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例えば、前述した第二十九回の「いまだ制度も整わず、外国には文句の言われ放題。金もない」という言葉。これも、新政府に批判的で一歩引いた視点の家康ならではだ。
だが、今やそれに立ち向かわなければならない栄一にとっては、乗り越えるべき目の前の壁のような意味を持つ。その2人の距離の開きが、「こういう見方もあるのか」という視聴者の気付きにつながり、ドラマをより豊かにしているように感じられるのだ。
とはいえこれは、あくまでも個人的な印象に過ぎない。だが、栄一の活躍とそれを見守る家康の視点に注目すると、また新たな物語の魅力が見えてくるのではないだろうか。(井上健一)