肺炎のため23日に91歳で死去した歌舞伎の女形で、人間国宝の中村雀右衛門さんの葬儀告別式が29日、東京・青山葬儀所でしめやかに営まれた。
告別式には中村吉右衛門や松本幸四郎ら歌舞伎俳優やファン500人が参列。雀右衛門さんの名前にちなみ、スズメが羽を広げて旅立っていくことをイメージしたという祭壇の中央には、2004年に文化勲章を受章した際の柔和な表情の遺影が。当たり役の「揚巻」役で身に着けた舞台衣装も飾られ、ひつぎには、台本などが納められた。
喪主で長男の大谷友右衛門は「父の最後の舞台にお越しくださったことをありがたく思います。父は飛行機が着陸したように息を引き取り、安らかに眠りだしました」と、女形としての師匠でもあった父への思いを語った。
坂田藤十郎は「お別れすることが寂しゅうございます。いつもあなたのことを素晴らしい信念のある方だと思っておりました。もう一度あなたと一緒に舞台に立ちたかった。きっと我々以上にお疲れになったと思います。どうかゆっくりとお休みになり、後輩たちの芸を向こうの世界から優しく厳しく見守ってやってください」と、弔辞を述べた。