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【映画コラム】自然の脅威にさらされた人間を描く『ポンペイ』と『ノア 約束の舟』

 自然の脅威にさらされた人間を描いた2本の大作『ポンペイ』と『ノア 約束の舟』が相次いで公開される。

(C) 2014 CONSTANTIN FILM INTERNATIONAL GMB HAND IMPACT PICTURES (POMPEII) INC.

 7日公開の『ポンペイ』は、西暦79年、伊ベズビオ火山の噴火で地中に埋没した古代都市を舞台に、ローマ軍に一族を虐殺された剣闘士のマイロ(キット・ハリントン)と富裕商人の令嬢カッシア(エミリー・ブラウニング)との悲恋を描く。

 これまで幾度も映画化されてきた史劇「ポンペイ最後の日」を、今回は『バイオハザード』シリーズのポール・W・S・アンダーソン監督が3Dを使って迫力満点に再現した。

 ドラマの部分では、2人の許されぬ恋の物語に『スバルタカス』(60)や『グラディエーター』(00)をほうふつとさせるローマの奴隷剣闘士の物語を加えながら2時間以内に手際良くまとめている。

 個性派俳優ドナルド・サザーランドの息子のキーファー(元老院議員)と名優リチャード・ハリスの息子のジャレッド(カッシアの父)による2世対決も見ものだ。

(C) MMXIII Paramount Pictures Corporationand Regency Entertainment (USA) Inc. All Rights Reserved.

 一方、13日公開の『ノア 約束の舟』は、神の啓示を受けたノア(ラッセル・クロウ)が巨大な箱舟を作り、大洪水の中、家族と動物のつがいを乗せて40昼夜を生き延びたという、旧約聖書の創世記の一説を映画化したもの。

 『レスラー』(08)『ブラックスワン』(10)など人間のダークな内面を深く掘り下げることで定評のあるダーレン・アロノフスキー監督は、今回も、神との約束を守ろうとするあまり狂気に陥り、神と家族との間で葛藤するノアの姿を中心に描いている。

 さて、なぜ今「ポンペイ最後の日」と「ノアの箱舟」なのか、などとやぼなことは言うまい。なぜなら、どちらもサイレント映画の時代から、トーキー→カラー→大型画面→CG、3Dと、技術革新に伴って何度も映像化されてきたからだ。

 ほかにも、紅海が二つに割れる『十戒』(56ほか)、大競技場での戦車競走が見せ場の『ベン・ハー』(59ほか)など、神話や史劇はスペクタクル大作の格好の題材となってきた。

 つまり、どんな題材もリアルな映像で再現可能となった今、あらためて火山の噴火、巨大な箱舟、大洪水などを表現してみたということなのだろう。

 もちろん、東日本大震災を経た今となってはどちらも単純なスペクタクル劇としては楽しめないところがあるし、こうした映画は自然の中での人間の無力さを示しているとも言える。だが有史以来、人間は幾度も自然の脅威にさらされ絶望させられながらも、命と希望を子孫につないできた。

 こうした題材が繰り返し映画化されるのは、スペクタクル大作に適しているからという理由に加えて、自然への畏怖を忘れてはならないという思いも込められているはずだ。(田中雄二)