<ライブレポート>ロックとオーケストラの融合を目指すGACKT、来夏フルオーケストラとともに全国ツアーへ

2025年12月25日 / 18:00

 GACKTがロックとオーケストラのコラボコンサート【GACKT PHILHARMONIC 2025 魔王シンフォニー THE REVIVAL】を12月23日、東京・すみだトリフォニーホールで開催した。

 本公演はソロ活動25周年を記念して今年4月13日、ロックとオーケストラの“真”の融合を目指し同会場で行なった【GACKT PHILHARMONIC 2025 – 魔王シンフォニー】の大きな反響を受けての再演で、GACKTの表現者としてのこだわりと美学が詰まった唯一無二の音と世界観に1600人が熱狂、大きな感動が生まれていた。

 この日開演前に会見に応じたGACKTは、前回のコンサートまでの道のりを振り返り「ロックとオーケストラの融合ってみんなが考えているほど簡単じゃない。オーケストラの音を立てればバンドの音が消える、バンドの音を前に出すとオーケストラの音が沈む。もう、1曲単位の調整ではなくてワンフレーズごとに調整しなければいけなくて、1日1曲もできなかった。だから前回は1か月かけて実験のように音合わせをしました。演る側から言わせてもらえば『ただひたすらにしんどい(笑)』」と、YELLOW FRIED CHICKENzとグランドフィルハーモニック東京と共に想像を絶する音作りだったことを明かした。

 そしてこの日はさらにブラッシュアップさせた圧巻の内容で、前回のコンサートは映像作品、ライブ音源でもリリースされているが、2回目の人も初めての人も、生で聴いた時にこんな音楽は聴いたことがないと感じたのではないだろうか。

 この日会場は「黒ミサに赴くような装い」「ダークで荘厳な装い」というドレスコードを楽しむ、黒と白を基調としたファッションの観客で埋めつくされた。一階がスタンディングというオーケストラコンサートしては異例のスタイルだ。これも「音を全身で感じて欲しい」というGACKTのこだわりだ。魔王の世界観の影アナが入り、ムードを高め、黒装束のローブと仮面をまとい約70人のオーケストラメンバーが登場。しかも立奏というオーケストラにとっては斬新すぎる演出だ。しかしオーケストラのメンバーもGACKTのクリエイティブに共鳴し、新しい世界観を共に作り上げていた。

 オープニングは「RETURNER-闇の終焉-」。影のある美しいメロディのロックチューンが、表情豊かなボーカルと迫力ある音と共に客席に突きささる。シーケンスを極力使わず人力で原曲の音を再現、表現している。YELLOW FRIED CHICKENzのメンバーの前にはアンプが置かれていない。「バンドの楽器は全てプリアンプから出ている状態を徹底的に作り、ステージ上にはオーケストラの音しかない環境に整理した」(GACKT)と語っているように、音がコンフリクトすることを避け、全編を通してオーケストラの音が、ひとつになっているけど一つ一つの音が粒立って聴こえてくる音響空間を作り上げている。

 弦+エレクトリックハープと、照明の演出が生む幻想的な世界観が印象的だった「絵夢-FOR MY DEAR-」は、GACKTのサビの悲壮感を湛えつつ力強い熱唱、そしてラストの壮大な弦の音の美しさが感動を作り上げる。オーケストラの音のみでスタートした「CUBE」は、メロディをストリングスと管楽器が力強く表現し、バンドが作る強く太いリズムと融合し、強いアンサンブルが生まれる。激しいティンパニにひきつけられた「BLUE LAGOON-深海-」からは、深淵な世界へ。ゲーム『DIRGE of CERBERUS-FINAL FANTASY ‘Z-』のテーマソング「REDEMPTION」はオーケストラとバンドの情熱的な演奏と歌が熱気を生む。「UNTIL THE LAST DAY」は一本の泣きのバイオリンからスタートして、ハープが重なり、一転して不穏な音世界へと展開。そしてサビの抜け感で解放されるような感覚にいざなってくれる。そしてGACKTの人生観を落とし込んだ歌詞が真っ直ぐ届く。切ないバラード「BIRDCAGE」は前半はやわらかく、原曲にはない間奏部分は美しいギターが彩り、後半は激しいロックへと展開。情感豊かな歌と相まって、この曲に漂うもの悲しさがより切なく伝わってくる。

