高橋一生、平山秀幸監督「アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います」「連続ドラマW 1972 渚の螢火」【インタビュー】

2025年10月20日 / 11:19

-高橋さん、沖縄の言葉は大変でしたか。

高橋 真栄田に関しては「ないちゃー(本土の人間)」と言われているような男なので、そこまで大変ではなかったのですが、(小林)薫さんや青木(崇高)さんは結構大変だったと思います。真栄田は彼なりによかれと思い、距離感を取ろうと思って話しているのに、反対に現地の人たちにとっては彼の言葉が神経を逆なでする要素になっているんです。

-話の骨子は強奪されたドル札を巡るミステリーでしたが、その中に沖縄が抱える矛盾や屈折みたいものが入っていて、それが主人公の真栄田とも重なる部分もあったと思いますが、その点について監督は意識しましたか。

平山 台本や俳優さんとの打ち合わせ、いろんなことがあった時に必ずそれが入ってくるんです。だから、逆にこちら側がかみしもを着て、大上段に構えてこれが問題ですよとなると、ちょっと自分の性には合わない気がしました。ただそこから逃げるわけにもいかないので、そういうことも自然に入ってくるという形でやりました。

高橋 もちろん、そのことはずっと考えていました。真栄田は周りの人たちから煙たがられて、疎まれてという人間ですけれど、ある意味、彼は沖縄そのものです。だから真栄田の立場になってみると、彼のそういう部分を理解してくれる人は限りなく少なかったのだろうと思います。それだけ分かりづらい混乱がその場所にあったのだろうということは、自分の役柄を通して感じました。

-青木崇高さん、小林薫さん、沢村一樹さんと共演してみてどんな印象でしたか。

高橋 青木さんは、テクニカルなことではなく、今自分がその場所にいて、その役を演じながら、どういうふうに感じるのかという感覚を一番大事にされている方だと思いました。どう立ち回ったらいいのか、どうやったら効果的に見えるのかということはわざと抑え込んでいるような気がしました。与那覇と重なるような、実直さと熱量を感じました。

 薫さんはどの現場でも、普段は淡々としていらっしゃるけれど、実際に役に入った時は、内側にこもっているものがあふれてくる方なんだと改めて勉強になりました。(川平を演じた)沢村一樹さんは作品に対して熱量をぶつけてくる方だと思います。出自や出身は違うけれど、真栄田は川平になっていたかもしれないし、川平は真栄田になっていたかもしれない。ある意味、2人は裏表のような存在だったので、取り調べのシーンで向き合った時などは、非常に勉強になりました。皆さんととても楽しくお芝居ができたと思っています。

-完成版を見た印象を。

高橋 もちろん、史実や実際に起きたことが下敷きとしてあるんですけれど、クライムサスペンスとしてもしっかり成立している。アクションはもちろん、人間ドラマとしてもちゃんと娯楽性を持っている作品に仕上がっていると思います。

-最後に、ドラマ見どころも含めて、視聴者や読者に向けて一言ずつお願いします。

平山 僕は、映像というのは俳優さんを見るものだと思っています。例えば、子どもの頃は黒澤明さんではなくて三船敏郎さんを見に行ったんです。だから今回も演出とかよりも俳優さんのお芝居を見ていただきたいと思います。

高橋 娯楽として人間ドラマとして見ていただいて、何か心に残ってくれたらありがたいと思います。台本を読ませていただいて、沖縄に入って、現地の方のお話を伺わせていただいた時の、あの感覚のようなものを、ドラマとして受け取っていただけることができたら、それだけで十分だと思います。

(取材・文・写真/田中雄二)

(C)WOWOW

  • 1
  • 2
 

特集・インタビューFEATURE & INTERVIEW

オダギリジョー「麻生さんの魅力を最大限引き出そうと」麻生久美子「監督のオダギリさんは『キャラ変?』と思うほど(笑)」『THE オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ MOVIE』【インタビュー】

映画2025年10月17日

-豪華キャストが生き生きとコメディーを演じているのが「オリバー」の人気の理由ですが、そういうアイデアは、現場で出演者の皆さんから出てくる部分も多いのでしょうか。 オダギリ みんなで楽しもう、という雰囲気はあるとは思うんですが、コメディーって … 続きを読む

【映画コラム】初恋の切なさを描いた『秒速5センチメートル』と『ストロベリームーン 余命半年の恋』

映画2025年10月17日

『ストロベリームーン 余命半年の恋』(10月17日公開)  病弱な体のため、学校にも通えず毎日独りで家の中で過ごしてきた桜井萌(當真あみ)。彼女のひそかな夢は、自分の誕生日に好きな人と一緒に見ると永遠に結ばれるという、6月の満月 「ストロベ … 続きを読む

大谷亮平「お芝居の原点に触れた気がした」北斎の娘の生きざまを描く映画の現場で過ごした貴重な時間『おーい、応為』【インタビュー】

映画2025年10月16日

-そうやって出来上がったふわふわとした初五郎の存在が、対照的に絵の道を極めようとする北斎親子の生きざまを際立たせている印象です。北斎親子についてはどのような印象を持たれましたか。  2人とも自分の意志を曲げないので、ことあるごとにぶつかり、 … 続きを読む

黒崎煌代 遠藤憲一「新しいエネルギーが花開く寸前の作品だと思います」『見はらし世代』【インタビュー】

映画2025年10月15日

-団塚監督の印象は? 遠藤 出来上がった映像を見て、びっくりしました。予想だにしないアングルがあったり、編集にも想像がつかないような斬新さがあって面白かった。監督は、撮影中に何か言う時も、この若さでと思うぐらいとても適切でした。言うことが全 … 続きを読む

草なぎ剛「今、僕が、皆さんにお薦めしたい、こういうドラマを見ていただきたいと思うドラマです」「終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-」

ドラマ2025年10月14日

-日々の撮影を乗り切るリラックス方法、元気と健康の秘訣(ひけつ)は?  食事、睡眠、運動にはもちろん気を遣っています。ただ大事なのは、心の持ちようだと思います。「5時間しか寝ることができなかったじゃなくて、5時間も寝ることができた」とかね。 … 続きを読む

Willfriends

page top