【映画コラム】実話を基にしたアジア映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』『暁に祈れ』

2018年12月8日 / 16:34

 一方、タイを舞台にした『暁に祈れ』は、麻薬所持によって“生き地獄”と呼ばれるタイの刑務所に服役するが、ムエタイで再生し、生き残ったイギリス人ボクサー、ビリー・ムーアの実体験を描く。

 実際の刑務所で撮影され、そのほとんどが本物だという全身入れ墨の囚人たち(誰が誰だかほとんど区別がつかない)が異様な雰囲気を醸し出す。加えて、最低限の字幕しか出さず、見る者にも、ビリーが感じたであろう、人も言葉も分からぬ恐怖と孤独を味わわせる。

 『ミッドナイト・エクスプレス』(78)のトルコよりも、さらにひどい刑務所がタイにあったのかという感じがしたが、これもそれほど昔の話ではないのだから驚く。

 ビリー役のジョー・コールは熱演し、全編に異様な負のパワーが満ちあふれてはいるが、正直なところ、登場人物の誰にも共感、感情移入することができない。ストレートなバイオレンス描写なども含めて、生理的に駄目だという人も少なくないのではないかと思う。

 このように、対照的な2本だが、どちらもアジアの現実の一端を描いていることだけは確かだ。(田中雄二)

(C)2017 – Meridian Entertainment – Senorita Films SAS

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