ロックンロールの復活を見つめた映画『リバイバル69 ~伝説のロックフェス~』に登場する5曲

2023年9月11日 / 18:00

ロックンロールの復活を見つめた映画『リバイバル69 ~伝説のロックフェス~』に登場する5曲 (okmusic UP's)

10月6日から公開される映画『リバイバル69 ~伝説のロックフェス~』は、『Woodstock Music and Art Festival』とも並び称される『TORONTO ROCK AND ROLL REVIVAL 1969』に迫るドキュメンタリー。ロックンロールの復活を謳った同フェスティバルには、Chuck Berry、Little Richard、Gene Vincent、Jerry Lee Lewis、Bo Diddley、Chicago、DOORSに加え、無名時代のAlice Cooper、The Beatles神話の破壊を宣言したJohn Lennonらが出演し、“ペニシリンとエイズ禍の間でフリーダムを謳歌していた時代”を打ち砕いて、新たな未来を自ら提示する圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。狂乱のトラブルを奇跡と戦略でくぐり抜けた舞台裏もさることながら、やはり魅力的なのは、新旧ロックスターによる共演シーン。このコラムでは、当日のステージに登場したミュージシャンが披露した楽曲にフォーカスしたい。
「Be-Bop-A-Lula」(’56)/ Gene Vincent

36歳の若さで夭折したジーン・ヴィンセントは、ロカビリーミュージックとロックンロールのレジェンド。最大のヒットソングのひとつ「Be-Bop-A-Lula」は、ジョン・レノンとポール・マッカートニーが出会った日に初めて人前で歌った曲でもある。この日は当時ダークホースであったアリス・クーパーがバックバンドのドラムを担当し、闇の気配を漂わせる夜気をまとったスターのステージに華を添えた。舌先から喉へするりと滑り落ちる流麗なベースラインとダンサブルなリズムの融合、湿り気のない軽快なヴォーカルの突き抜けた風通しの良さと反して、汗だくの顔の中で殺傷力の高い熱性線をギラリと放つジーン・ヴィンセントの姿が印象的だ。振り切れば振り切れるほど業のように惹かれ合う、陰陽の幻惑に満ちた音楽が味わえる。
「Good Golly Miss Molly」(’58)/ Little Richard

イベントも佳境に迫り、夜の帳が下りた会場に、ポンパドールヘアと無数に鏡を装着した衣装で堂々と現れたリトル・リチャード。光を反射させるためにピンスポットのみの照明を要求し、一等星のごとく光り輝いて観客の眼差しを一身に浴びる姿は、エンターテイナーとしての風格をこれでもかと見せつけていた。披露した「Good Golly Miss Molly」は、黒煙を思わせるほど重たいドラムと、けたたましく跳ね回るピアノの渦のど真ん中で、ソウルフルな歌が夜明けを告げる太陽のようにギラつく楽曲。ざらついた声の残響が鼓膜をビリビリと刺激して、音が止んだ直後も興奮と余韻に浸らせる。何時間経とうが疲労が体と頭を襲おうが、この1曲だけでオーディエンスの心に火がついて燃え盛ったであろうことは、想像に難くない。
「Mean Woman Blues」(’58)/ Jerry Lee Lewis

「ロックンロール復活のショーだ、ここで俺たちが復活させよう」という焼け付くようなMCで、たちまち客たちをトリコにしたのはジェリー・リー・ルイス。クールな視線や佇まいと相反して、自身が弾き倒したピアノに片足を乗せ、会場を煽る一幕は堪らない。おなじみのロカビリーナンバー「Mean Woman Blues」は、まろやかで甘やかなヴォーカルと、金色に弾け飛ぶ火花を想起させるピアノの躍動感の引力が凄まじく、縦軸に体を踊らせるベースラインのぶっとさと滑らかさ、ドラムの雨粒のような打音が耳に楽しい一曲。客席はもちろん、関係者や共演者をも釘付けにしたロックンローラーの面目躍如といった舞台は、一騎当千百戦錬磨ならではのいぶし銀の強さと、衰えを一切寄せ付けない瑞々しさで漲っていた。
「Questions 67 and 68」(’69)/ Chicago

推しも押されぬ売れっ子のシカゴは、ホーンセクションを率いて大ヒット曲「Questions 67 and 68」をパフォーマンスした。2万人を超える聴衆を飲み込むほどのキャパシティーを有したこの曲は、壮大で切ないラブソング。叩くのでも打つのでも刻むのでもなく、膨れ上がった音の塊が暴発するドラムに始まり、大きく身を捩るベース、ひび割れた太いギター、煌びやかなトランペットとサックスの音色、空を突き破らんばかりに響きわたる絶唱が絡み合う。それでいて、どれかが押し潰されてしまうのでも、オーバーサイズによって“曲”という様式美からはみ出すのでもなく、巨大な音塊としての存在感で圧倒させながら、繊細な歌詞をドラマティックに立体化させていく。数多の現場を駆け抜けてきたミュージシャンだからこそ成し得たライヴだった。
「Cold Turkey」(’69)/ THE PLASTIC ONO BAND

そして、THE PLASTIC ONO BANDである。「ビートルズに終止符を」と語ってジョン・レノンが、オノ・ヨーコ、エリック・クラプトン、クラウス・フォアマン、アラン・ホワイト、アントニー・フォーセットを率い、「リフを繰り返せ」という指示のみで演奏を披露したこのバンドは、あまりにも早すぎる前衛的なショーで客と裏方の度肝を抜いた。心音の如く脈動するベース、ブリザードのように硬く凍って吹き抜けるギター、寒々とした声調が肌に突き刺さるサイケデリックな「Cold Turkey」は、熱気と興奮に包まれた会場の血と脳を、どのように現実に連れ戻したのだろう。あるいはその、現実と非現実のあわいでぐるぐる振り回した挙句に、どこでもない場所に置いてけぼりにしたのだろう。全ては映画の中にあるようで、その場にいた数万人の心の中にしか留まらない。音楽は自由で、音楽は誰のものでもないと感じさせる。
TEXT:町田ノイズ

町田ノイズ プロフィール:VV magazine、ねとらぼ、M-ON!MUSIC、T-SITE等に寄稿し、東高円寺U.F.O.CLUB、新宿LOFT、下北沢THREE等に通い、末廣亭の桟敷席でおにぎりを頬張り、ホラー漫画と「パタリロ!」を読む。サイケデリックロック、ノーウェーブが好き。


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