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1、2にも増して何でもありのごった煮感が魅力の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』/父の目から見た駄目男、ドラ息子としての宮沢賢治とは『銀河鉄道の父』【映画コラム】

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3』(5月3日公開)

(C)2023 Marvel

 癖が強くて訳ありな銀河の落ちこぼれたちが結成したチーム「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の活躍を描く、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の人気シリーズ第3弾。

 おなじみガーディアンズのメンバーは、“スター・ロード”ことピーター・クイル(クリス・プラット)をリーダーに、凶暴なアライグマのロケット(ブラッドリー・クーパー)、マッチョな破壊王ドラックス(デイブ・バウティスタ)、ツンデレな暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)、ガモーラの義理の妹ネビュラ(カレン・ギラン)、天然型エスパーのマンティス(ポム・クレメンティエフ)、元宇宙海賊のクラグリン(ショーン・ガン)、小さな“木”グルート(ビン・ディーゼル)。

 アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の人ガモーラを失ったショックから立ち直れないクイルと、ガーディアンズの仲間たち。

 そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケットが命の危機にひんする事態が発生。大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、彼自身の知られざる過去にあった。

 このシリーズの見どころというか聴きどころは、例えば1の「アイム・ノット・イン・ラブ」(10cc)のような、抜群のタイミングで流れる既成の曲の選択にあるのだが、今回はロケットの心の声を代弁したような、オープニングのレディオヘッドの「クリープ」(それも何とアコースティックバージョン)にいきなりやられた。

 本作の監督・脚本は、シリーズを一貫して手掛けたジェームズ・ガン。前回はクイルのルーツ探しだったが、今回はロケットのルーツが語られる。1、2にも増して何でもありのごった煮感が大きな魅力。コメディー、アクション、特撮、音楽、おまけにほろりとさせる人情話を融合させ、2時間半を飽きさせないところはさすがだ。

 このシリーズのテーマは家族や絆の大切さだが、ガーディアンズのメンバーを見ていると、人種や性別や肌の色、見た目の違いを気にすること自体がナンセンス、そんなことは大した問題ではないと思えてくる。本作を見ると、そこがこのシリーズの大きな魅力なのだと改めて気付かされる。

 今回は、“最終章”ということで、ノアの箱舟のようなシーンもあり、最後に一応収まりはみせるが、形を変えてまた続きそうな気配もある。

『銀河鉄道の父』(5月5日公開)

(C)2022「銀河鉄道の父」製作委員会

 門井慶喜が宮沢賢治の父・政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作を、監督・成島出、脚本・坂口理子で映画化。

 岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)の長男・賢治(菅田将暉)は、家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。

 中学卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒とわが道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシ(森七菜)の病気をきっかけに、賢治は筆を執るが…。

 これまで賢治を理解しない敵役のように語られることが多かった政次郎を、実は息子を愛し過ぎた保護者であり、最大の理解者であったという新たな視点で描いてイメージを一新。

 そこから、父と子の愛と相克を軸に、とかく聖人、人格者、理想家として語られることの多い賢治像を、父へのコンプレックスを持った駄目男、ドラ息子としての側面から浮き彫りにしていくところが面白い。

 役所の持つコミカルな味と菅田の持つ狂気性とピュアな感覚が相まって、ユニークな父子像を現出。また、政次郎と賢治、トシに加えて、母・イチ(坂井真紀)、祖父・喜助(田中泯)、弟・清六(豊田裕大)も交えたユニークな家族劇として仕上げている。

(田中雄二)