【コラム】中森明菜、復活への決意秘めた「Rojo-Tierra-」  5年ぶりの新曲初登場8位

2015年1月29日 / 20:03

中森明菜

 「中森明菜復活!」。このニュースを小躍りして聞いたファンは少なくなかったに違いない。そしてその本番当日となった昨年大みそかのNHK紅白歌合戦。か細い声でやや緊張気味に登場した明菜を見て、はらはらしたファンもいたかもしれない。しかしそこで披露された新曲「Rojo-Tierra-」は脈々と生命力が波打つような力強い作品であり、明菜も歌い進むにつれ、声を音に乗せる心地よさを感じているように上気してきていた。この歌は、芸能界の色眼鏡的にではなく、あくまでも音楽的に見る必要がある。なぜならば、実はそこには復活への並々ならぬ決意が秘められているように思えてならないからだ。

 「Rojo-Tierra-」は、体調不良による活動休止以前も含めた近年の明菜の音楽を特徴づけるエレクトロニックサウンドの流れに沿ったものだが、現在、米国を中心に世界の音楽界を席巻するEDMサウンドが色濃く盛り込まれている。EDMとは電子音楽を中心に構成されたダンスミュージックで、「Rojo-Tierra-」にも聴いているだけで体を動かしたくてたまらなくなるような強い求心力がある。

シングル20年ぶりTOP10入り

 アフリカンな打楽器のリズムのイントロ部分から、いきなりサビ部分にあたる心の叫びのような明菜の力強いボーカルが響く。そして「私たちはひとりじゃない~」という印象的なフレーズのパートに続き、そこからAメロ、Bメロと曲が頭の部分から構成されていく。繰り返されるサビの部分は、「ミ・アモーレ」など誰もが知る明菜の情熱的なラテン風味の味付けが施され、ファンなら思わずニヤリだろう。情感たっぷりに言葉を発する明菜特有の歌い方も時折姿を見せる。

 つまり、まったく新しいEDMサウンドを果敢に取り入れた上で、明菜の強みであるパッションや情感などを惜しみなく披露し、歌詞の表現力にも進化が見られる。再出発に当たって、そんな今現在の明菜を明確に表している歌なのだ。なによりも、命のしなやかさと力強さを歌い、傷ついた者たちへの励ましになっている点が力強い。

『歌姫4-My Eggs Benedict-』

 折しもこの「Rojo-Tierra-」は2月2日付のオリコン週間ランキングでは20年ぶりに8位に入ったというニュースが報じられたばかり。ベストアルバムも売れ行き好調で、28日に発売されたばかりのカバーアルバムシリーズの第4弾『歌姫4―My Eggs Benedict-』も好評だ。新しい明菜伝説の第一歩は確かに踏み出せたと言ってよさそうだ。

 (エンタメ批評家・阪清和)

 

 【阪 清和(さか・きよかず)】元共同通信社文化部記者。2014年から、音楽・映画・演劇・ドラマ・漫画・現代アートなどの批評、インタビュー、コラムを執筆。


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