【映画コラム】ユニークなドキュメンタリー『美術館を手玉にとった男』と『キャノンフィルムズ爆走風雲録』

2015年11月21日 / 19:56

 片や『キャノンフィルムズ爆走風雲録』は、1980年代、映画製作会社「キャノンフィルムズ」を発展させ、ハリウッドに旋風を巻き起こしたイスラエル出身でいとこ同士のメナヘム・ゴーランとヨーラム・グローバスの足跡を追ったもの。

 同社は、製作、配給、興行を全て自社で行うシステムを確立し、チャールズ・ブロンソンの『デス・ウィッシュ』シリーズ、ショー・コスギの『ニンジャ』(84)、チャック・ノリスの『デルタ・フォース』(85)、そしてジャン=クロード・バン・ダムやシルベスター・スタローンの主演作を製作。低予算のアクションやホラー映画で多いにもうけた。

 その一方、資金繰りに困っていたロバート・アルトマンやジョン・カサベテス、ジャン=リュック・ゴダールといった監督たちに資金を提供して映画を撮らせ、“芸術映画”でカンヌ映画祭を席捲するという離れ業もやってのけた。

 本作は、生涯300本以上の映画を製作した愛すべき“映画ばか”のゴーランと財務担当で商売人のグローバスという名コンビの成功と没落、蜜月と別れを描き、諸行無常や栄枯盛衰を感じさせるが、それだけでは終わらない。

 久しぶりに再会した二人が、かつて自分たちが作った映画を見ながら、楽しそうに語り合うシーンをラストに入れることで、彼らはもちろん、見る側の気持ちも救ってしまうのだ。

 両作は、優れた脚本や構成、編集によって、描いた人物の魅力を伝え、見事な人間賛歌とした点で共通する。(田中雄二)

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