「豊臣兄弟!」第24回「軍師官兵衛!」播磨攻略戦を印象付けた若手俳優たちの熱演【大河ドラマコラム】

2026年6月25日 / 16:39

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。6月21日放送の第24回「軍師官兵衛」では、小一郎と秀吉が播磨平定を達成し、織田信長(小栗旬)に反旗を翻した荒木村重(トータス松本)に幽閉されていた黒田官兵衛(倉悠貴)も救出された。

(C)NHK

 その過程で戦国時代の過酷さをまざまざと見せつける悲劇的なドラマが繰り広げられたが、それを強く印象づけたのは、若手俳優たちの熱演だ。まず視聴者の大きな反響を集めたのが、村重の妻・だし役の山谷花純。小一郎たちが包囲する中、だしは籠城を続ける村重を支えていたが、小一郎の計略により、村重はついに信長への謝罪と降伏を受け入れる。ところが、信長を恐れた村重が、直前になってだしや家臣たちを置き去りにして出奔。これですべてがご破算となり、一族、家臣たちはことごとく討ち取られ、だしもたった一人で処刑される…。

 これまで村重とだしの夫婦仲睦まじい様子がたびたび描かれていた上、この回も村重がだしに「もし万が一の時は、この命に代えても、そなたのことは守る」と語っていただけに、夫に裏切られただしが怒り狂い、床板に爪を立てながら「おのれ村重!」と絶叫するシーンには、すさまじい怒りと悲しみがにじんでいた。ところが一転、その直後の処刑シーンでは、自分の運命を受け入れたような穏やかな表情で目隠しを断ると、「殿、それでも、お慕い申し上げておりました」とつぶやき、悲しい最期を迎える。その二つの対比が、だしの気高い生き様を強く印象付けた。

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 山谷は、大河ドラマ初出演となった「鎌倉殿の13人」(22)でも、悲劇的な最期を迎える源頼家の妻せつを熱演。かつて筆者がインタビューした際、「『鎌倉殿の13人』が、俳優としてのターニングポイントになった」と語っていたが、二度目の大河ドラマ出演となる本作でも、戦国の姫の気高さとりりしさを見事に表現し、俳優としての成長をうかがわせた。

 そしてもう一人、悲劇的な最期を迎えたのが別所長治だ。別所氏は、家臣たちの足並みがそろわない中、一度は織田に味方すると約束しながら、後に敵対する毛利方についたことで、秀吉の軍に包囲される。しかし、歩調を合わせていた村重が敗れたことを知り、降伏を決断。降伏を受け入れた後、小一郎や秀吉の前で「ちょうど去年の今頃も、こうしてあの花を眺めておった。あのとき、間違いに気づいておればのう…。無念じゃ…」と目に涙を浮かべながらつぶやく姿には、言葉以上の悔しさがにじんでいた。

 長治役の下川恭平は、2004年生まれの21歳。これまで、大ヒット映画『国宝』(25)や連続テレビ小説「ばけばけ」(25~26)にも出演し、頭角を現してきた。特に、「ばけばけ」では、高石あかり演じる主人公・トキに思いを寄せながらも、「怪談が苦手」という理由で一方的に別れを告げる学生・小谷春夫役をコミカルに演じ、注目を集めた。今回は、その小谷役とは打って変わったシリアスな演技で、悲運の武将・別所長治を熱演。幅広い演技力をアピールした。

 山谷も下川も、登場シーンは少ないものの、限られた出番の中でそれぞれの役を的確に表現。小一郎と秀吉を苦しめた播磨攻略戦を鮮烈に彩り、もっと2人のドラマを見たかった…とまで思わせてくれた。もちろん、物語の中心は豊臣兄弟を演じる仲野や池松で、彼らの演技が見事なのは言うまでもないが、その周りで物語を支える一人一人の尽力によって、「豊臣兄弟!」そして大河ドラマという作品は出来上がっている。それを改めて教えてくれる2人の熱演だった。

(井上健一)

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