訳ありのボクサーを主人公にした、熱き肉体派映画『生きててよかった』『義足のボクサー GENSAN PUNCH』【映画コラム】

2022年5月12日 / 14:41

『義足のボクサー GENSAN PUNCH』(5月27日沖縄先行公開、6月10日全国公開)

(C)2022「義足のボクサー GENSAN PUNCH」製作委員会

 沖縄に生まれ、母(南果歩)と共に暮らす津山尚生(尚玄)は、プロボクサーを目指しているが、幼い頃に右膝下を失い、義足を付けているため、日本ではライセンスを得ることができない。夢を諦め切れない津山は、フィリピンへ渡ることを決意する。

 フィリピンでは、プロを目指すボクサーたちが集う大会で3戦全勝すればプロライセンスが取得でき、さらに義足の津山でも、毎試合前にメディカルチェックを受ければ、ほかの者と同じ条件で試合ができるのだ。

 津山はトレーナーのルディ(ロニー・ラザロ)と共に、慣れない異国の地で夢への第一歩を踏み出す。

 ハンディキャップにくじけず、目標に向かう実在のボクサーをモデルに、彼を支える異国の人々やジムの仲間たちの姿を描く。タイトルの「GENSAN=ジェンサン」はジムがある街の愛称。フィリピンでのボクシング熱の高さが伝わってくる。

 昨年の東京国際映画祭でも上映された本作の監督はフィリピンの名匠ブリランテ・メンドーサ。彼の映画には台本がないという。それ故、フィクションなのかノンフィクションなのか、あるいは劇映画なのかドキュメンタリーなのか、その境界線がはっきりしないのが特徴だが、その分、緊迫感や臨場感が高まり、リアルさが増すところがある。

 この映画の場合は、ボクシングの試合や、津山と現地の人々との会話や触れ合いのシーンなどにその手法が生かされていた。加えて、役柄同様に、自身も沖縄出身で、海外作品にも出演している尚玄が体現する、ボクサーとしての“動き”も見事だった。

(田中雄二)

 

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