<ライブレポート>ケイティ・ペリー、久々の日本公演で深めたファンとの絆「みんなは、私にとって特別!」

2025年12月29日 / 11:00

 ケイティ・ペリーの7年ぶりの来日公演【The Lifetimes Tour】が、2025年12月3日にさいたまスーパーアリーナで開催された。

「日本は、地球で一番大好きな場所。ほかの場所でも同じこと言ってるって思われるかもしれないけど……本当にここでだけ。みんなは、私にとって特別よ!」。

 「親日」コメントがこれほどまっすぐ響く海外スターはいないだろう。日本に通う欧米スターは近年増すばかりだが、その中でもケイティ・ペリーは筋金入りだ。初来日を果たしたのは約20年前、まだ10代のころ。以降の約15年間、プライベートを含めて年に一度は訪れていたという。連続記録が絶たれてしまったコロナ禍には、日本のファン向けにオンラインミーティングを開いたほど、この国と強い絆を持つアーティストだ。2024年も東京で年越しを過ごしていたものの、公演としては7年ぶりだから、本人も気合いを入れていたに違いない。

 ケイティは総売上一億レコードを超える世界のスーパースターだ。この【ライフタイムズ・ツアー】も、すでにアメリカ、カナダ、オーストラリアの3か国だけで8,000万ドル(約120億円)分のチケット110万枚を売り上げている。

 ケイティといえば、遊び心あふれるポップ、そして大仕掛け満載なステージ。なかでも「移動式ディズニーランド」に例えられた【ライフタイムズ】は、キャリア最大級の規模を誇る。

 目を引くのは、新アルバム『143』と連動したSFゲーム風のコンセプト。五部構成で、幕間には映画のごとき映像が流されていく。ストーリーはシンプルだ。悪のAIによって荒廃した世界を救うため、封印された蝶々を救わなければいけない。観客とともにレベルアップしていくケイティは、姿を変えながらダンサーと宙を舞ったりライトセーバーで戦ったりしていく。

 オープニングは、デジタル社会の虚構を問う「アーティフィシャル」。そこから現実世界への疑念を歌う「チェーン・トゥ・ザ・リズム」へと展開し、代表曲「ダーク・ホース」によってコンセプチュアルな第一部をしめた。

 第二部は誰もが盛り上がれるバブルガムポップが目白押し。名曲「カリフォルニア・ガールズ」や「ティーンエイジ・ドリーム」はもちろん、日本のLGBTQ+ファンに捧げられた初期ヒット「キス・ア・ガール」によって、熱気は早くも最高潮へ。

 ダンスアルバム『143』にならった【ライフタイムズ・ツアー】はクラブ調サウンドを志向している、というだけではない。ベテラン歌手となったケイティは、100歳超えのファンと交流したこともあるし、自身と同じ子育て中のファンも多いことを理解している。だからこそ、お子さまからご老人まで、いかなる観客でも楽しく踊れる全年齢向けの空間づくりを念頭に置いたのだという。

 ファンとの距離がもっとも縮まったのは、第三幕のボーナスステージだ。通常のセットリストからはずれた曲をアコースティックで披露するコーナーで、まずケイティ選出の「ディープカット(あまり知られてない名曲)」として『ウィットネス』より「イントゥ・ミー・ユー・シー」が贈られた。お次は、その場で観客に選ばれた『ティーンエイジ・ドリーム』収録のバラード「ワン・ザット・ゴット・アウェイ」。

 ケイティの愛娘の名前、デイジーを日本語で言うと何なのか聞かれた観客たちが協力して答える微笑ましい場面も生まれた(答えは「ひなぎく」)。

 じつは、こうしたファンとのかけあいこそ【ライフタイムズ・ツアー】のテーマだ。アルバムタイトル“143”は、英語のスラングで「愛してる(I Love You)」を意味する。出産やパンデミックもあって長らく会えていなかった世界中のファンに、直接会って愛と感謝を伝えたい──そんなケイティの思いが、このワールドツアーを生んだ。

 なかでもケイティがこだわったのが東京公演だった。じつは、彼女と日本の縁は、ブレイク前の2000年代前半にさかのぼる。歌手としてレーベル契約もままならなかったころ、人生で最初のファンになってくれたのが日本人の女性だったのだという。

 ツアー終盤を日本で迎えられたことは、本人にとっても感慨深かったはずだ。「オール・ザ・ラヴ」で歌われた「愛を取り戻した」宣言は、世界の頂点に立って苦労も重ねてきた今だからこそ響く。

 観客の愛を受けとめたケイティがレベルアップすると、ストーリーも佳境へ。第四部でついにラスボスのAIを撃破し、蝶々を解き放ってみせた。

 栄光の幕で、先月リリースされたばかりの「bandaids」がお披露目されたことも感動的だった。ポップロックのルーツに立ち返ったこの曲では、ケイティも豪華な衣装を脱ぎ、シンプルなジーンズ姿に。はじめてのファンができた土地で、大勢の前に立つ様は、まさしく原点回帰でありながら、ファンと歩んできた年月の集大成のようでもあった。

 蝶のかたちの花吹雪が舞った最終幕は、もはや祝祭状態に。ツアー表題曲「ライフタイムズ」でのTikTokを模したスクリーンでは、満面の笑顔で踊るファンたちが映されていった。

 もちろん、フィナーレを飾るのは永遠のアンセム「ファイヤーワーク」。自分の可能性を信じて光り輝こうと鼓舞する、ケイティ・ペリーの価値観を象徴するエンパワーメントが打ち上げられた。

 ツアーに出る前、ケイティはこんなことを語っていた。「ファンのみんなは、本当に一生懸命応援してくれてる。陳腐に聞こえてほしくないんだけど、私たちはずっと愛し合ってきた」。音楽と愛の力の前では、陳腐になるはずなんかない。それを証明した一夜だった。

Text by 辰巳JUNK
Photo by Kristy Sparow / Getty Images
※写真はパリ公演より


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