浜田麻里、新作を引っ提げたツアーが絶大な歓声と喝采の中で盛大に終幕

2023年11月17日 / 12:00

『The 40th Anniversary Tour “Soar”』 photo by キセキ・ミチコ、加藤千絵 (okmusic UP's)

今年4月にアルバム『Soar』をリリースした浜田麻里が、東京ガーデンシアター公演を含む、同作を引っ提げたツアー『The 40th Anniversary Tour “Soar”』をこの10月に完遂した。彼女がステージに立つのは、2019年4月19日に行われた日本武道館公演以来。各地ともチケットが即日完売したのは予想通りだったとはいえ、これはファンの期待感がいかに大きなものだったのかを改めて実感する現象でもあった。

ツアー・タイトルでわかるように、2023年はデビュー40周年を迎えたタイミング。しかし、彼女はよくあるベスト・ヒット・コンサートのような内容ではなく、あくまでも『Soar』収録曲を軸にセットリストを組み上げ、信念を持って邁進し続ける今の姿を体現することに重きを置いていた。先行配信された「Tomorrow Never Dies」のアグレッシヴかつプログレッシヴなメタル・サウンドは象徴的だが、ヴァリエーション豊かな新曲群がいかに自身の進化を表したものであるのかは、アルバムに耳を傾ければ、瞬時に理解できるだろう。

実際のパフォーマンスも圧巻としか言いようのない劇的なものだった。前々作『Mission』(2016年)を発表した頃、彼女は自らに課せられた“使命(Mission)”について各方面で口にしていたが、その哲学にも通じる意思はメッセージとして歌詞にも反映されている。現代社会において我々はどうあるべきなのか。「Noblesse Oblige」を始め、より具体性が増したような印象も受けた『Soar』に綴られたリリックが痛切にオーディエンスに訴えかけていく。

彼女の声の特性として、しばしば超絶ハイトーン・ヴォイスが話題に上るが、多彩な表現力で魅了するシンガーであることもファンはよく知っている。今回のツアーで言えば、特に1991年発表のシングル曲「Paradox」のアコースティック・ヴァージョンは珠玉のパフォーマンスの一つだった。長年のバンド・メンバーである増崎孝司(g)が奏でるギターの調べと呼応しながら、この瞬間にしか成立し得ない二人のタイム感で聴かせた歌は、浜田麻里の描く深遠な世界観と共に、ヴォーカリストとしての唯一無二の存在感を十二分に堪能させたに違いない。そこにBOH(b)のフレットレス・ベースが絡み合い、他では聴くことのできない独自の即興演奏が繰り広げられた、「Last Leaf」での絶唱も見事だ。

女性ロック・シンガーとして道なき道を切り拓いてきた浜田麻里の挑戦は、これからも続いていく。その次なる動きは、各地のMCにおいても示唆された『INCLINATION IV』の制作であろう。これは10年タームで自身が編纂するシリーズ・ベスト盤で、既発曲を元にしつつ、リミックス版、リレコーディング版、新曲なども収録されるファン待望の作品、その第4弾である。明言は避けつつも、最終日の札幌・カナモトホール(旧市民ホール)公演では、「その後にまたみなさんにお会いできる機会を設けたいなと思っている」という、次回のライヴ実現を想起させる嬉しい発言もあった。

また、それに先駆けて2024年2月7日には、これまで発表されてきた15の映像作品がBlu-ray化されることもアナウンスされている。現在は入手困難になっているDVD版も多いようだが、コアなファンにとっては、デビュー20周年記念として本人の監修のもとに制作された、ロサンゼルスでのレコーディングやセッション・シーンなどのドキュメンタリー映像も含むMV集『Footsteps In 20 Years – Mari Hamada Video Clips collection -』には、「Forever」「Return to Myself~しない、しない、ナツ。」「Paradox」の3曲が追加収録されることになったのは注目点だろう。その中でも、ビクターより再発される9タイトルに関しては、Blu-ray化に伴い、最新技術による映像のクリア化、サウンドのリマスタリングが施されている。そして、『Footsteps In 20 Years – Mari Hamada Video Clips collection -』にBonus Trackとして収録される「Return to Myself~しない、しない、ナツ。」のMusic Videoも発売に先駆けてYouTubeに公開された。

