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フィーダーとELLEGARDENが、4月17日に【Sonic Bridges Tour 2025】を東京ガーデンシアターで開催した。
フィーダーとELLEGARDENによる、6か国10公演のジョイントツアー【Sonic Bridges Tour 2025】。ELLEGARDENの4人は結成当初よりフィーダーの楽曲を愛聴しており、細美武士(Vo./Gt.)は過去にフィーダーの来日公演にゲスト出演し、the HIATUSではフィーダーとカップリングツアーを行うなど、かねてより親交が深い。さらにはフィーダーが日本でライブを行うのは2019年9月以来約6年ぶり、この2バンドの競演は初ともあり、貴重な機会を目に焼き付けようと会場はチケット争奪戦を勝ち抜いたファンが集った。
開演前にELLEGARDENのメンバーがステージに登場し、日本公演のホストとして挨拶をする。「日本のバンドとイギリスのバンドがジョイントツアーでお互いの土地を回ることは後にも先にもあんまりないと思います。一生に1回の機会を思いっきり楽しんでください」という細美の言葉に、観客も大きな歓声と拍手で応えた。
ステージに現れたグラント・ニコラス(Vo./Gt.)が観客に「Tokyo!」と呼び掛け、フィーダーのライブが「Insomnia」で幕を開ける。グラントは憂いを帯びた歌声でポップなメロディを彩り、続いての「Come Back Around」ではタカ・ヒロセ(Ba.)がクラップを促すと、観客も嬉々として両手を高く上げて力強く打ち鳴らした。全員が朗らかな表情でフレッシュかつ引き締まった音像を繰り出し、ハードかつエキゾチックな「Kyoto」はその真価を発揮する。シリアスなムードがほとばしりながらも、グラントが長年頻繁に着用している“FUKUOKA CITY”と書かれたTシャツ姿で東京にて「kyoto」という曲名の楽曲を歌う姿はどこかシュールで、その絶妙な温度感も心地よい。
グラントが6年ぶりに日本のステージに立てる幸福感を語ると、「Feeling A Moment」では観客にシンガロングを求め、続いての「Fear Of Flying」ではタカのコーラスに観客も積極的に歌声を重ねた。フィーダーの演奏はとても雄大で、大地に宿る神秘的な活力にも似た堂々たるエネルギーに満ちる。それはガーデンシアターの広大なキャパシティとも相性がいいことに加え、観客の歌声が重なることでそのスケールはさらに膨れ上がった。「Just The Way I’m Feeling」は夜明けを体現するような演奏が、8,000人の観客の心にまっすぐ光を灯していた。
「細美くんとの“最近調子どう?”程度のメールが続いてこのツアーが実現した」と話すタカは、出身地の岐阜に住む80歳の母親が初日の名古屋公演を観に来たことを明かす。母親が爆音のなか拝むように拍手をしながらELLEGARDENのライブを愉しむ姿が仏のように美しく、微笑ましかった旨を慈しみに満ちた表情で語ると、観客も盛大な拍手で喜びをあらわにした。その後は2005年のアルバム表題曲「Pushing The Senses」に続き、最新アルバム収録の幻想的な「Hey You」にThe Policeの「Walking On The Moon」をマッシュアップするなどして観客を引き込むと、「Playing With Fire」「Torpedo」とさらに演奏のエッジを効かせる。会場が“We’ll be alright”と歌うシーンはとても感傷的であり、希望にも満ちていた。
タカがガーデンシアターへ連れて来てくれたELLEGARDENと、フィーダーのライブを観てくれた観客への感謝を表明し、「少しでも“フィーダーいいんじゃない?”と思ったら、単独で日本に来たときに観に来てちょうだい」と告げると会場は大きな歓声で応える。そして「High」「Buck Rogers」「Just A Day」とライブの定番曲で観客と再度深くピュアに心を通わせ、NIRVANAの「Breed」カバーでステージを締めくくった。
ELLEGARDENは1曲目「Supernova」から包容力とスケール感を持ち合わせる演奏で観客を高揚させる。「Salamander」ではレーザーが放射され、しなやかな緊迫感が会場を彩った。活動再開後にリリースしたアルバムの収録曲「チーズケーキ・ファクトリー」「Mountain Top」と、巨大ビジョンに映し出されるメンバーの顔には既に汗がしたたる。命を刻み付けるように一音一音をまっすぐ鳴らす4人の姿に、観客も熱い視線を送った。
多感な時期に聴いていたフィーダーと世界を回れること、会場に大勢の観客が来てくれることに言及した細美は「学校で“ELLEGARDEN? 知らない”と言われても、誰にもわかってもらえなくても好きでいてくれたお前らがいなかったら、ここには来られなかった」と真剣なまなざしで感謝を告げる。その後の「Red Hot」の演奏は、4人の中に今も残るバンドキッズ時代の姿があらわになるような瑞々しさで、「風の日」「No.13」では観客が歌詞を一つひとつ噛み締めるように歌声を響かせた。ELLEGARDENにとってのフィーダーが観客にとってのELLEGARDENであること、そして若かりし頃の心の支柱となった音楽は生涯自分の一部となることを象徴するワンシーンだった。
