<フジロック’25出演>イングリッシュ・ティーチャー、【マーキュリー賞】受賞バンドが次の章について語る「現在ソングライティングに没頭している」

2025年5月14日 / 18:00

 2020年7月、人生の大きな転機を迎えようとしていたイングリッシュ・ティーチャーのリリー・フォンテインは、これから始まる旅の決意を表明した。彼女はインディーズ雑誌Come Play With Meに、「ロック・ミュージシャンになるためにリーズに戻るまであと3週間もありません。もし私が成功すれば、若い黒人少女が私を見て、自分もいつか成功できると信じてくれるかもしれない」と書いた。

 これは、自分が思い描いてきた人生を変革しようとしていた若い女性の言葉だった。コルンで育ったこのソングライターは、将来のバンド・メンバーたちと出会ったリーズ音楽大学を卒業したばかりだった。4年が経たないうちに、彼女を含むイングリッシュ・ティーチャーのメンバーたちは、象徴的なアビイ・ロード・スタジオで重大な分岐点に立つことになる。昨年9月、カリスマ性に満ちたデビュー・アルバム『ディス・クッド・ビー・テキサス』で権威ある【マーキュリー賞】を獲得したのだ。

 リリーは受賞スピーチで、この栄誉の大きさに言葉を失いながら、「ただバンドを組もうと思っただけだったんです」と語った。この4人組は、その感謝の気持ちを表現する言葉が見つからないまま、リーズでの初期の頃に彼らを支えてくれた会場や慈善団体にどうにか感謝の言葉を述べた。それは、彼女たちをこの高みへと駆り立てた粘り強さ、才能、情熱を物語る、深く感動的な瞬間だった。

 ギタリストのルイス・ホワイティングは、Zoomを通じてビルボードUKに対し、「【マーキュリー賞】の夜のことを考えると感情が抑えきれません。受賞した時はほとんど言葉が出ませんでした。受賞スピーチを用意しないという自分たちだけの伝統をこれからも続けていくべきかもしれませんね!」と語った。

 【マーキュリー賞】の受賞は、イングリッシュ・ティーチャーを英国のギター・ミュージックの次の波の先頭に立つきっかけになったかもしれないが、彼らをブレイクさせたのは熱烈なライブの安定した力強さだ。バンドは、現地時間2025年5月16日にビルボードUKのライブ・イベント【ライブ・アット・ザ・グレート・エスケープ】のヘッドライナーを務めることを皮切りに、【グラストンベリー】や【グリーン・マン】を含む夏のツアーをスタートさせる。ブライトンのThe Deep End会場で【ザ・グレート・エスケープ2025】の一環として開催されるこのイベントには、ウェストサイド・カウボーイを含む新進気鋭のアーティストたちが参加する。ウェストサイド・カウボーイとは、ルイスが最近プロデューサーとして協力した。

 新型コロナの制限により2021年のバーチャル版【ザ・グレート・エスケープ】に出演した後、イングリッシュ・ティーチャーはEP『Polyawkward』の宣伝のために翌年も出演した。この頃からバンドのとっぴで軽く騒々しい曲調が英国内のメディアやラジオで注目を集め始めた。リリーの書く楽曲は、親しみやすさとかなりの奇抜さを兼ね備え、感情の生々しさとユーモアが共存するスタイルで、世代を超えた幅広い層から支持を集めた。

 このEPは、イングリッシュ・ティーチャーの世界により多くの聴衆を惹きつけ、その止められない台頭を先取りするものとなった。今年、初の【ブリット・アワード】ノミネートと、 フォンテインズD.C.のサポート・アクト決定を果たした同バンドだが、バックグラウンドで“よりタイトで焦点を絞った”新曲の制作に取り組む中、ますます熱狂的な観客を前に演奏することについてルイスが思いを語った。

ーー皆さんは【ザ・グレート・エスケープ】と長い歴史があります。初期のライブを振り返ってみて、当時のバンドについてどう思いますか?

バンドとして今のような状況になるなんて、まったく想像もしていませんでした。初期のライブはまるで別の人生のように感じます、確実に。【ザ・グレート・エスケープ】での初期の出演以来、多くのことが変わりました。2022年の同フェスは、僕たちにとって非常に重要な転換点となったことを覚えています。その頃、物事が少しずつ動き始めたと感じていて、僕たちは、「やばい、本当に人々が僕らのライブに来てくれている、何かが起こっている!」という思いでした。

ーーこれまでの同フェスについて、どのような思い出がありますか?

初めて【ザ・グレート・エスケープ】に行った時、バンド・メンバー全員に一種の興奮が走っていたと思います。その時点ではそんなフェスティバルを経験したことがなかったので、観客の反応に本当に大喜びでした。その途中で、今でも親しい友人である(アイルランドのガレージ・パンク・バンドの)スプリンツとも出会いました。【ザ・グレート・エスケープ】の思い出の多くは、ブライトンで偶然人に出会ったことに関連しています。まるで2分おきに知り合いとすれ違うような感覚です!

ーー【マーキュリー賞】を受賞して以来、ご自身の生活での変化に驚いたことはありますか?

昨年は僕たちにとって本当に大きな年でしたので、その変化にまだ慣れない部分もあります。僕たちの生活は多くの点で変化しました。これまで経験したことのない、世間の注目がさらに高まりました。まだ少し違和感がありますが、2024年は僕の人生で最高の年の一つでした。振り返ってみると、毎週のように新しいことが起こったような気がします。

この12か月はかなりいかれた時期だったので、バンドとして、メンバー全員の(精神的な)状態を確認するように意識的に努力してきたと思います。僕たち全員の生活が以前とは大きく変わり、より混沌として忙しくなっているので、特にツアーに出ていることが格段に多くなった今は、お互いの健康状態を気遣うことがとても重要になっています。

ーー頻繁なツアーは、次のアルバムの作詞作曲のインスピレーションにどのような影響を与えましたか?