絶大な歓声と喝采の中で盛大に終わったツアーの余韻は、今もオーディエンスの内面で明確に躍動しているはずである。浜田麻里とはそういうシンガーなのだ。今回のコンサートを締め括った「Stay Gold」を歌い始める前に、彼女は「逆境に陥っても、その悲しみを力に輝くことができる、人ってそんな生き物だと思います」「最後まで凛として生きたいものです」と述べた。紆余曲折のあるキャリアを重ねてきたがゆえに悟った人生観。来るべき時を意識しての言葉でもあるのだろう。あらゆる変革が求められる現代社会の中で、浜田麻里の心の奥底にある美しき熱情が、再び新たな光を帯びる日を待ちたい。

photo by キセキ・ミチコ、加藤千絵

text by 土屋京輔

【セットリスト】

1.Dramatica

2.Diagram

3.Noblesse Oblige

4.Prism

5.Material World

6.Mirage

7.Paradox

8.Last Leaf

9.Escape From Freedom

10.Dancing With Heartache

11.Tomorrow Never Dies

12.Black Rain

13.Blue Revolution

14.Ilinx

15.River

16.Zero Gravity

17.Right On

EN1. 999〜Heart and Soul〜Return to Myself

WEN1. Stay Gold


音楽ニュースMUSIC NEWS

目黒蓮(Snow Man)、キッコーマン“しぼ生”新CM出演 インタビューコメントも到着

J-POP2025年5月22日

 目黒蓮(Snow Man)が出演するキッコーマン「しぼりたて生しょうゆ」新CM第2弾「だけ旨を想う男 ズッキーニ」篇が5月26日より全国放映開始となる。  3月から「キッコーマンしょうゆ」のCMキャラクターに就任した目黒。“しぼ生”第2弾 … 続きを読む

【ビルボード】星野源『Gen』がDLアルバム初登場1位、BTSのJIN/25時、ナイトコードで。が続く

J-POP2025年5月22日

 2025年5月21日公開(集計期間:2025年5月12日~5月18日)のBillboard JAPANダウンロード・アルバム・チャート“Download Albums”で、星野源の6年半ぶりとなるニュー・アルバム『Gen』が4,095ダウ … 続きを読む

シザ、写真と引き換えに若いファンにドラッグを捨てるよう説得したと明かす

洋楽2025年5月22日

 現地時間2025年5月20日にインスタグラム・ストーリーズを更新したシザが、若いファンに対し、“ウィペット(Whippet)”の容器を捨てることを条件に一緒に写真やビデオを撮ってあげたことを明かした。ウィペットとは、亜酸化窒素(笑気ガス) … 続きを読む

豪華ミュージシャンが一夜限りのセッション【JAZZ NOT ONLY JAZZ II】開催決定、第1弾でロバート・グラスパー/アイナ・ジ・エンド/石若駿ら

J-POP2025年5月22日

 次世代を担う若手ミュージシャンと豪華なゲスト陣が一夜限りのスペシャル・セッションを奏でるライブ企画【JAZZ NOT ONLY JAZZ II】が9月18日、東京国際フォーラムホールAにて開催される。  併せて、第1弾出演アーティストも発 … 続きを読む

長谷川白紙、THE FIRST TAKEバージョン「草木」「外」配信リリース

J-POP2025年5月22日

 長谷川白紙がYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』にて一発撮りで披露した「草木」「外」の音源が配信リリースされた。  『THE FIRST TAKE』には昨年7月に出演。初期の代表曲「草木」はバンド編成による演奏を披露し … 続きを読む

Willfriends

page top