エンターテインメント・ウェブマガジン
2025年9月26日、『ユイカ』の全国Zeppツアー【『ユイカ』TOUR 「Tsukimisou」】のファイナル公演が、東京・Zepp Haneda(TOKYO)で開催された。
素顔を解禁した20歳の誕生日である1月12日以降の『ユイカ』の活躍ぶりには、目を見張るものがある。3月に初の海外ライブでソウル、台北、4月には上海、広州、クアラルンプールを巡り、さらには6月に初の自主企画ライブも開催。【JAPAN JAM 2025】【LuckyFes’25】や【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025】といった大型の野外フェスに初めて出演したのもハイライトで、年明けからこの日までの期間は、『ユイカ』にとって挑戦的だったと言えるだろう。Billboard JAPAN 2025年上半期“Japan Songs(国別)”では「好きだから。」が、韓国、台湾、インドネシアのトップ10入りを記録し、着実に海外での広がりを見せ、11月には韓国の音楽イベント【WONDERLIVET 2025】への出演も決定。さらなる飛躍を予感させる。
Zepp Haneda(TOKYO)で開催された、『ユイカ』による初の全国Zeppツアーのファイナル。ステージの背面に掲げられていたのは、自然の月見草で作られた月で、そのまわりには星型の装飾が散らされている。始まりは華やかさとは対照的。ささやかで、通り過ぎてしまいそうなほど優しい登場だった。回転するシリンダーに植えられたピンによってハープが奏でられ、そこから繰り出されるのはアコースティックギターを弾き語る『ユイカ』の歌声と、カンノケンタロウ(Gt)、奥野翔太(Ba)、山本真綺(Dr)、そしてバンマスとしてメンバーを導く花井諒(Key/Gt)によるバンドサウンド。そうした想像を誘うように、彼らを中心にしたステージはまるでオルゴールで、キラキラとした音の粒が立ち上っていった。恋愛に潜むむず痒さや嫉妬、可愛い拗ね心までもが跳ねる歌声にさっそく表れていた「一途な女の子。」。『ユイカ』は「ありがとう!」と放っていつも通り、はつらつとした表情だ。ステージを縦横に歩いてフロアを見渡した「わがまま。」では、さきほどとは違うリラックスした声色を魅せる。「ひそかな願い。」でも、観客の声と手拍子をやわらかく巻き取りながら。
一口に思春期の恋愛と言っても、生まれる感情はひとつではなく、嬉しいときもあれば、些細なことでひどく嫉妬したりする。そういう細かく揺れ動く感情の変化を、絶妙なニュアンスを加えてわかりやすく表現する『ユイカ』の歌は、テーマは一貫していたとしても、どの曲にも同じ響きはない。ステージが真っ赤な照明に染まった「嘘」は、それが顕著に表れる。『ユイカ』の曲の中でも稀有なダークトーン一辺倒。衝動的でドラスティックな歌声が痛いくらいに人間らしかった。
〈貴方のゆうれいになりたいくらいに愛してる〉という歌詞で可愛らしさが溢れた「ゆうれいになりたい」や、アコースティック・コーナーの「おくすり」は、今年リリースされたラブソングたち。メロディや歌詞に漂う可愛さだけでは語り尽くせない魅力が、『ユイカ』の曲にある。こうした、いっそのこと人から離れた視点で愛を語る表現は、真っ直ぐな瞳を思い描かせるもので、その透明感に心を掴まれてしまう。自分では決めきれずに観客に2曲の中から選んでもらった「序章。」でも、仄暗い空間に溶けた少し掠れがかる声にその透明感が生まれていたと思う。
『ユイカ』は今回のツアーのために書いてきたという新曲「私が選んだもの」を披露する直前、手紙を通して心の内を吐露した。『ユイカ』の歌には、時々隠しきれない痛みが感じられる瞬間もあるのだが、それは気のせいでもなかった。「この左目が見えたら、ほかの人と同じ視界が見えたら、どんな世界が広がっているんだろう。ICLやレーシックなど今はとても医療が進化していますが、私の目はその治療で見えるようにはなりません」と弱視で左目がほとんど見えていないことを話してから、「でも、もし生まれる前に何かを自分自身に学ばせたくて、あえてそういう人生を選んだんだとしたら、少しは楽に生きられるなって思えたんです」と前向きな言葉を並べた。星の瞬く青い闇に包まれたステージ。真上から落ちるひと筋のライトに浮かび上がった『ユイカ』。「私が選んだもの」で奏でるアコースティックな音色と歌声は、鋭い矢となって迷いなく胸を射抜いた。覚悟を帯びた歌には、言葉を超える破壊力があった。『ユイカ』の持ち味といえるエネルギッシュな個性とボーカル。それだけでもこれだけの威力があったのは本当だ。暗闇こそが衝動の燃料で、『ユイカ』をさらに突き動かしている原動力になっていると思えた。
