【コラム 2016年注目の俳優たち】 第4回 高嶋政伸&細田善彦 好青年転じて一癖ある北条親子へ 「真田丸」

2016年6月7日 / 13:56
北条氏直を演じている細田善彦

北条氏直を演じている細田善彦

 放送開始から半年が経ち、間もなく折り返しを迎える「真田丸」。ここからはいよいよ関東の覇者・北条氏を滅亡に追い込む豊臣秀吉(小日向文世)の「北条攻め」に突入する。

 その北条家の4代目当主・氏政を演じているのが、高嶋政伸。表面上は秀吉に従う他の大名たちとは対照的に、敵意をむき出しにした姿は一際強い存在感を放つ。

 高嶋といえば、人気を博した「HOTEL」シリーズ(90~)など、もともとは正義感の強い好青年イメージで売ってきた俳優。大河ドラマ出演は「真田丸」で5度目となるが、7年前の「天地人」(09)でも主人公・直江兼続(妻夫木聡)の父・樋口惣右衛門を温厚に演じていた。

 だが近年は一転、不敵な笑みの裏に悪意を秘めた人物を演じる機会が増えている。「DOCTORS 最強の名医」(11~)シリーズでの主人公のライバル医師役、『映画 暗殺教室』(15)で演じた教官…。

 北条氏政もそれらの延長線上にあると言えるが、先日NHKの「スタジオパークからこんにちは」に出演した際、「最終的には北条一族の愛の物語になる」、「北条攻めの後で大きくキャラクターが変わる」と語っていた。今後はより人間味ある一面が見られるかもしれない。

 その氏政の嫡男で5代目当主の氏直を演じているのが細田善彦。高嶋同様、以前はスマートな好青年という印象が強かったが、近年は一皮むけた姿を見せている。

 「ウルトラマンX」(15)では髪を短く切って、防衛チーム“Xio(ジオ)”の体育会系熱血隊員を好演。映画業界の底辺で生きる男たちを描いた映画『下衆の愛』(16)では、自主映画の監督に身も心も捧げる助監督役で、名作『蒲田行進曲』のヤス(平田満)を思わせる熱演を披露した。

 とはいえ、怪演が話題を集めた「ライフ」(07)など、しばしば一癖ある人物も演じてきた細田にとっては、その方向性がより明確になったと言うべきかもしれない。

 氏直役でも人間臭い芝居を披露。第8話「調略」では、真田昌幸(草刈正雄)らに高圧的な態度を取りつつも、実権を父に握られたままの当主のジレンマを、硬軟取り混ぜた芝居で表現。先日の第22話「裁定」でも、秀吉の要求を無視する父に違和感を覚えながらも、黙って従わざるを得ない口惜しさが表情から伝わってきた。

 果たしてその氏直が、一族滅亡の危機に際して見せる表情とはどんなものか。役者としての成長を見せる細田の演技に注目したい。

 高嶋と細田の共通点は他にもある。高嶋が往年の人気俳優・高島忠夫の三男であることは周知の事実だが、実は細田も有名老舗和菓子屋の次男。泥臭い真田家の面々や百姓上がりの豊臣家と比べて、ずる賢さの中にも品格漂う北条家のたたずまいは、そんな2人の育ちの良さからにじみ出たものかもしれない。

 好青年から転じて一癖ある俳優へ。似た歩みをたどる2人が、最大の見せ場となる「北条攻め」でどんな表情を見せるのか。その真価が発揮されるのはこれからだ。

 (ライター:井上健一):映画を中心に、雑誌やムック、WEBなどでインタビュー、解説記事などを執筆。共著『現代映画用語事典』(キネマ旬報社)


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