 バスドラが肚の底に響くような心臓の音を表現し、パイプオルガンが鳴り響くと、ダークな世界が色濃く表れ「LUST FOR BLOOD」を披露。GACKTが指揮者と入れかわり指揮台へ。GACKT指揮による「FOUR SEASONS」は「白露-HAKURO-」「暁月夜-DAY BREAKERS-」「サクラ、散ル…」という季節の移ろいを感じさせてくれるバラードのメドレーだ。それぞれの楽曲のメロディの美しさに光を当て、より輝かせ、組曲のように仕立てたアレンジを、GACKTのしなやかな指揮に導かれて各楽器が豊潤な音で表現。GACKTは背中で物語を客席に伝える。そしてGACKTが再びステージ前方に戻りながら、ピアノの音が余韻を響かせ物語が続くことを伝える。「FOUR SEASONS」の続き、「雪月花-THE END OF SILENCE-」を披露。美しい日本語とファルセット、切ないメロディが客席を包み込む。

 親近感を感じるメロディと戦い続ける意志を伝える歌詞の「CLAYMORE」は、セットリスト、物語の中で、強いアクセントになっていた。木管楽器が作る疾走感、ホルン、ハープとバンドサウンドが交差し圧巻の演奏が生まれ、スケールが大きい、かつ繊細な歌が希望を連れてくる。劇場版『機動戦士Ζガンダム A New Translation -星を継ぐ者-』(2005年)のエンディングテーマ「キミが待っているから」は、胸が締め付けられる歌詞とメロディをオーケストラが壮大な音で描き、GACKTの胸に迫る歌を届けると、客席に感動の波が広がっていくのが伝わってくる。

 ラストはパイプオルガンの音が高らかに響き渡り「LOST ANGELS」だ。静と動をダイナミックに表現した迫力のある演奏と艶っぽい歌で締めくくった。GACKTが細部にまでこだわり緻密に構築した視覚・音響・演出は、圧巻としかいうしかない。まさに総合芸術だった。GACKTが目指した“ロックとオーケストラの真の融合”、それはオーケストラとバンドが交差し生まれる“共鳴する音”、互いのよさを最大限に引き出す美しいアンサンブルだ。

 2013、2014年にオーケストラコンサート【GACKT×東京フィルハーモニー交響楽団 華麗なるクラシックの夕べ】を開催しその時は「自分じゃなくてもできる」と感じたが、いつからか「自分にしかできないことができる」と構想を練り、4月の【魔王シンフォニー】開催までには約10年の月日を要した。そして今回——GACKTは理想とするコンサートを作り上げ、このプロジェクトに大きな手応えを感じた。そしていよいよ来年、ビルボードクラシックスとのタッグにより、更なるパワーアップを遂げ全国8都市10公演で【GACKT 魔王シンフォニー 2026 -INFINITY- organized by billboard classics】を開催することを決めた。

 「ボクもクラシックの出身なのでロックの方たちにはクラシックの素晴らしさを、クラシックの方たちにはロックの勢いと重厚感を知って欲しい。そういう意味で、自分がロックとクラシックのファンの架け橋になれたらという思いでやっています。音楽のジャンルって垣根が大きいけど、それを超えた中での素晴らしいものが、どの音楽にも存在しているので、それを知るきっかけになってくれれば嬉しい」(GACKT)。

Text by 田中久勝

◎公演情報
【GACKT PHILHARMONIC 2025 魔王シンフォニー THE REVIVAL】
2025年12月23日(火)
東京・すみだトリフォニーホール
<セットリスト>
M1 RETURNER -闇の終焉-
M2 絵夢 -FOR MY DEAR-
M3 CUBE
M4 BLUE LAGOON -深海-
M5 REDEMPTION
M6 UNTIL THE LAST DAY
M7 BIRDCAGE
M8 LUST FOR BLOOD

FOUR SEASONS
M9 白露 -HAKURO-、暁月夜 -DAY BREAKERS-、サクラ、散ル・・・
※上記の曲のみGACKTは歌唱せず指揮
M10 雪月花 -THE END OF SILENCE-

