【映画コラム】2人の“映画ばか”の何とも幸せそうな姿が印象に残る『ヒッチコック/トリュフォー』

2016年12月10日 / 17:31
(C)COHEN MEDIA GROUP/ARTLINE FILMS/ARTE FRANCE 2015 ALL RIGHTS RESERVED. PHOTOS BY PHILIPPE HALSMAN/MAGNUM PHOTOS

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 フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーによるアルフレド・ヒチコック監督へのインタビューをまとめた名著『映画術 ヒッチコック/トリュフォー』の製作過程をドキュメンタリー映画化した『ヒッチコック/トリュフォー』が公開された。

 名作ドキュメンタリー『マーティン・スコセッシ 私のイタリア映画旅行』(99)を手掛けたケント・ジョーンズが監督している。

 とはいえ、2人が話している映像や肉声はあまり残っていない。そこで本作は、スコセッシをはじめ、ピーター・ボグダノビッチ、デビッド・フィンチャー、ウェス・アンダーソン、黒沢清ら10人の現役監督のコメントと、ヒチコック映画の名場面を挿入しながら、映画製作の裏側、ヒチコックが作品に込めた意図、ヒチコックとトリュフォーの心情などを明かしていく。

 例えば、ヒチコックの『めまい』(58)にインスパイアされて『ゴーン・ガール』(14)を撮ったフィンチャーが、『めまい』を「美しい変態の映画」と評するなど、興味深いコメントが満載だ。

 インタビュー当時は、単なる娯楽作の監督とみなされ、“映画作家”としては認められていなかったヒチコックが理解者を得てうれしそうに話す姿、対するトリュフォーも憧れの人を前に実に楽しそうに話している。不幸な生い立ちのトリュフォーはヒチコックに父親的なものを感じていたのかもしれない。そんな、2人の“映画ばか”の何とも幸せそうな、奇跡のような出会いを見ると、こちらまで幸福な気分になってくる。

 本作の功績は、トリュフォーがヒチコックの評価を高めるために果たした役割の大きさを改めて知らしめた点だろう。それは、ボグダノビッチの名著『インタビュー ジョン・フォード』にも同様のことがいえる。映画は、語り語られることで初めて永遠性を得るのかもしれない。(田中雄二)

*本作のタイトルのように“アルフレッド・ヒッチコック”と表記する場合もあるが、ここでは『記者ハンドブック』新聞用字用語集(共同通信社刊)に基づき、タイトル以外は“アルフレド・ヒチコック”と表記している。


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