【コラム 2016年注目の俳優たち】 第13回 伊原剛志&柄本佑&山本舞香 俳優の魅力を引き出す「金曜8時のドラマ」 「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」

2016年8月9日 / 17:05
「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」(左から)柄本佑、伊原剛志、山本舞香

「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」(左から)柄本佑、伊原剛志、山本舞香

 人情ドラマの「人情」とは「人の情け」と書く。ドラマで「人の情け」を表現するのは俳優であるから、ある意味、俳優の魅力を最も引き出すのが人情ドラマと言えるかも知れない。そんな作品を次々に送り出しているのが、テレビ東京系「金曜8時のドラマ」だ。

 「金曜8時のドラマ」とは、2013年からテレビ東京系でスタートした毎週金曜夜8時の連続ドラマ枠の名称で、現在は「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」が絶賛放送中。宿なし、職なしの無一文だが食の達人という謎の男ヤッさんと、転職を繰り返した結果、宿なしになってさまよっていたところをヤッさんに救われた弟子のタカオのコンビが、東京の築地市場を中心に、食に関する事件を解決していく。

 ヤッさんを演じるのは、『硫黄島からの手紙』(06)、『超高速!参勤交代』(14)などで活躍する伊原剛志。タカオに扮(ふん)するのは、NHKの朝ドラ「あさが来た」(15~16)での好演も記憶に新しい柄本佑。この二人が、山本舞香(『映画 暗殺教室―卒業編―』(16))演じるそば職人を目指す女子高生ミサキなど、周囲の人々を巻き込みながら物語が展開する。

 これまで「金曜8時のドラマ」枠で放送された人情ドラマは、数々の俳優たちの魅力を引き出してきた。

 「三匹のおっさん ~正義の味方、見参!!~」(14)では、北大路欣也、泉谷しげる、志賀廣太郎という意外性のある熟年トリオを主人公に起用。それぞれの持ち味を生かして、ご町内の事件を解決する三人組の活躍を痛快なドラマに仕上げた。好評を博した本作は、翌年に続編も放送されている。

 さらに、「保育探偵25時 花咲慎一郎は眠れない!!」(15)では、『ちはやふる』二部作(16)などで活躍する若手俳優・真剣佑をいち早く連ドラに起用。昨秋は、国民的映画シリーズのテレビドラマ版「釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助」(15)で、濱田岳が西田敏行の当たり役に挑戦して、新たな浜ちゃん像を作り上げた。

 「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」も、移転直前の築地市場が舞台という話題性や毎回登場する食ネタに加えて、きっぷがいい伊原&ちょっと頼りない柄本の凸凹コンビの掛け合いが大きな見どころ。山本は、トレードマークだったロングヘアをバッサリ切って、ショートカットとボーイッシュな装いで雰囲気を一新。年の離れた二人と物おじせずに渡り合うミサキをはつらつと演じて、凸凹コンビにフレッシュな魅力をプラスしている。

 物語は、毎回事件に立ち向かう凸凹コンビの活躍と共に、ヤッさんの過去にまつわる謎(そもそも本名は…?)もはらみつつ進行してゆく。一見、保守的に思われがちな人情ドラマで意欲的な取り組みを見せる「金曜8時のドラマ」。「ヤッさん 築地発!おいしい事件簿」も、徐々に明らかになるヤッさんの過去と共に、俳優たちからまた新たな一面を引き出してくれるのではないかと、期待を込めて見守っている。

 (ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


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