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MUCCが2025年4月2日にリリースしたニューアルバム『1997』を引っ提げた全国ツアー【MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」】を4月5日に新潟でスタートし、その公式レポートが到着した。
末恐ろしい…。MUCCが1997年に始動してからというもの長年培ってきたライブバンドとしての底力は、今宵これまで以上に尋常ならざる圧倒的威力を放っていた。4月2日に発表されたばかりのフルアルバム『1997』を携え、このたびめでたく初日を迎えた[MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」]の新潟 LOTS公演において、MUCCと夢烏(=MUCCファンの総称)たちが共闘しながら生み出してみせてくれたもの。それは既にツアー佳境かのような熟しぶり、盛り上がりぶり、ハジけぶりだったのである。
「楽しいねぇ。なんか初日とは思えない感じ、そして新潟とは思えない感じのライブになってるんじゃないかと思います(笑)。今回の『1997』というアルバムは最初の構想からどんどん曲が増えていきまして、気が付けばライブ1本ほぼほぼ新曲でやっていかなきゃならない状態になってました。けっこう心配してたんですが、そんな心配は1曲目から、いや最初にSEが鳴った瞬間からどっか行っちゃったね!!」(逹瑯)
「楽しさの方が初日の緊張みたいなものに勝ってかぶってきたから、今日は全っ然緊張してねー(笑)。マジで楽しい!ありがとう!!」(ミヤ)
逹瑯とミヤによるこれらの発言は新潟公演での本編後半部分にてMCとして聞けたものになるが、実に全16曲を擁するアルバム『1997』を余すところなくライブでいきなり初披露していくことは、いくら百戦錬磨な猛者・MUCCにとってもそうそう生易しいことではなかったに違いない。また、MUCCに限らずライブツアーに関しては総体的にオーディエンスの反応が“西高東低”の傾向にあるというのが音楽業界では昔からひとつの定説で、東京を境にした東日本の民と西日本の民では前者の方がどうしても気質的にシャイだと思われがちでもある。しかし、そうした諸般のアレコレなどまるで関係なくバンド側もファン側も派手にブチ上がったのが今回のライブだったと言えるだろう。
アルバム『1997』の冒頭を飾るインストゥルメンタル「Daydream」のリズムにあわせ、夢烏たちが一斉にクラップを開始した場面。あるいは、実質的な1曲目となるスカロックチューン「桜」や、2曲目のラウドでダイナミックな「invader」で早くもリフトダイバーたちが続々と出現した場面。そこにあふれ返っていたのは、MUCCが全身全霊で提示するエキサイティングなサウンドであり、それを全身全霊で目一杯に享受しようとする夢烏たちの熱意で、そこには尊き相関関係が成立していたのではないかと思う。
そして、よくよく考えてみると。MUCCがオリジナルアルバムをリリースし、それにともなった全国ツアーを“普通に”催行するというのは、意外とこれが久しぶりのことになるという点も今回の【MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」】について言及するうえでは大事な点かもしれない。というのも、近いところでは2022年にアルバム『新世界』と連動した【MUCC TOUR 2022 「新世界」~The Beginning of the 25th Anniversary~】が実施されているものの、これはまだ各種のコロナ規制があった頃のことになってしまう。また、2023年のアルバム『Timeless』は再録曲を多く含むものであったのでライブの内容もそれと連動することに。さらに、2020年にまでさかのぼると15thアルバム『惡』に至ってはツアー自体が時期的に実施不能であったことから、MUCCにとっての今ツアーは2019年のアルバム『壊れたピアノとリビングデッド』を出した後に2020年2月まで続いた【MUCC 2020 Lock on snipe Tour #10『関東型壊れたピアノとリビングデッド収監11days』】以来の、かれこれ5年以上ぶりとなる“普通の全国規模リリースツアー”なのだ。(※MUCC自体はコロナ禍も含めてずっと勢力的に動き続けているため、そんな気はしないのだが)
「今日やるのはほとんどが新曲になりますが、新しい曲たちでのライブでみなさんと一緒に時間旅行をしていけたらいいんじゃないのかな、と思っております。新しい『1997』の曲たちで懐かしさを感じていってください。よろしくお願いします」(逹瑯)
そのタイトルどおり、今回のアルバム『1997』は洋邦問わず90年代近辺のさまざまな音楽をモチーフにして作られた曲たちが主軸となっているからか、確かにライブの場においても随所からノスタルジーを感じるところは多い。今は昔のニューメタルな風情をたたえた音像の中での逹瑯の巧みなヴォーカリゼーションが映えている「蜻蛉と時計」、聴いていると音楽番組『BEAT UK』をよく観ていた頃のことが思い出されてくる「B&W」、ヴィジュアル系という言葉が定着化する以前の時代にポジパン的な香りを漂わせ活躍していたバンドの面影が音として響く「Round & Round」、かのバンドのオマージュ曲としてあまりにも秀逸な「Boys be an Vicious」、90年代どころか80年代の空気までをも内包した「LIP STICK」などなど。今作の曲たちは元ネタを知っていれば知っているほど深く楽しめるとも言えるが、かといってこれらは単なる懐古趣味で仕上げられたものとは異なるため、どの曲もみずみずしさを持っているところが大きな特徴だとも言える。よって、たとえ元ネタを知らずとも純粋にMUCCの最高な新曲たちとして、音源はもちろんライブ空間でも各曲を存分に堪能できること請け合い。
そればかりか、物語を感じさせる歌詞とフォーキーで叙情的な旋律を逹瑯が歌として丁寧に紡いでゆく「October」、音源ではフェイドアウトするアウトロでのミヤによるギターソロが素晴らしい聴きどころになっている「不死鳥」、ベーシスト・YUKKEがキーマンとなって堅実に曲を牽引していく「蒼」、本編のラストで高らかに力強く奏でられた「Daydream Believer」などについては、もはや90年代だの元ネタだのといった次元もゆうに飛び越えて、現在進行形で普遍的なMUCCとしての魅力をたたえる曲たちとして仕上がっているように聴こえたところも大変興味深かった。
しかも、本編後半やアンコールでは新曲以外の“やっぱりこれが聴けると嬉しいよね”となるおなじみのライブ鉄板曲もしっかりと演奏される構成となっていたので、結果的に初日から今回のライブは相当な満足度をオーディエンスに与えることになったのではなかろうか。いずれにしても、基本的にはアルバム『1997』をよく聴き込んでから参加することを推奨したいが、今回のツアー初日の様子をみるにどのような状況であったとしても、MUCCは必ずやライブの場に集った全ての人々をしっかりと巻き込みながら尋常ならざるライブ体験を与えてくれるものと確信する。
いやはや。初日からこれだけの仕上がりぶりを呈したともなると、6月7日のCLUB CITTA’ 公演まで続く【MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」】が、果たしてここからどのように展開および発展していくのかが本当に末恐ろしい。いよいよ30周年が射程圏内に入ってきた、Daydream Believer・MUCCの夢はまだまだ続いていく。
Text:杉江由紀
Photos:冨田味我
◎公演情報
【MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」】
2025年4月5日(土)新潟・新潟 LOTS
<セットリスト>
SE Daydream
01.桜
02.invader
03.蜻蛉と時計
04.G.G.
05.B&W
06.愛の唄
07.Round & Round
08.October
09.Boys be an Vicious
10.Guilty Man
11.LIP STICK
12.不死鳥
13.△(トライアングル)
14.蒼
15. 空っぽの未来
16.ニルヴァーナ
17.名もなき夢
18.Daydream Believer
EN1.1997
EN2.大嫌い
EN3.蘭鋳
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