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今回は、訳ありのボクサーを主人公にした、熱き肉体派映画を2本紹介する。どちらも、海外作品でも活躍している俳優が主演している。
『生きててよかった』(5月13日公開)
子どもの頃、映画『ロッキー』(76)を見たことがきっかけでプロボクサーになった楠木創太(木幡竜)と、シルベスター・スタローンに憧れて俳優になった松岡健児(今野浩喜)。
だが、楠木は、ドクターストップにより強制的に引退を迫られ、妻子がいる松岡もなかなか役に就けず、アルバイトに励む日々が続いていた。楠木は、リングへの未練と執着を捨て切れずにいたが、恋人の幸子(鎌滝恵利)との結婚を機に引退を決意する。
新たな生活を築くために、地道な仕事に就いた楠木だったが、何をやってもうまくいかず、社会にもなじめず、苦しい日々を送る。
そんな中、ファンを名乗る謎の男(柳俊太郎)から、大金を賭けた地下格闘技のオファーを受ける。久しぶりに上ったリングで忘れかけた興奮がよみがえった楠木は、松岡の協力のもと、再び闘いの世界にのめり込み、生きていることを実感していく。
元プロボクサーという経歴を持ち、ドニー・イェン主演の『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』(10)の敵役などで、中国を拠点に活躍。最近は逆輸入の形で、ドラマ「アバランチ」で印象的な演技を披露した木幡が、リングでしか生きられない元ボクサーを演じるアクション劇。
監督・脚本は鈴木太一。楠木に理解を示すボクシングジムの会長役の火野正平がなかなかいい味を出している。
木幡の引き締まった肉体と格闘アクションはさすがの一言。ただ、この映画は、人物描写やストーリー全体に粗削りなところや説明不足が目立ち、せっかくの木幡の個性を生かし切れていないのが残念だ。
また、同じくボクサーを主人公にした『あゝ、荒野』(17)や『アンダードッグ』(20)同様に、必要以上にボクシング(格闘技)とセックスを結びつけて描いているところには違和感を覚えた。もっとストレートにパンチやキックを繰り出してほしかった気がする。