生形真一(Gt.)はバンド駆け出しの頃に細美とSHIBUYA-AXで行われたフィーダーの来日公演へと足を運んだ思い出を振り返り、フィーダーと20年越しに競演できる感慨を語る。高田雄一(Ba.)は「何をしゃべろうか考えても何も思いつかなかったから音楽で思いを伝える」と告げると、即座に細美に詰め寄られ会場は笑いに包まれた。高橋宏貴(Dr.)は「フィーダーとライブができることも、こんなにたくさんの人の前でライブができることも当たり前のことではない」とこの日への意欲を見せる。細美も今まっとうしたい生き方について宣言し、全員がそれぞれの言い方でいまこの瞬間に対する強い思いをあらわにした。
「高架線」は細美が観客へ歌詞に綴られた思いを届けるように歌い、「Sliding Door」では4人が一丸となり集中力とエモーションがほとばしる演奏を響かせる。そして細美は再度観客へと「もっともっと近づいてきてくれ。」と呼びかけた。昨年細美は胃腸炎や網膜剥離などでライブを延期することが多かった。「ちょっと何かを掴みたいんだよな。燃え尽きたい」と微笑む彼からは、自分の命と向き合うような穏やかな緊張感が滲んでいた。
グラントをステージに招くと、フィーダーの楽曲「Seven Days in the Sun」を5人で披露する。フィーダーがセットリストに入れていないことを知り今回カバーを決めたそうだが、その際にELLEGARDENの「Wannabies」がまったく同じコード進行であることに気づいたそうだ。意図せずとも同じものを選んでいるというエピソードに、あらためてこの2バンドが非常に近い感性を持ち、引き合っていることがうかがえた。楽曲の終盤にはタカとサポートメンバーもステージに登場し、3人が生形を囲んでコーラスをする様子を高橋が後ろから笑顔で見守るなど、和気あいあいとした空気感が楽曲をさらに引き立てた。
再びステージが4人になると「The Autumn Song」「Missing」「Marry Me」と一切手を抜くことなく音を届ける。「時間が経つのが早い。この倍(の時間)やりたい。こんなんじゃ全然足りない」と話す細美は、「手負いになってからのほうが無駄なことをする気がなくなって毎日が楽しい」「“4つのうち1個のエンジンが動かなくなったから今までの速度は出ない”とか“これはもうできない”と考えるのはやめたんだ。俺にできないことは何もない」と続け、ELLEGARDENをこの先もしばらく継続させることを表明した。
この日のELLEGARDENの演奏の隙のなさとは、運命を受け入れながらも死に物狂いで音楽にしがみつくというある種の覚悟なのかもしれない。「Strawberry Margarita」は今この瞬間を存分に愉しむ純粋な気持ちが溢れ、「ジターバグ」はこの曲を作った当時のELLEGARDENが今の彼らに力を分け与えるようにエネルギーが漲る。「Make A Wish」では観客にシンガロングを呼び掛け、「スターフィッシュ」「金星」と約束を交わすように、信頼関係を深めるように本編を走りきった。
アンコールで「Space Sonic」「虹」をのびやかに届けると、名残惜しそうにする細美は集合写真を撮ろうと提案する。だが予定外のことだったためフィーダーのメンバーもフォトグラファーもすぐにステージには来られない様子だ。すると客席からの「もう1曲やって!」の声に細美が「それもありだな」と返し、4人が再び配置について急遽「Pizza Man」を演奏した。
細美が「もっともっとすごいライブができるようになって帰ってくる」と言い残し、フィーダーとELLEGARDENは海外公演へと歩みを進めた。フィーダーがELLEGARDENのエスコートのもと行った6年ぶりの日本公演で得たものも、ELLEGARDENが多大なる影響を受けてきたフィーダーとともに彼らのホームであるヨーロッパを回ることも、両者の長いバンド人生のなかでプレミアムな経験となるはずだ。フィーダーとELLEGARDENの積み重ねてきた歴史と現在進行形の向上心が健やかに鳴り響いた一夜。生き方と向き合う両者の音は悲喜こもごもでありながらも粘り強く、前へと歩みを進める気概に溢れていた。
Text by 沖さやこ
Photo by 石井麻木
◎公演情報
【Sonic Bridges Tour 2025】
2025年4月17日 (木)
東京・東京ガーデンシアター
<セットリスト>
フィーダー
01. Insomnia
02. Come Back Around
03. Kyoto
04. Feeling a Moment
05. Fear Of Flying
06. Just The Way I’m Feeling
07. Pushing the Senses
08. Hey You
09. Playing With Fire
10. Torpedo
11. High
12. Buck Rogers
13. Just A Day
14. Breed(ニルヴァーナカバー)
ELLEGARDEN
01. Supernova
02. Salamander
03. チーズケーキ・ファクトリー
04. Mountain Top
05. Red Hot
06. 風の日
07. No.13
08. 高架線
09. Sliding Door
10. Seven Days in the Sun(with FEEDER)
11. The Autumn Song
12. Missing
13. Marry Me
14. Strawberry Margarita
15. ジターバグ
16. Make A Wish
17. スターフィッシュ
18. 金星
アンコール
19. Space Sonic
20. 虹
21. Pizza Man
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