこからボンドが建物の屋上を走ってテロリストのアジトの対面にたどり着くまでをワンカットで見せ、その後は、爆発、建物の崩壊、ヘリコプター内での戦いへと矢継ぎ早に展開していく。もはや満腹の感があるが、これはオープニングに過ぎないのだ。
そして、ボンドが振り向きざまに銃を撃つオープニングタイトル、男性歌手(サム・スミス)が歌い上げる主題歌、ローマ、オーストリアの雪山、モロッコの砂漠と目まぐるしく変化する舞台、悪の犯罪組織スペクターと宿敵(クリストフ・ヴァルツ)の存在、花を添えるボンドガール(レア・セドゥ、モニカ・ベルッチ)、列車内でのアクション、腕時計などに仕込まれた秘密兵器、ボンドの愛車アストン・マーティンDB5など、シリーズの伝統を踏襲した数々の必殺技を繰り出して盛り上げる。
また、前作『007 スカイフォール』(12)に続いてサム・メンデスが監督しているだけに、ドラマは前作の流れをくみながら、ボンドの内面や心の傷、スパイとして生きることへの葛藤、あるいは英国情報部内の対立構造なども描かれる。Q(ベン・ウィショー)、M(レイフ・ファインズ)、マネーペニー(ナオミ・ハリス)らとボンドとの“チームワーク”が強調されているのも面白い。
シリーズ当初からボンドを苦しめた犯罪組織スペクターを復活させ、それとの戦いに一区切りをつけた本作は、クレイグ版ボンドの集大成の感もあり、彼にとっては本作が最後のボンド役とのうわさもある。その意味でも一見の価値ありだ。(田中雄二)