【週末映画コラム】長尺映画を2本。ビクトル・エリセ31年ぶりの新作『瞳をとじて』/アリ・アスターの頭の中をのぞいてみたくなる『ボーはおそれている』

2024年2月16日 / 07:00

『ボーはおそれている』(2月16日公開)

 

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 明日に帰省を控えた不安症で怖がりのボー(ホアキン・フェニックス)は、現実とも妄想ともつかぬ不可思議な出来事に悩まされ、眠れずにいた。ところが、いつの間にか眠って寝坊し、飛行機の時間に間に合わないと焦る中、部屋の鍵とスーツケースを盗まれる。

 帰省できなくなったことを実家に電話すると、母(パティ・ルポーン)が怪死したことを知らされる。ボーは何とか母のもとへ駆け付けつけようとするが、次々と予想外の奇妙な出来事に見舞われ、里帰りは奇想天外な旅となる。

 A24が製作し、『ヘレディタリー 継承』(18)『ミッドサマー』(19)の鬼才アリ・アスター監督とホアキン・フェニックスがタッグを組んだ、ブラックユーモアに満ちたスリラー。ひたすら情けないホアキンの姿も見どころの一つ。共演はネイサン・レイン、エイミー・ライアン、パーカー・ポージーほか。

 冒頭の出産シーンから不穏な空気が流れ、その後も、これは現実なのか、それともボーの妄想や悪夢なのかと判別に苦しむような、シュールなシーンが続く。しかも3時間! 時折笑わされながらも、同時に戸惑いや居心地の悪さを覚えるのだが、「この後の展開はどうなる」「一体どう決着をつけるのか」といった好奇心が湧いて、結局最後まで見てしまうという摩訶不思議な映画。

 大筋は母と息子のトラウマを巡る一種の心理劇で、シュールなシーンの連続はこけおどしの極致という感じもする。キャッチコピーは「ママ、きがへんになりそうです」だが、見ているこちらも気が変になる? 一体どうすればこんな表現を思い付くのか、アスター監督の頭の中をのぞいてみたい。

(田中雄二)

 

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