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広島発のロックバンドbokula.が、全国ツアー【Phantom youth TOUR】の東京公演を渋谷CLUB QUATTROで開催した。
bokula.は、えい(Gt.&Vo.)、かじ(Gt.)、さとぴー(Ba.)、ふじいしゅんすけ(Dr.)によるロックバンド。2019年に活動をスタートさせ、2020年に1st EP『美談にしないで.』を発表。今年1月には1stフルアルバム『FUSION』をリリースし、精力的なライブ活動を継続することで、ライブハウス・シーンにおける知名度と存在感を高めている。4th EP『Phantom youth』を引っ提げた今回のツアーは全21公演。ツアー前半は2マン形式、後半の東京、名古屋、大阪、広島の4か所はキャリア初のクアトロでのワンマンライブだ。さらに東京公演ではメジャーデビューを発表。メジャー1stデジタルシングル「最愛のゆくえ.」をいち早く披露するなど、まさに記念碑的なライブとなった。
フロアを埋め尽くしたオーディエンスは10代後半から20代前半が中心。多くの人がグッズのタオルを首にかけ、bokula.の登場を焦れるように待っている。そして18時半、ついにライブがスタート。SEが大音量で響き、メンバーがステージに現れると、観客はグッと前のめりに。「広島県から来ました、bokula.です!」(えい)という言葉とともに放たれたのはEP『Phantom youth』の1曲目に収められた「アオトハル」。青春と呼ばれる季節の葛藤や美しさを刻み込み、性急にしてエモーショナルな楽曲によって、会場の熱量は一気に上がっていく。そのまま「溢れる、溢れる」「満月じゃん。」とアッパーチューンを続けると、オーディエンスは拳を上げ、シンガロングで応える。バンドと観客の距離が驚くほどに近く、“この場にいる全員でライブを作る”というライブハウス本来の光景が広がっていた。
「初めましての人、いつも来てくれてる人。いろんな人を巻き込んで、いろんな表情を見せたいと思います」(えい)というMCの後も、様々な感情を反映した楽曲が披露された。軽快なビートと鋭利なギターフレーズを軸にした「足りない二人」で華やかな雰囲気を演出し、「この曲を聴いてもらえれば友達になれるよ」(えい)と呼びかけた「バイマイフレンド」では再び大合唱が発生。ミディアムチューン「コイニオチテ」では大切な人との別離を切々と歌い上げ、4つ打ちのダンサブルなビートを軸にした「夏の迷惑」では観客の体を揺らしまくり、「こんな僕ですが、何卒」では爆音バンドサウンドに乗せて〈生きる事は楽じゃないけど/今を少しは信じます〉という切実なフレーズを響かせる。等身大としか言いようがない生々しい感情を込めた歌こそがbokula.の核。すべての歌詞を明確に伝えることに心を砕いたボーカルも印象的だった。
ライブ中盤でもっとも心に残ったのは「ナイトダイブ」だった。えい、かじのツインギターによるイントロ、さとぴー、ふじいによる骨太なリズムセクションが共鳴するこの曲は、ロックバンドとしてのポテンシャルの高さを証明している。彼らの活動の中心はライブハウスであり、それは今後も変わらないだろうが、この曲を聴くと「デカい会場も似合うだろうな」と思わずにはいられない。
「自分が独りぼっちだったから、信頼している人がいなかったら、自分には何もできないだろうなと思ってました。でも、こうしてバンドができる、好きなことができてるのは、いろんな人の支えがあって、目が合って、耳が合ったから」「歌が歌える、自分の思いを伝えられる。それをこのワンマンで、しっかりとより深く突き刺しに来ました。僕らの音楽が支えになりますように」(えい)。そんな言葉の後で演奏されたのは、「少年少女」。ダメだと思う日もあるし、嫌になる日々もある。でもどうか、生き抜いて、自分を愛することを忘れないでほしいーーあまりにも真摯な願いを刻んだ歌は、バンドと対峙するすべての観客の胸に強く響いたはずだ。
つんのめるようなバンドグルーヴのなかで、〈普通じゃ僕らつまらないから代わりは要らないよ〉というラインが高らかに響いた「HOPE」からライブは一気にクライマックスへと疾走しはじめる。かじの鋭いギターフレーズを軸にした強靭なアンサンブルによって、フロアの熱狂をさらに高めた「愛わない」の後は、ライブハウスへの強い思いをそのまま音楽にした「この場所で.」。最初のサビに入ったところで客の異変に気付いたえいは、いったん演奏を止める(どうやらお客さんの眼鏡が落ちたよう)。「気を付けて、安全に楽しんで!」と声をかけて、再び演奏をスタート。すると今度はオーディエンスに向けて「“安全に”とは言ったけど、手を抜いていいとは言ってねえぞ。本気でかかってこい!」と鼓舞する。こんな振る舞いからも、ライブハウスという場所への深い愛着が伝わってくる。
「改めて言わせてほしい。おまえら、本当にカッコイイわ」「少なくとも俺たちは、あなたに向けて誠実にやってきました。それが伝わらなかったら、俺たちの力不足。だけど今日、何かひとつ見えるものがありました。あなたの強い拳だったり、俺たちを見るキラキラの瞳だったり。ここまで手を離さず、ついてきてくれてありがとうございます。メジャーデビューします」(えい)。
凄まじいばかりの歓声のなかで披露されたのは、「愛してやまない一生を.」。渾身の感情を込めた演奏、全身全霊で目の前にいるオーディエンスとのつながりをリアルに感じさせる歌。演奏が止まり、観客だけがサビのフレーズを丸ごと歌うシーンは、この日のライブのハイライトであると同時に、bokula.の存在意義をはっきりと示していたと思う。
「俺を、bokula.を、独りぼっちを救ってくれてありがとう!」というシャウトからはじまった「群青謳歌」、この日2回目の「満月じゃん。」で本編は終了。すぐに“one more!”というコールが鳴り響き、再びメンバーが登場すると会場からは「おめでとう!」という祝福の声が飛んだ。
アンコールの1曲目は、メジャー1stデジタルシングル「最愛のゆくえ.」。大切な人と別れ、バンドを選んだ経験をもとにしたこの曲は、bokula.をさらに大きなフィールドへ導くことになるだろう。
さらに「愛すべきミュージック」、そしてこの日3回目の「満月じゃん。」でライブはエンディングを迎えた。楽曲を介した濃密にして純粋なコミュニケーション。それこそがライブハウスで鳴らされるべき音楽なのだと改めて実感させられた。メジャーデビューを経て、bokula.がどんなふうに広がっていくのか。ここから始まる新しい物語をぜひ共有してほしいと思う。
Text:森朋之
Photo:aoi / アオイ
◎公演情報
【bokula.「Phantom youth TOUR」“ONE MAN LIVE”】
2023年12月4日(月) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
2023年12月6日(水) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
2023年12月14日(木) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
2023年12月16日(土) 広島・広島CLUB QUATTRO
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