僕たちはこれに間違いなく大きな影響を受けています。1stアルバムの多くはホーム(家庭、故郷)という概念と、それに絡み合うさまざまな感情についてでした。2ndアルバムはまだまだ書きかけですが、僕たちは皆、多くの変化を経験し、旅やツアーを通じて多くの新しい経験を積んできました。それらは間違いなく音楽にも反映されると思います。デビュー当時とは、まったく異なる場所にいます。

ーー古い作品のいくつかは、あなたにとって時間の経過とともに意味が変わりましたか?

100%で、これは本当に素晴らしい感覚です。興味深いことに、僕はバンドの作詞家ではありませんが、ツアーを続けるうちに一部の曲に対する僕自身にとっての意味合いがかなり変化してきたことに気づきました。「Mastermind Specialism」は特に際立っています。この曲は迷いをテーマにした曲で、演奏するたびに、バンドとしてここまでの道のりで下した小さな決断の数々について考えさせられます。「Nearly Daffodils」も同様で、叶わなかった関係と、人生で急速に起こる変化について歌った曲だからです。


ーーこれまでに書いた曲の中で、今でも鳥肌が立つような曲はありますか?

「Albert Road」は本当に新しい意味を帯びてきましたが、より悲しい曲になりました!ライブでこの曲を聴くとグッとくることがあります。故郷のことを思い出し、これまでの旅路を振り返って感傷的になってしまうんです。この1年間で、ステージ上でメンバー全員が顔を見合わせて、涙がこぼれそうになった重要な瞬間が2、3回ありました。

ーー今年の【ブリット・アワード】で、初めての大舞台のレッド・カーペットを歩いた感想は?

その経験全体があまりにもとんでもなくて非現実的だったので、本当に面白かったです。まず、【ブリット・アワード】にノミネートされたこと自体が光栄で、信じられませんでしたし、そんなことは絶対に予想していませんでした。有名人があちこちを歩き回っているのを見るのも本当に最高でした。JADEと話をしました、とても穏健な人でした。僕たちはルイス・セローにも軽く挨拶しました。彼の前にいて本当に恥ずかしかったです、本当にかっこよくて、彼と話す資格がないような気がしました!

ーーあなたは最近、ビルボードUKのイベント【ライブ・アット・ザ・グレート・エスケープ】に参加するウェストサイド・カウボーイと仕事をしたそうですね。彼らのどこに魅力を感じて仕事をしようと思われたのでしょうか?

あのバンドのすべてが大好きです。サウンド的には自分の好みにぴったりで、ソングライティングに対する彼らの自信に満ちた姿勢がすごく好きです。物事を複雑にしすぎないところに敬服しています。彼らはビッグ・シーフのファンですが、彼らの音楽にはルー・リード、ペイヴメント、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの要素も感じられます。彼らはすごく簡潔で力強い曲を書くので、非常に新鮮です。

彼らがマンチェスターのSoup Kitchenでライブをしているときに初めて彼らに会いました。すぐにファンになり、彼らと仕事をする方法を見つけなければならないと直感しました。彼らはバンドとしての幅広さを存分に発揮した素晴らしい作品をいくつか準備しています。

ーープロデュース業務では、ご自身のスキルをどのように活用できるのでしょうか?

まだ進行中の旅ですが、すごく楽しんでいます。僕はずっとバンド活動をしてきて、デモのエンジニアリングも数多く手掛けてきましたが、プロデューサーとして本格的に取り組むのは今回が初めてです。これは今後もっとやっていきたいことでもありますし、(イングリッシュ・ティーチャーという)枠から一歩踏み出して、自分にとって別の創造的な表現手段を築き上げる自信をつけることができるのもいいなと思っています。それは脳の別の部分を開いたような感覚で、とてもやりがいがあります。

ーー数十件のライブが予定されている中、今年の残りの期間をどのような心構えで臨みますか?

主な目的は、フェスティバルで新曲をロードテストすることです。僕らは現在ソングライティングに没頭していて、休む間もなく作業を進めています。(創作)プロセスは素晴らしいものですが、少し断片的な部分もあります。メンバー全員が同じ都市に住んでいないため、このアルバムのサウンドをどうしたいのかまだ模索している段階です。でも全体的にはとても前向きな気分です。

個人的には、1stアルバムよりも2ndアルバムの方がより満足できるものになると思います。まだ初期段階ですが、過去に実現しようと思っていたアイデアがいくつかあって、それらはより洗練されていると感じています。僕自身が2枚目のアルバムで目指しているのは、1枚目のアルバムでは多くのアイデアを試してみたのですが、今回の曲はよりタイトで焦点が絞られたものになっています。それはパズルのようなもので、ピースがどのように組み合わさるべきか分かった時の満足感があります。その感覚が、続ける原動力になっています。

By: Sophie Williams  / 2025年5月8日 Billboard.com掲載

◎公演情報
【FUJI ROCK FESTIVAL ’25】
期間:2025年7月25日(金)、26日(土)、27日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※イングリッシュ・ティーチャーの出演は27日となります。
INFO:FUJI ROCK FESTIVAL
https://www.fujirockfestival.com/


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