テレビシリーズ「LOST」で主役のジャック・シェパードを演じて人気を博したマシュー・フォックスが、終戦直後の日本を舞台にした主演映画『終戦のエンペラー』のキャンペーンで来日し、インタビューに応じた。
本作でマシューは、GHQの最高責任者マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)から極秘調査を命じられたフェラーズ准将を演じた。フェラーズは日本人のアヤ(初音映莉子)と恋人同士だった過去を持つ人物でもある。
―実在の人物を演じるに当たって事前にリサーチなどはしましたか。また演じる上で心掛けたことは。
初めて脚本を読んだ時は、この人は架空の人物だろうと思いました。それほど知られていない人物なので、割と自由に演じてもいいのかなと感じました。フェラーズに関する情報はあまりなかったのですが、彼がワシントンに送った報告書などは読ませてもらうことができました。
この映画は時代設定が分かれているので、それぞれの時代で彼が果たす役割を引き出さなければなりませんでした。1945年の彼は、太平洋戦争の責任者を探すという難題を押し付けられて、その問題の重みを感じながら任務を遂行していくという厳しい立場にありました。一方、30年代の彼は、アヤという魅力的な女性に恋をする若くて無垢(むく)な男です。こちらは「一生に一度の恋なんだ」というふうにロマンチックに演じようと思いました。
文化も言葉も違う2人が引かれ合うという点では、自分自身の体験が生きました。私の妻はイタリア人で、彼女が20歳の時に知り合ったのですが、言葉も通じないのになぜかお互いに引かれ合ったのです。ですからこの映画の設定にも、とても共感することができました。
―日本人キャストとの共演はいかがでしたか。
(アヤ役の)初音(映莉子)さんとの共演は楽しくて素晴らしいものでしたが、恋人同士を演じるので、緊張感を保ちつつも早いうちに信頼関係を築かなければならないと感じました。(ピーター・ウエーバー)監督から「一緒に映画を見に行くといいよ」とアドバイスをされて、スピルバーグ監督の『戦火の馬』を一緒に見たり、食事に行ったりしました。そのようにして築いた信頼関係を映画にも生かすことができたと感じています。
日本人のキャストは、皆さんとても素晴らしかった。特に通訳役の羽田昌義さんが印象に残っています。日本の演技スタイルは独特のものだと思い、以前から関心があったので共演をとても楽しみにしていました。今回は彼らからさまざまなことを学ばせてもらいました。
―「LOST」などテレビドラマで活躍されていますが、テレビと映画の違いは。
一番の大きな違いは、映画はその一本で物語が完結するということです。テレビシリーズは長期間にわたって続くので、ほとんどの場合はストーリーがどこに行くのかも知らずに演じています。映画や舞台の魅力は三幕構成(ビギニング、ミドル、エンド)になっていて終わりがあるというところで、その方が役者としてもコントロールが利くのです。テレビは何年間も同じ人たちとずっと共演し続けるので緊張感が薄れます。映画は新しい人たちと出会って、いきなり同じ環境に投げ込まれ、短期間での凝縮した作業になるのでとても緊張します。でもそれがたまらなく楽しいのです。
―大ベテランのトミー・リー・ジョーンズとの共演については。
彼は撮影の終盤の3週間だけ参加したのですが、彼が来た途端に撮影現場に緊張感が走り雰囲気が一変しました。今回は上司と部下という設定だったので、私にとってはちょうど良かったと思っています。彼はプロ意識が高く、徹底的に準備してくるし、物事を要領よくてきぱきと進める人。見ていて素晴らしいと思いました。
―最後に観客へのメッセージを。
この物語を語ることでスタッフ、キャストの全員が目指したところは一緒でした。それは異文化の相互理解を高めるということです。そのためにみんなが情熱を込めて作り上げた作品だと思っています。
(取材/文・田中雄二)
公開情報
『終戦のエンペラー』
公式サイト: http://www.emperor-movie.jp/
7月27日(土)全国ロードショー