ベールが剥がされ、まろやかに揺蕩うこの空間。たとえサウンドがここになくても、自分の人生を肯定していることは「紺色に憧れて」の歌声の強さだけでも十分証明されていた。続いた「ラストティーン」の〈誰かの何かになれる、そんなやつになりたい。〉というフレーズにも重なるように、『ユイカ』から放たれるのは生き抜くための強烈な光だった。
顔に花を咲かせ、ギターを掻き鳴らしたリズミカルな「ローズヒップティー」で甘酸っぱさ、初めて16歳のときに作った曲と紹介した「好きだから。」で淡くて苦い思いを描く。どの曲も色褪せない。心ときめく人にはリアルタイムで届き、いつかの誰かには、懐かしさをそっと置いていく。『ユイカ』自身も「私にとって応援してくれるみんなは、推してくれている歴とかじゃなくて伝えてくれる愛の大きさだなとすごく思います」と伝えていた。
真っ直ぐに放たれる愛の矢は、衝動を伴いながら一層膨らんでいくばかりだ。来年の9月21日には、東京国際フォーラム ホールAでライブ【『ユイカ』LIVE「Sanvitalia」】を開催することが発表された。『ユイカ』の持つ明るさと歌に存在する“使命感”。その誠実さが驚くほどにしっかりと届いた、まばゆい一夜だった。
Text by 小町碧音
Photos by Viola Kam (V’z Twinkle)
◎公演情報
【『ユイカ』TOUR 「Tsukimisou」】
2025年9月26日(金)
東京・Zepp Haneda(TOKYO)
<セットリスト>
1. 一途な女の子。
2. わがまま。
3. ひそかな願い。
4. 嘘
5. ゆうれいになりたい
6. イマジナリーフレンド
7. 17さいのうた。
8. おくすり
9. 序章。
10. 私が選んだもの
11. 恋泥棒。
12. 紺色に憧れて
13. ラストティーン
14. すないぱー。
<アンコール>
1. ローズヒップティー
2. 好きだから。
【『ユイカ』LIVE「Sanvitalia」】
2026年9月21日(月・祝)
OPEN 18:00 / START 19:00
東京・東京国際フォーラム ホールA
チケット:指定席 7,700円(税込)
J-POP2025年10月6日
宇多田ヒカルの最新曲「Mine or Yours」のリミックス音源「Mine or Yours (Yaeji Remix)」が配信リリースとなり、ビジュアライザーが公開された。 本リミックスは、ソウルとニューヨークを拠点とするアーティス … 続きを読む
J-POP2025年10月6日
XinUがメジャーリリース後初となるライブツアーの開催を発表した。 11月12日リリースの最新EP『XinU EP #04』のリリースを記念して開催される本ツアー。昨年12月26日以来およそ1年振りとなる東京・恵比寿LIQUIDROOM … 続きを読む
J-POP2025年10月6日
Kroiが9月20日に出演した【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2025】より、TVアニメ『SAKAMTO DAYS』のオープニング・テーマ「Method」のライブ映像を公開した。 Kroiは【ROCK IN JAPAN … 続きを読む
J-POP2025年10月6日
BE:FIRSTが、新曲「Stare In Wonder」を配信リリースし、ダンスパフォーマンス映像とリリックビデオを公開した。 新曲「Stare In Wonder」は、10月8日より放送開始となるTVアニメ『ワンダンス』のオープニン … 続きを読む
J-POP2025年10月6日
King & Princeが、2025年10月22日にリリースとなるLIVE Blu-ray&DVD『King & Prince LIVE TOUR 24-25 ~Re:ERA~ in DOME』の通常盤に収録されるドキュ … 続きを読む