<ライブレポート>RIKU、初のビルボードライブ・ツアー完走 「This is me ~約束の詩~」が示した歌手としての信念と現在地

2025年12月30日 / 18:00

 昨年、結成10周年を迎えたTHE RAMPAGEのヴォーカル・RIKUによるソロ公演が、好評につきビルボードライブ東京で追加開催された。今回筆者が足を運んだのは、その第二部。クリスマスソングが途切れることなく流れる空間には、特別な夜を待ちわびるオーディエンスの静かな高揚と、どこか祝祭的なムードが共存していた。

 定刻となり、ステージにはバンドマスターのnozomi.(Gt.)を中心に、Yoshiya Matsuura(Dr.)、Takuro Tsubaki(Ba.)、MARI(Key.)という盤石の布陣がスタンバイ。さらに、コーラスには田中龍志(Zuttoiru)とNANAの男女2名が配置され、音像の厚みと広がりを担う構えだ。完全フルバンド、打ち込みなし。以前のインタビュー(※)で「完全にフルバンドで、データも打ち込みも一切なし。嘘も逃げもない、“本来の音楽のライブ”をやります」と宣言していたその覚悟が、編成からもはっきりと伝わってくる。

※ https://www.billboard-japan.com/special/detail/5014

 バンドメンバーたちが肩慣らしの演奏を始めると、真っ白なTシャツにデニムのセットアップという極めてシンプルな装いでRIKUが姿を現す。装飾を削ぎ落とした佇まいは、この夜が“歌そのもの”で勝負する時間であることを雄弁に物語っている。オープニングナンバーは、自身のソロ曲「I’ll be your (k)night」。ミドルテンポのオーセンティックなR&Bに身を委ねるように、柔らかく、しかし芯のある声が会場を満たしていく。甘さと切なさを同時に内包したヴォーカルは、RIKUが積み重ねてきた年月と経験の厚みを感じさせ、観客のハンドクラップも自然発生的に重なっていった。

 「千穐楽を迎えました。僕自身も楽しみながら、このひと時を過ごしたいと思います。短い時間ですが、よろしくお願いします」穏やかな語り口でそう告げると、続いて披露されたのはEXILE ATSUSHIの「Another World」。ディスコティックなグルーヴを持つこの楽曲を、RIKUは原曲へのリスペクトを保ちつつ、自身の声質と表現でしなやかに再構築していく。EXILEの「Change My Mind」では、ファンク色の強いビートが一気に会場の温度を引き上げる。「皆さんも今夜のライブの一員です。一緒にライブを作っていきましょう」と曲中で投げかけられたRIKUの言葉を合図にオーディエンスの身体が揺れ、クラップも増幅していく。

 「ここまでは先輩たちの楽曲をカバーしてきましたが、ここからは僕の音楽のパーソナリティを形作ってきた楽曲たちを聴いてください」

 そう前置きして歌われたのが、三浦大知の「Lullaby」だ。ミニマルなドラムとピアノを軸にしたアレンジの中、RIKUは言葉を一つひとつ確かめるように、丁寧にフレーズを紡いでいく。やがてサビに差し掛かると、演奏がふっと消えアカペラへ。張り詰めた静寂の中で響く声は、技巧を誇示するものではなく、むしろ“呼吸そのもの”のような生々しさを帯びていた。演奏が戻った瞬間、抑えきれない拍手がフロアから沸き起こる。この夜の前半を象徴する、強度の高い名場面だった。

 続いて披露されたのは、サザンオールスターズの「涙のキッス」、そして桑田佳祐のソロ曲「白い恋人達」。日本中を魅了してきた普遍的なメロディに、桑田の強烈な個性とは対照的な、RIKUのどこか「少年性」を残した透明な声が新たな息吹を与えていく。「白い恋人達」は歌詞に〈クリスマス〉という言葉こそ登場しないが、冬になると自然と思い出される名曲だ。ビルボードライブ東京の空間は、次第にロマンティックなムードに包まれていった。

 さらに、EXILE ATSUSHIのソロデビュー曲「いつかきっと…」を、ピアノ1台のみをバックに歌唱。余計な装飾を削ぎ落とした編成だからこそ、RIKUの声の芯と息遣いが際立ち、言葉一つひとつがまっすぐ胸に届く。憧れの先輩が残してきた楽曲を、自身の声で誠実に受け継ぐ姿勢が印象的だった。

 しっとりとしたバラードが続いた流れから一転、会場の空気を一気に明るく塗り替えたのが、優里の「ビリミリオン」。RIKUはステージを練り歩きながら、オーディエンス一人ひとりに語りかけるように歌っていく。シャッフル感のある力強いリズムは、どこか祭りのお囃子を思わせ、アイリッシュの香りも感じさせる旋律と相まって、曲が進むにつれて熱量は加速していった。〈頑張ろう 頑張ろう 頑張れ〉というフレーズを歌い終えると、「一生歌い続けて、頑張っていきます!」と力強く宣言。会場からは大きな歓声が沸き起こった。

