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Zilqyが、12月10日に1stライブ【Start The Fire】を代官山SPACE ODDで開催した。
歓声に次ぐ歓声――開演前から熱気を放っていた満員のフロアは、Zilqyがステージに姿を現すや否や、とんでもない盛り上がりを見せた。この光景を目の当たりにして、彼女たちがデビュー間もない4人組による初ライブだと想像するのは難しいだろう。Zilqyは「日本発Global All Female Metal Band」を標榜し、2025年に結成。11月にEPをリリースしたばかりの新星である。本稿では、Zilqyの1stライブ【Start The Fire】および終演後に行われた公開インタビューの模様をレポートする。
ライブは、Zilqyの始まりを告げた楽曲「Carry On」で幕を開けた。まず度肝を抜かれたのは、Anna(Vo.)の伸びやかなボーカルだ。天井を突き破り、そのまま空へ届くかのような飛翔感のある声。フロアの熱を受け取り、音を通して観客と対話するような身体性のあるパフォーマンスにも引き込まれる。ライブ後のインタビューでは「ステージに立つのは2017年以来」と語っていたが、それを微塵も感じさせない堂々たるステージングである。
続く「Disguise」では、リズム隊の存在感が際立った。Miho(Ba.)のうねるベースは、聴いているだけで身体が浮き上がるかのような感覚をもたらし、Kano(Dr.)のドラムは、フロア全体を飲み込むほどダイナミックでありながら精確だ。実際、Annaのボーカルと併せて強い衝撃を受けた観客も多かったのではないだろうか。
「We are Zilqy!! 今日は最後までぶちかましていくんで、楽しんでいってね!」という挨拶から、新曲(曲名は後日解禁)へ。ミステリアスな空気を纏った同曲に続き、この日のハイライトと言えるのが「Bleeding Love」だ。Zilqy加入を迷っていたAnnaに勇気を与えたという、若くして亡くなった後輩への想いを歌った。愛が大きいからこそ寂しさも募る――そうした感情に覚えのある人は少なくないだろう。曲に込められた心情が乗り移ったかのような迫真のボーカルに、思わず息を呑む。爆音が鳴り響くなかでも、透き通る声は白く清らかな空気を感じさせ、さらにToki(Gt.)の情動的なギターフレーズがボーカルに寄り添いながら楽曲に表情を与えていた。
Zilqyとして初めて音源を制作したという、パラモア「Hallelujah」のカバーでは、会場のテンションがさらに引き上げられる。ハードなドラムとドライブするベース、空気を切り裂くような鋭いギターに魅了される一方で、自然と巻き起こる大きなクラップが、観客の高揚をそのまま可視化していた。今後も継続して披露してほしいと感じた人は少なくないはずだ。そこから陰のあるギターリフが印象的な新曲(曲名は後日解禁)を挟み、次はメタリカ「Enter Sandman」のカバーへ。余白を感じさせるドラムが心地よく、腰を揺らすベースとともに魅惑的なグルーヴを生み出していく。いずれも選曲はMihoの提案とのことだが、原曲の魅力を活かしつつ、Zilqyの色として消化している点が頼もしい。
「ヘイ!」の掛け声で会場の一体感が高まった「Cannonball」から、いよいよラストスパートへ。メロディアスかつパワフルでありながら、景色が一気に開けるような開放感を備えた「Realize」が鮮烈な印象を残す。重厚感と疾走感を併せ持つこの曲は、Annaのボーカルとも抜群の相性を見せた。アンコールでは再び「Carry On」を披露し、冒頭のアカペラも忘れがたい一瞬となった。1時間という短い時間ながら、濃密なセットで駆け抜けた、充実の一夜だった。
終演後には、メタル雑誌『BURRN!』編集長・広瀬和生が司会を務め、公開取材へ移行した。ライブの熱気が濃密に残る会場でメンバー4人の会話を聞けたことは、ファンにとって喜ばしいだろう。2階席には多くのライターや編集者が集まり、海外ジャーナリストもオンラインで参加したことで、突如現れたニュー・メタルバンドへの期待の高さも窺えた。
その中でも印象的だったのは、「この音楽を初めて聴く人に何を感じてほしいか?」という質問に対するAnnaの回答である。
「私たちの今度のツアータイトルは【Rise to Liberation】で、「自由に向かって立ち上がる」という意味です。昨今の情勢的に、私たちの言論や思考の自由が脅かされるような、レアな状況にいるんじゃないかなと思っています。それに対して私たちは自由を追い求めたいなと思っています。そして皆さんが私たちの楽曲を聴いてくれる時は、自由であっていいんだ、自分たちらしくあっていいんだと思ってもらいたいです。ある一種のストレス発散方法として、私たちの楽曲を選んでくれたらいいなと思っています」
これはZilqyの精神性を端的に示した言葉だろう。楽曲に宿る開放感は、彼女たちのこうした意思が内在しているからこそ生まれるものだと思える。続いて、4人それぞれのルーツが垣間見えるエピソードにも触れておきたい。「最も印象に残っている音楽についての記憶は?」という質問に対する回答である。
Anna「Zilqyのボーカルとして影響を受けたライブがあって、それがMihoちんの去年のバースデーライブです。いろんなゲストボーカルがいらっしゃって、中でも、大山まきさんのボーカルに度肝を抜かれました。今日のライブも、自分の中で覚えている大山まきさんのパフォーマンスを注入しながらやったから、人生の分岐点のようなライブになっているかもしれないです」
