カンバーバッチが異能の天才を演じる『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』 ドウェイン・ジョンソンの活躍に口あんぐりの『ブラックアダム』【映画コラム】

2022年12月1日 / 12:20

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』(12月1日公開)

(C)2021 STUDIOCANAL SAS – CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

 イギリスの上流階級に生まれたルイス・ウェイン(ベネディクト・カンバーバッチ)は、早くに父を亡くし、一家を支えるためイラストレーターとして働いていた。

 やがて妹の家庭教師エミリー(クレア・フォイ)と恋に落ちたルイスは、周囲から身分違いと猛反対されながらも彼女と結婚するが、エミリーは、末期ガンを宣告される。

 そんな中、ルイスは庭に迷い込んできた子猫をピーターと名付け、エミリーのためにピーターの絵を描き始める。

 19世紀末から20世紀初頭にかけて、猫をモチーフにしたイラストで人気を集めたイギリスの画家ルイス・ウェインの生涯を描いた伝記映画。『女王陛下のお気に入り』(18)のオリビア・コールマンがナレーションを担当。監督は日系イギリス人のウィル・シャープ。

 『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(14)のアラン・チューリング同様、ここでもカンバーバッチは、生き方が不器用で変わり者だが、異能の天才でもある人物を見事に演じている。

 さて、この映画、猫を描いて売れっ子となった画家と、妻や猫との心温まる愛の物語かと思いきや、妻は早々に亡くなり、残されたルイスは家族とトラウマを抱え、おまけに版権を持たなかったため、いくら絵を描いても経済的には恵まれず、最後は精神疾患に陥るという、何ともやるせない話になっていた。

 そんな中で救いとなるのは、ルイスが描いた猫のイラストと、全体を貫く絵本や絵画を思わせる映像美、そして、何かとルイスの面倒を見るウィリアム・イングラム卿(トビー・ジョーンズ)と、最後にルイスを救う旧知のダン・ライダー(アディール・アクタル)の存在だった。

 特にライダーは、ルイスがたびたび口にする「電気」(この映画の原題は「The Electrical Life of Louis Wain」)という意味不明な言葉の意味を、「愛」と解釈し、見事にラストシーンにつなげる役割を果たしている。

 ところで、今では考えられないことだが、イギリスでは、古来ペットといえば犬が主流で、猫好きは肩身の狭い思いをしていたらしい。そんな風潮を、ルイスの絵が改めさせ、猫たちの地位を向上させたのだという。そうした意外な事実もこの映画で知らされた。

 
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