<ライブレポート>中村雅俊3年目となるシンフォニックライブ 前に進み続けることをファンに伝えた誕生日

2024年2月19日 / 18:00

 中村雅俊の3年目となるシンフォニックライブ【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2023-2024 ~WHAT’S NEXT~】が、昨年12月21日の兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールでの公演に続いて、2月1日東京・すみだトリフォニーホール大ホールで行われた。

 今年デビュー50周年という節目の年を迎える中村。しかもこの日は誕生日当日ということで、本人もファンにとっても忘れられない時間になった。指揮は円光寺雅彦、演奏は新日本フィルハーモニー交響楽団、そして中村のツアーを約40年支える音楽プロデューサーの大塚修司がサポート。ツアータイトルの【WHAT’S NEXT】は“次”ということを意識するようになったという中村が「次に何があるんだろうという素直な気持ちを込めた」と語っているように、美しい音の洪水にたゆたいながら“次”を掴み、そして前に進み続けることをファンに伝えた一夜になった。

 オープニングは円光寺とオーケストラが「青春貴族」を演奏し、我らの“歌う青春スター”中村の歌を想像しながら、その豊かな音に引き込まれる。そして拍手で中村と大塚を迎え入れ、1曲目は「想い出のクリフサイド・ホテル」だ。情熱的な歌と情熱的なサウンドが交差し、早くも客席の温度が上げる。「どんな人が来てるかな?」と客席を見回す中村。そして「想い出の~」が主題歌になったドラマ撮影の裏話を披露したり、トークが続く。そう、この親しみやすさが中村流のクラシックコンサートだ。そして去年、49年前の主演ドラマ『俺たちの旅』が再び注目された話題から、同ドラマのエンディング・テーマ「ただお前がいい」と主題歌「俺たちの旅」を披露。中村の歌と、大塚のアコースティック・ギターが、曲の変わらない空気感や温度を伝えつつ、オーケストラがドラマティックなサウンドで迫ってくる。

「今まで1000回以上歌ってきた『俺たちの旅』間違えちゃった」と苦笑。軽妙なトークで笑わせながら、美しいアレンジで紡がれた「海を抱きしめて」を歌うと感動が広がっていく。このメリハリが魅力だ。さらにトークは冴え、指揮の円光寺も巻き込んで盛り上がる。

 故郷・宮城県の東松島の小学校のために、中村が手がけた校歌「花になろう」を披露。丁寧に東北の季節と風景を映し出すサウンドは、風の匂いまでしてきそうなくらい美しい。「一番長く歌っている」大切なデビュー曲「ふれあい」は、繊細かつ重厚なサウンドで美しいメロディがさらに際立つ。やや前かがみの独特の姿勢で切々と歌う中村。変わらないスタイルで瑞々しさを失わないデビュー曲を歌うと、切なさが広がっていく。間奏からサビへの美しい盛り上がりに引き込まれる。大きな拍手が送られ、後半へ。

 第2部は美しい弦とピアノによる「心の色」からスタート。徐々に音が重なっていき、中村が登場し2番から歌う。中村の歌と大塚のコーラスが重なると、色彩が豊かになっていくようだ。50年間の思い出話に花が咲き、学園ドラマに生徒役で出演していた人達と、今も交流があると語り、その絆の深さに客席が感心していると、思わず年齢の話で口を滑らせ、バツが悪そうに円光寺に救いを求めるシーンも。そして「ファンの方がずっと支えてくれて、ここまで来ることができました」と想いを込めて「君がいてくれたから」を披露。ひと言ひと言をきちんと届けるように歌う中村、そして温もりのあるサウンドが徐々に壮大になっていき、客席は引き込まれていく。

 この日演奏していた新日本フィルのメンバーの一人が、40年前に渋谷「エッグマン」での中村のライブに行ったという、筋金入りのファンだということがわかり、そんな、長く続けているからこその出会いに感謝していた。

 「アップテンポの曲を多めにして、心躍るようなコンサートにしたい」とインタビューでも語っていたように「時代遅れの恋人たち」から「100年の勇気」「だろう!!」とアップテンポな3曲を披露。中村は溌剌と歌い、客席は立ち上がり、笑顔と手拍子で楽しんでいた。気持ちを前向きにし、背中を押してくれる「100年~」では、客席と共に拳を突き上げ、「だろう!!」では中村の力強い歌と、スリリングなオーケストラの音が勢いを湛えて客席に向かってくるようだ。誰もが心を躍らせながら聴いている。

 「皆さんの嬉々とした表情を見ていると嬉しい」と語り、続けて歌う「恋人も濡れる街角」についての桑田佳祐とのエピソードを披露。前のアップテンポのコーナーとは一転して、パープルの照明とメロウなイントロで「恋人も濡れる街角」がスタート。上品かつ色気のあるアレンジのサウンドで、桑田メロディの美しさと強さが剥き出しになる。中村のウェットなボーカルに大塚のハーモニーが重なる“中村節”が耳に心地いい。そして本編ラストは中村が「大好き」だと語る大塚が手がけたナンバー「家路」を披露。中村の温かなボーカル、そしてどこまでも美しいピアノとストリングスの印象的なサウンドが、歌詞に流れる深い物語を鮮やかに描いていく。

 アンコールを予告はしていたが、鳴りやまない拍手。再び中村が登場し、まず新日本フィルのメンバーを一人ひとり紹介していき、客席から拍手が送られる。クラシックコンサートではあまり見ないシーンだが、この日のアンサンブルを作り上げた、一人ひとりに感謝の気持ちを込めるように名前を読み上げていく。中村の人柄を感じさせる素晴らしい時間だった。そしてここでサプライズ。オーケストラが「Happy Birthday」を演奏し始めると中村が驚く。豪華な音と一緒に客席も祝福。「こんな豪華な誕生日は初めて。ありがとうございます」と感激していた。

 サプライズは続く。「想い出のクリフサイド・ホテル」「家路」などを手がけた、作詞家の売野雅勇が花束を抱えて登場。同世代の二人は昔話で盛りあがり、中村は「『父に捧ぐ』という曲の歌詞を売野さんに書いてもらったら、歌詞の中にまさに俺がいてビックリした」というエピソードを紹介し、売野も「歳が近いということもあって、中村さんに歌詞を書くことが本当に好きだった」と語っていた。ラストは中村がフェイバリット・ソングと語る、吉田拓郎が提供した「いつか街であったなら」を歌った。朴訥としたメロディと味わい深い歌を劇的で美しい音像が彩り、ラストはダイナミックな音でまさに大団円。中村、円光寺、オーケストラ、大塚に大きな拍手が送られる。

 中村のどこまでも人懐こくて美しいメロディの楽曲の数々を、歌に寄り添い、時に包み込むように奏でる、歌心を感じるオーケストラの美麗なアンサンブルがひとつになっていた。そして中村の人柄が滲み出るトーク、作り出す空気感も相まって、優しい温もりを感じさせてくれるクラシックコンサートだった。

Text:田中久勝
Photo:石阪大輔

◎公演情報
【billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2023-2024 ~WHAT’S NEXT~】

【兵庫】2023年12月21日(木) 開場16:15 開演17:00 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【東京】2024年2月1日(木) 開場16:00 開演17:00 すみだトリフォニーホール 大ホール

出演:中村雅俊
指揮:円光寺雅彦
サポートミュージシャン:大塚修司
管弦楽:
【兵庫】兵庫芸術文化センター管弦楽団
【東京】新日本フィルハーモニー交響楽団

公演公式サイト
https://billboard-cc.com/nakamura-whats-next/


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