Toki「ギターを始めた頃にメタルが大好きな友達がいて、いつも家に遊びに行って洋楽のライブ映像を見せてもらっていたんです。その時から私が夢にしているのは、ドイツのフェス【ヴァッケン・オープン・エア】に出ることです。初めて【ヴァッケン】の映像を見た時に、えげつないくらいの観客の多さで。こんなにも沢山の人がメタルを愛しているんだということに感動して、いつかこのステージに立ちたいと思ってきました。いずれこの4人で立つことができたらいいなと思っています」
Miho「前のバンドを辞めた時、私は音楽をやめてしまうかもしれないと思っていたんです。ですが、その時に沖縄でのセッションイベントに誘われて、出させてもらいました。前のバンドを辞めた時に心残りだったことが、沖縄でのライブがコロナ禍で中止になってしまったことだったので、最後だと思って沖縄でライブをしたんです。その時にTokiちゃんと初めて一緒に演奏して気が合って。それがZilqy加入のきっかけにもなっています。あと、その沖縄のセッションイベントの時に、尊敬する大先輩のLOUDNESSの高崎晃さんと山下昌良さんに『続けた方がいい』と言っていただきました。それで続けてみようかなと思えたので、私の大きなターニングポイントです」
Kano「私はジャズの専門学校に通っていて、メタルとは無縁だったんです。そこでジャズセッションをした時に『Kano、適当にビート叩いて』と言われて、そこにみんなが合わせてくれたんですよね。その場で自分が出したビートに乗ってくれて、お酒を飲んでいた人も集まってきて一緒に踊ってくれて。それが自分の根本だと思っています。どこに行っても、どんな人が見ていても、誰とやってもその場を一瞬で楽しめる空気にしたいと思っています」
これだけの爆発力を持つメタルバンドのドラマーがジャズ出身という点も興味深い。ここで語られた「原点」は、現在のKanoのパフォーマンスにも確かにつながっているように感じられる。また、Tokiが語った目標も、このバンドに期待を寄せるファンが見たい未来の景色のひとつだろう。
そして、Zilqyを語るうえで欠かせないのが、世界のシーンを視野に入れた活動を掲げている点だ。その一方で、彼女たちは自身のルーツにも強い自覚を持っている。公開インタビューで「現代のメタルに何を付け加えたいか?」と問われ、「メタルという枠組みの中に日本人のメロディセンスを取り入れ、Zilqyらしいニューメタルを表現したい」と答えたことは、その姿勢を端的に示していた。ルーツとビジョンの双方を見据えながら、彼女たちは創作とライブを重ね、独自の表現を確立していくだろう。
初のライブで上々のスタートを切ったZilqyは、早くもアメリカの大手ブッキングエージェント、Dynamic Talent Internationalとの契約を発表。来春には国内ツアー、秋にはアルバムリリースも予定されており、その歩みは一気に加速していきそうだ。公開取材で見せた4人の溌剌とした表情からも、現在のバンドの充実ぶりが伝わってきた。
Text by 黒田隆太朗
Photo by Victor Nomoto – Metacraft
◎公演情報
【Zilqy「Start The Fire」】
2025年12月10日(水)
東京・SPACE ODD
<セットリスト>
01. Carry On
02. Disguise
03. 新曲
04. Bleeding Love
05. Hallelujah(パラモアカバー)
06. 新曲
07. Enter Sandman(メタリカカバー)
08. Cannonball
09. Realize
<アンコール>
10. Carry On
【Zilqy Tour 2026 「Rise to Liberation」】
2026年3月22日(日) 神奈川・新横浜New SIDE BEACH!!
2026年4月4日(土) 愛知・名古屋 ell. FITS ALL
2026年4月5日(日) 大阪・OSAKA MUSE
2026年5月3日(日) 東京・渋谷WWW
チケット:スタンディング 6,500円(税込・整理番号付・ドリンク代別)
オフィシャル二次先行:12月23日(火)18:00より受付開始
◎リリース情報
1st EP『Vacant Throne』
<一般流通盤>
DCCA-166 2,750円(tax in.)
◎イベント情報
【Zilqy Debut EP『Vacant Throne』リリース記念イベント】
2025年12月27日(土)12:00~ ※集合時間 11:45
東京・タワーレコード新宿店9F 店内イベントスペース
内容:CDジャケットサイン会
東京・タワーレコード渋谷店5F 店内イベントスペース
2025年12月28日(日)12:00~ ※集合時間 11:45
内容:私物サイン会
大阪・タワーレコード梅田NU茶屋町店 店内イベントスペース
2026年1月12日(月・祝)13:00~ ※集合時間 12:45
内容:CDジャケットサイン会
愛知・名古屋パルコ店
2026年1月12日(月・祝)18:00~ ※集合時間 17:45
内容:CDジャケットサイン会
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