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注目の新作がめじろ押し!
1月6日から公開される『非常宣言』は、『パラサイト 半地下の家族』『ベイビー・ブローカー』のソン・ガンホが主演。コロナ直前の2020年1月に全国公開されて大ヒットした『パラサイト』とどうしても比較したくなる。
とはいえ、こちらは豪華キャストが集結したブロックバスター映画なので、タイプは全く異なる。旅客機内で発生したバイオテロ事件を解決しようと奮闘する人たちの群像を描く航空パニック超大作だ。
アカデミー賞の作品賞やカンヌ国際映画祭のパルムドールを受賞した『パラサイト』と比べると、芸術性よりも娯楽性の方が勝っているが、人間の業や、生きる意味を問いかけるメッセージ性もしっかりあって、バランスがいい。韓国映画の水準の高さ、世界をにらんだ視野の広さを象徴する一本といえるだろう。
国際レベルという意味では、『パラサイト』のポン・ジュノに比肩する国際派監督パク・チャヌク(『オールド・ボーイ』『イノセント・ガーデン』)の新作『別れる決心』が、2月17日から公開される。
優秀で清廉な刑事と、容疑者となった未亡人によるメロドラマ。パク・チャヌクにしてはショッキングな描写は控えめだが、内容は十分にショッキングで、彼らしいけれん味たっぷりの演出や編集がさえわたる。
昨年のカンヌで監督賞に輝き、今年のアカデミー賞の国際長編映画賞でショートリスト(15候補)入りを果たしている。
さらに『パラサイト』絡みでは、主人公一家の長女を演じたパク・ソダム主演の『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』が1月20日から公開に。タイトル通り“ドクターX”のように失敗しない天才ドライバーの運び屋を演じる。
注目したいのは、ソン・ガンホの遺伝子を受け継ぐパク・ソダムの一重まぶたではない。ハリウッド大作に引けを取らないカーチェイス・シーンだ。道路や市街地を封鎖しなければ撮影不可能なシーンも多く、ここでもKOFICの存在の大きさが感じられる。
同じく2月10日公開の『呪呪呪/死者をあやつるもの』にも、大掛かりなカーチェイス・シーンがある。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』やNetflixドラマ「キングダム」などで世界的に注目される“Kゾンビ”ものだが、そこに“呪い”というホラーの別の人気ジャンルを融合させて新味を持たせている。
Kゾンビといえば、動きの速いゾンビが特徴で、呪術によってゾンビ軍団が一糸乱れぬアクションを繰り広げるのだ。
加えて、ゾンビが自動車だって運転し、都会のど真ん中で大規模に展開されるカーチェイスにも驚かされる。原作・脚本を手掛けたのは、『新感染』のヨン・サンホ。監督最新作となるNetflix映画『JUNG_E/ジョンイ』も1月に配信されるので、そちらも楽しみだ。
韓国映画で定番となっている裏社会の抗争を扱った“韓国ノワール”では、『野獣の血』が同じく1月20日公開。
港の利権争いに振り回されるヤクザたちを描いて、『ゴッドファーザー』の影響を色濃く感じさせる。
ほかにも、豊臣秀吉の朝鮮出兵によって起きた閑山島海戦を題材にした歴史スペクタクル『ハンサン -龍の出現-』(3月17日公開)や、“国民俳優”アン・ソンギ主演のヒューマンドラマ『よりそう花ゝ』(1月13日公開)、ラブコメ系では『ジャンルだけロマンス』『パラム パラム パラム』(ともに2月3日公開)などが見られる。
猫好きには、『子猫をお願い』で知られるチョン・ジェウン監督が、取り壊される団地で暮らす250匹の猫のお引っ越し作戦を追ったドキュメンタリー『猫たちのアパートメント』(公開中)がお薦め。
俳優に関しては、昨年大ブレークを果たしたソン・ソックも「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」のパク・ウンビンも、きっかけは映画ではなくドラマだったので、ここでは割愛したい。質が高く豊富なラインアップを誇る韓国映画に、韓流ファンや映画好き以外もぜひ注目してほしい。
(外山真也)