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『The 40th Anniversary Tour “Soar”』 photo by キセキ・ミチコ、加藤千絵 (okmusic UP's)
今年4月にアルバム『Soar』をリリースした浜田麻里が、東京ガーデンシアター公演を含む、同作を引っ提げたツアー『The 40th Anniversary Tour “Soar”』をこの10月に完遂した。彼女がステージに立つのは、2019年4月19日に行われた日本武道館公演以来。各地ともチケットが即日完売したのは予想通りだったとはいえ、これはファンの期待感がいかに大きなものだったのかを改めて実感する現象でもあった。
ツアー・タイトルでわかるように、2023年はデビュー40周年を迎えたタイミング。しかし、彼女はよくあるベスト・ヒット・コンサートのような内容ではなく、あくまでも『Soar』収録曲を軸にセットリストを組み上げ、信念を持って邁進し続ける今の姿を体現することに重きを置いていた。先行配信された「Tomorrow Never Dies」のアグレッシヴかつプログレッシヴなメタル・サウンドは象徴的だが、ヴァリエーション豊かな新曲群がいかに自身の進化を表したものであるのかは、アルバムに耳を傾ければ、瞬時に理解できるだろう。
実際のパフォーマンスも圧巻としか言いようのない劇的なものだった。前々作『Mission』(2016年)を発表した頃、彼女は自らに課せられた“使命(Mission)”について各方面で口にしていたが、その哲学にも通じる意思はメッセージとして歌詞にも反映されている。現代社会において我々はどうあるべきなのか。「Noblesse Oblige」を始め、より具体性が増したような印象も受けた『Soar』に綴られたリリックが痛切にオーディエンスに訴えかけていく。
彼女の声の特性として、しばしば超絶ハイトーン・ヴォイスが話題に上るが、多彩な表現力で魅了するシンガーであることもファンはよく知っている。今回のツアーで言えば、特に1991年発表のシングル曲「Paradox」のアコースティック・ヴァージョンは珠玉のパフォーマンスの一つだった。長年のバンド・メンバーである増崎孝司(g)が奏でるギターの調べと呼応しながら、この瞬間にしか成立し得ない二人のタイム感で聴かせた歌は、浜田麻里の描く深遠な世界観と共に、ヴォーカリストとしての唯一無二の存在感を十二分に堪能させたに違いない。そこにBOH(b)のフレットレス・ベースが絡み合い、他では聴くことのできない独自の即興演奏が繰り広げられた、「Last Leaf」での絶唱も見事だ。
女性ロック・シンガーとして道なき道を切り拓いてきた浜田麻里の挑戦は、これからも続いていく。その次なる動きは、各地のMCにおいても示唆された『INCLINATION IV』の制作であろう。これは10年タームで自身が編纂するシリーズ・ベスト盤で、既発曲を元にしつつ、リミックス版、リレコーディング版、新曲なども収録されるファン待望の作品、その第4弾である。明言は避けつつも、最終日の札幌・カナモトホール(旧市民ホール)公演では、「その後にまたみなさんにお会いできる機会を設けたいなと思っている」という、次回のライヴ実現を想起させる嬉しい発言もあった。
また、それに先駆けて2024年2月7日には、これまで発表されてきた15の映像作品がBlu-ray化されることもアナウンスされている。現在は入手困難になっているDVD版も多いようだが、コアなファンにとっては、デビュー20周年記念として本人の監修のもとに制作された、ロサンゼルスでのレコーディングやセッション・シーンなどのドキュメンタリー映像も含むMV集『Footsteps In 20 Years – Mari Hamada Video Clips collection -』には、「Forever」「Return to Myself~しない、しない、ナツ。」「Paradox」の3曲が追加収録されることになったのは注目点だろう。その中でも、ビクターより再発される9タイトルに関しては、Blu-ray化に伴い、最新技術による映像のクリア化、サウンドのリマスタリングが施されている。そして、『Footsteps In 20 Years – Mari Hamada Video Clips collection -』にBonus Trackとして収録される「Return to Myself~しない、しない、ナツ。」のMusic Videoも発売に先駆けてYouTubeに公開された。
絶大な歓声と喝采の中で盛大に終わったツアーの余韻は、今もオーディエンスの内面で明確に躍動しているはずである。浜田麻里とはそういうシンガーなのだ。今回のコンサートを締め括った「Stay Gold」を歌い始める前に、彼女は「逆境に陥っても、その悲しみを力に輝くことができる、人ってそんな生き物だと思います」「最後まで凛として生きたいものです」と述べた。紆余曲折のあるキャリアを重ねてきたがゆえに悟った人生観。来るべき時を意識しての言葉でもあるのだろう。あらゆる変革が求められる現代社会の中で、浜田麻里の心の奥底にある美しき熱情が、再び新たな光を帯びる日を待ちたい。
photo by キセキ・ミチコ、加藤千絵
text by 土屋京輔
【セットリスト】
1.Dramatica
2.Diagram
3.Noblesse Oblige
4.Prism
5.Material World
6.Mirage
7.Paradox
8.Last Leaf
9.Escape From Freedom
10.Dancing With Heartache
11.Tomorrow Never Dies
12.Black Rain
13.Blue Revolution
14.Ilinx
15.River
16.Zero Gravity
17.Right On
EN1. 999〜Heart and Soul〜Return to Myself
WEN1. Stay Gold
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