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さて、話を本作に戻すと、前作に続いてプロデューサー兼トレーナー役で助演するスタローンのカードの切り方は、もはや何でもありの様相を呈している。今回は、ドラゴ親子もさることながら、彼らを捨てた女性役で、何と元妻のニールセンまでもが出てきたのには驚いた。
監督は前作のライアン・クーグラーに代わって、新人のスティーブン・ケイプル・Jr.が起用されたが、ボクシングを通した家族の話として、あるいは見る側が望む通りに展開する予定調和の話として、達者な演出を披露する。
また、ラングレンが「この映画の主要なテーマの一つは時間の経過だ。スタローンの人生とロッキーの人生、私の人生とイワンの人生には通じるものがある」と語るように、最初の『ロッキー』から40数年、『ロッキー4~』からも30数年、という時の流れが、見る側にとっても、この映画を感慨深いものにしている。
例えば、アドニスが一度ロッキーから離反するシーンは、かつての老トレーナー、ミッキー(バージェス・メレディス)とロッキーのそれと重なるし、前作にも増してビル・コンティ作曲のオリジナルの音楽が流れることも、涙腺を刺激する。
今回も、練習や試合の場面も含めて、「やったらやれる」「諦めるな」「何度倒されても立ち上がれ」という熱き“ロッキー魂”が、前作にも増してアドニスへ継承されているところがうれしい。ジョーダンとムンテアヌが体現したリアルなファイトシーンにも拍手を送りたい。(田中雄二)