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「名作映画を映画館で見る」をモットーに、7回目を迎えた「午前十時の映画祭」が開催中。今回の目玉は、何と言っても黒澤明監督の不朽の名作『七人の侍』(54)が、一部の劇場を除いて4Kデジタルリマスター版で上映されていることだ。
デジタルリマスターとは、フィルムそのものをデジタル技術で徹底的にクリーンナップし、鮮明な画像と音響を取り戻すこと。これまでもさまざまな旧作映画に施されてきたが、実はカラー映画よりも、むしろ『羅生門』(50)『東京物語』(53)『ゴジラ』(54)といったモノクロ映画にこそ効果が発揮されていると感じていたので、今回の『七人の侍』に対する期待も大きなものがあった。
『七人の侍』の舞台は戦国時代。野武士の脅威にさらされた農民たちが自衛のために侍を雇うことを思いつく。そして勘兵衛(志村喬)をリーダーとする七人の侍が集まり、野武士との壮絶な戦いが繰り広げられるというもの。
あまりの迫力と面白さに世界中が驚き、『荒野の七人』(60)としてリメークされたほどの、この名作の唯一の欠点は、画面の暗さとせりふの聞き取りにくさにあった。
これまでも、1975年の4チャンネルステレオ音響ニュープリント完全オリジナル版、1991年のニューリアルサウンド版が公開されたが、どちらも残念ながらその欠点は解消されてはいなかった。
ところが今回は、スタッフ、キャストを表わす漢字が独特の形で表示されるオープニングクレジットから鮮やかに映り、バックに流れる音楽もよく聴こえた。そして、これならば本編も、という期待通りに、人物はもちろん、背景やセットの隅々までくっきりと映り、うれしい驚きを与えてくれた。
また、黒澤映画で長年スクリプター(記録)を務めた野上照代さんが「三船ちゃんのせりふが分からないって言われていて、かわいそうだった。(今回は)よく分かりますよね。呼んで見せてあげたい」と語ったように、物語の鍵を握る菊千代を演じた三船敏郎のせりふがきちんと聞き取れた時には感動を覚えた。
本作では、侍役の七人はもちろん、農民や野武士に扮(ふん)した俳優たちも、とにかくよく動きよく走る。生身で勝負する俳優たちのエネルギーが画面からほとばしる。これは今のCG全盛のアクションでは残念ながら出せない味だと感じながら、気がつけば3時間27分があっという間に過ぎ去っていた。
くしくも、来年の1月27日からは本作と『荒野の七人』をルーツに持つ『マグニフィセント・セブン』が公開される。その前に見事に修復が成った本作をぜひ見るべし。(田中雄二)