M11 CLAYMORE
M12 キミが待っているから
M13 LOST ANGELS

◎公演情報
【GACKT 魔王シンフォニー 2026 -INFINITY- organized by billboard classics】

開催日時・会場
2026年7月14日(火)ウエスタ川越 大ホール OPEN 17:00/START 18:00
2026年7月18日(土)東京エレクトロンホール宮城 OPEN 17:00/START 18:00
2026年7月26日(日)JMSアステールプラザ 大ホール OPEN 16:00/START 17:00
2026年8月2日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール OPEN 16:00/START 17:00
2026年8月11日(火・祝)文京シビックホール 大ホール OPEN 13:00/START 14:00
2026年8月11日(火・祝)文京シビックホール 大ホール OPEN 17:00/START 18:00
2026年8月15日(土)刈谷市総合文化センターアイリス 大ホール OPEN 16:00/START 17:00
2026年8月18日(火)札幌市教育文化会館 大ホール OPEN 17:00/START 18:00
2026年8月29日(土)東京建物 Brillia HALL 箕面 大ホール OPEN 13:00/START 14:00
2026年8月29日(土)東京建物 Brillia HALL 箕面 大ホール OPEN 17:00/START 18:00

出演:
GACKT

指揮:米田覚士(埼玉、宮城、東京、愛知、北海道)、村上史昂(広島、福岡、大阪)
管弦楽:グランドフィルハーモニック東京(埼玉、宮城、東京、愛知、北海道)、グランドフィルハーモニック京都(広島、福岡、大阪)
バンド:YELLOW FRIED CHICKENz

<チケット> ※全席指定、税込
1F ブラックダイヤモンド席100,000円(1Fスタンディング、前方3列までのお席確約、ブラックダイヤモンド席特典グッズ付き)
1F ダイヤモンド席60,000円(1Fスタンディング、4列目以降の前方ブロックのお席確約、ダイヤモンド席特典グッズ付き)
1F プラチナ席35,000円(1Fスタンディング、中間ブロックのお席確約、プラチナ席特典グッズ付き)
1F S席18,000円(1Fスタンディング、後方ブロックのお席)
2F ダイヤモンド席60,000円(2F着席観覧、前方2列までのお席確約、ダイヤモンド席特典グッズ付き)
2F以上 S席18,000円(2Fもしくは3F着席観覧のお席)
2F以上 A席13,000円(2F以上着席観覧、S席より後方のお席)

チケット販売スケジュール:
GACKTオフィシャルHP、SNS先行(抽選)
2025年12月23日(火)12:00~2026年1月5日(月)23:59

<公演公式サイト>
https://billboard-cc.com/GACKT2026

主催:阪神コンテンツリンク(ビルボードジャパン)
企画制作:ビルボードジャパン、カケルエンターテイメント、アーツイノベーター・ジャパン、グランドフィルハーモニック
協力:VENUS、ユニバーサルミュージック
後援:米国ビルボード

<注意事項>
※1階オールスタンディング席、2階以上着席指定
※未就学児入場不可
※枚数制限:おひとり様各公演1申し込み最大4枚まで(ブラックダイヤモンド席のみ最大2枚まで)
※車椅子をご利用のお客様は、お問合せ先までご連絡ください
※チケットはおひとり様1枚必要となります。チケットを紛失された方、または当日お忘れになった方はご入場できません
※チケット購入の際は、必ず公式サイトに掲載している注意事項をご確認ください(ご来場のお客様へのお願い:https://billboard-cc.com/notice

<公演に関するお問合せ>
【埼玉・東京】キョードー東京 0570-550-799(平日11:00~18:00/土日祝10:00~18:00)
【宮城】エドワードライヴ 022-266-7555(11:00~15:00/土日祝休)
【広島】YUMEBANCHI(広島)082-249-3571(12:00~17:00/土日祝休)
【福岡】BEA 092-712-4221(平日12:00~16:00)
【愛知】サンデーフォークプロモーション 052-320-9100(全日12:00~18:00)
【北海道】道新プレイガイド 0570-00-3871(10:00~19:00/火曜定休)
【大阪】キョードーインフォメーション 0570-200-888(12:00~17:00/日祝休)


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