 ここからは、コーラス隊の一人である田中龍志とのデュエット。自身の1stミニアルバム『Music to Music』収録曲「Sing A Song」を披露する。少しハスキーでスモーキーな田中の声と、透き通るようなRIKUの声は好対照だが、重なり合うと不思議な心地よさを生む。ユニゾン、ハーモニー、掛け合いを自在に行き来しながら、互いの声の持ち味を引き出し合っていく様子が印象的だった。思わず抱き合い、ハイタッチを交わす二人。「最高! 気持ちいいね」とRIKUが笑顔を見せる。続いて披露されたのは、Zuttoiruの「このままいつまでも君のこと」。ゆったりとしたグルーヴの上をリズミカルなフロウが縦横無尽に駆け巡る。エンディングではNANAも加わり、3声によるハーモニーが会場を包み込んだ。

 次にステージへ上がったのはNANA。挙手しながら「私にも歌わせていただけないでしょうか」と切り出すと、RIKUは「時間がないかな~」と一瞬焦らしつつ、「真っ白な衣装で俺より目立ってない?」と冗談を飛ばす。EXPG STUDIO 大宮校で学ぶ後輩であるNANAに先輩風を吹かせながら、しっかりと花を持たせるあたりにRIKUらしさが滲む。披露されたのはEXILE ATSUSHIとAIによる「So Special -Version AI-」と、JAY’EDの「また君と feat. Ms.OOJA」。NANAのソウルフルで力強く、それでいて抜けのあるハイトーンと、RIKUのクリアな高音が重なり、息の合ったハーモニーを描いていく。楽しそうに見つめ合いながら歌う二人の姿に、会場の温度はさらに上がっていった。

 「実は今日、ゲストを呼んでいます」。そう切り出したRIKUの一言に続き、BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBEの日髙竜太がステージに姿を現すと、会場からは大きなどよめきが起こった。「せっかくなので、二人でEXILEしたいと思います」と告げ、EXILEの「Kiss You」、そして「Over」を披露。RIKUの芯の通った中低域と、日髙の柔らかく包み込むような高音が重なり合い、楽曲に豊かな奥行きを与えていく。主旋律とハーモニーを自在に行き来しながら、互いの声を引き立て合うその在り方は、「競い合う」というより、長い時間を共に歩んできた者同士の信頼関係そのものだった。視線を交わし、わずかに頷き合いながら歌う二人の姿からは、EXILE TRIBEという系譜を背負ってきた重みが自然と滲み出ていた。

 本編ラストを飾ったのは、EXILE SHOKICHIの「青の日々」。鳴り止まぬアンコールに応え、RIKUは「僕の大好きなバンドの、素敵な楽曲です。辛いときに聴いて、勇気をもらってきた」と語り、Mrs. GREEN APPLEの「ダーリン」を真っ直ぐな声で歌い上げる。楽曲終盤、ステージ奥のカーテンが開くと、眼下には夜景とイルミネーションが広がり、ビルボードライブならではの光景が、この曲のクライマックスと美しく重なった。

 続けてRIKUは、自身の言葉で観客に語りかける。「ツアーを回る中で、どうしても自分の言葉で音楽を伝えたいと思って曲を作りました。音楽は受け取り方が人それぞれだけど、僕が伝えたかったのは、人には誰にでも良いところと悪いところがあるのに、なぜか悪い部分ばかりが強調されてしまうということ。ニュースやSNSを見ていると、そういう悲しい空気を感じることが多い。でも、僕は音楽でその空気をぶち壊したい。発想の転換が広がれば、世界はもっと輝くと思うんです。僕にできることは小さいけれど、こうして出会えた人たちにその思いを広げていくことが、僕にできることなのかなと思っています。これはまだ序盤に過ぎません。また絶対にビルボードライブでやりたい。そして、これからもいろんな場所で音楽を届けていきたい」

 そしてオリジナル曲「This is me ~約束の詩~」で自身の「歌手」としての信念と現在地を確かめ、この日のライブは静かな余韻とともに幕を下ろした。

Text:黒田隆憲
Photo:SHUN ITABA

◎セットリスト
【RIKUのMUSIC TIMES Billboard Live Tour】
2025年12月11日(木)東京・ビルボードライブ東京
2ndステージ
1. I’ll be your (k)night
2. Another World(EXILE ATSUSHI)
3. Change My Mind(EXILE)
4. Lullaby(三浦大知)
5. 涙のキッス(サザンオールスターズ)
6. 白い恋人達(桑田佳祐)
7. いつかきっと…(EXILE ATSUSHI)
8. ビリミリオン(優里) 
9. Sing A Song(田中龍志)
10. このままいつまでも君のこと(Zuttoiru)
11. So Special -Version AI-(AI+EXILE ATSUSHI)
12. また君と feat. Ms.OOJA(JAY’ED)
13. Kiss you(EXILE)
14. O’ver(EXILE)
15. 青の日々(EXILE SHOKICHI)
En1. ダーリン(Mrs. GREEN APPLE)
En2. This is me ~約束の詩~


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