<ライブレポート>【billboard classics×SNOOPY『Magical Christmas Night』】初演出の城田優、「非常に胸アツなアレンジ」と手応え(12/3兵庫公演)

2023年12月28日 / 14:25

 『PEANUTS』コミック生誕70周年を祝して2020年にスタートしたスヌーピーのオーケストラコンサート。4回目となる2023年は、3年連続でゲストボーカルとして出演してきた城田優がメインパフォーマンスと演出を担い、タイトルも【billboard classics×SNOOPY『Magical Christmas Night』】と改称。新たな命を吹きこんだ。

 12月3日に兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールで初日を迎えた。コンセプトは“『PEANUTS』の世界にある森の中で開かれているクリスマスコンサート”。「没入感を意識した」と事前取材で城田が語っていたとおり、鳥や虫の声が聞こえ、ステージは苔むした大地になっている。譜面台も木製だ。

 ステージには、たくさんのオーナメントやプレゼントが飾られた大きなクリスマスツリーや雪だるま、真っ赤な犬小屋があり、目の前に『PEANUTS』の世界が立ち上がっている。これらは舞台美術家の松井るみによるもの。城田のアナウンスまでは開場中の撮影もOK!

 一人また一人と演奏者がステージに姿を現す。日本センチュリー交響楽団の団員たちは緑色の服を着ている。宮本貴奈率いるジャズピアノトリオも揃い、指揮者の栗田博文がタクトを振り上げると、ミラーボールがキラキラと回転。会場からは「わあ~!」と驚きの声が上がった。

 シャンシャンシャンとベルが鳴り、魔法の夜が幕を開ける。まずはスヌーピーにまつわる名曲「Christmas time is here」、「Christmas is coming」と「Linus & Lucy」をメドレーで演奏。ラストにスヌーピーが舞台に勢いよく飛び出すと、会場からは「かわいい~!」という声が上がった。

 続く「Skating」では、ツリーのオーナメントやプレゼントボックスにスケートに興じるスヌーピーやチャーリー・ブラウンたちの姿が映し出された。コンサートが始まるまではツリーの装飾かと思いきや、実はLEDパネルになっていたのだ。その仕掛けに驚くと同時に、ツリーの奥に『PEANUTS』の世界が広がっているような錯覚も呼び起こす。キャラクターたちがちらっとこちらを向くと、まるで窓からスヌーピーたちがのぞき込んでいるようだ。「そりすべり」では、スヌーピーたちが雪原をゆうゆうとそりですべる姿が楽しめ、「Benjamin」では、『PEANUTS』のキャラクターがスロットのように回転する。すべてのLEDパネルで絵柄が揃うとハートが飛び交い、外れるとユニークな表情を浮かべるキャラクターたち。「次はどうなるのかな?」とワクワクする気持ちをリードのフルートや、ジャズピアノトリオの演奏がさらに駆り立てた。

 雰囲気は一転、星空の下に城田が姿を現した。白と黒の衣装はスヌーピーの色使いとおそろいだ。このコンサートではおなじみの「Just like me」をしっとりと歌いあげる。「雪が降ってきたよ!」という城田のジェスチャーを合図に、「雪やこんこん」のフレーズから始まる宮本貴奈編曲による「Let it snow」も披露。スヌーピーもステージに登場、手拍子で盛り上げ、城田とのキュートなダンスも披露した。

 MCではコンサートのテーマなどを改めて伝え、楽団員たちの衣装にも触れる城田。「本来、皆さんは正装して出られますが、今日は『PEANUTS』の森の住人ですので、その格好をしてもらっています」と説明した。

 「今日はマジカルな空間ですから、冬も夏も関係なく、オーストラリアや常夏の国が経験しているクリスマスを感じてほしい」と、サザンオールスターズの「真夏の果実」を紹介。この曲には「視野を広げよう」というメッセージも込められている。静かな波音を彷彿させるハープがイントロを奏でると、城田の切ない歌声が会場を包み込んだ。

 「Christmas is Coming」に続き、ゲストボーカルのCrystal Kayがステージへ。クラシックアレンジの「恋におちたら」の後には、宮本の情熱的なピアノソロから始まるカバー曲「Promise」を。スリリングなラテンアレンジで実にドラマティック。手拍子も自然発生した。

 MCでは「フルオーケストラの素晴らしいステージに立てて、皆さんと時間を共有できてうれしい!」と声を弾ませるCrystal Kay。城田とは20年来の仲というだけに、2人は気さくな会話でも楽しませた。

 ここで9人編成のクワイアがチャーリー・ブラウンの格好で登場。スヌーピーもサンタの衣装に着替えてステージへ。「ここでしか聞けない特別なメドレーをお届けします!」と城田がいざない、「Winter wonderland」がスタート。「Silent Night」では城田、Crystal Kay、宮本が向かい合い、アカペラでワンコーラスを歌唱。そこにクワイアの透明感ある歌声とオーケストラやピアノの音色も重なり、荘厳な雰囲気に。「Santa Claus is Coming to Town」では映像が雪合戦に変わり、スヌーピーもダンスで盛り上げた。さらに城田とCrystal Kayによるデュエットで「メリクリ」も歌唱。マイルドな城田の声にCrystal Kayのクリアなハイトーンボイスが合わさり、ロマンチックな世界を作り上げた。

 本編最後は城田と宮本による新曲「夢の種~I’ll be by your side~」を初披露した。コンサートのために完成させたオリジナル曲で、「今日、集まってくださった方たちのすべての夢が叶いますように」という祈りを込めたと城田。クワイアもコーラスで参加し、楽曲は徐々に壮大なスケール感を帯びていく。ツリーのLEDパネルには打ち上げ花火の映像が流れ、ミラーボールも回転。会場は祝祭感に満ち溢れた。

 アンコールでは「Christmas time is here」に続いて「Happy Xmas (War Is Over)」をみんなで合唱。「平和を歌ったこの曲を世界へ向けて」という城田の言葉どおり、一人一人の祈りが歌声となり、ホールに響き渡った。この魔法の夜がまだまだ続けばいいのにな……と思いながらも、心の中は優しく、温かな余韻でいっぱいに。終演後のロビーを見渡せばたくさんの笑顔。誰もが同じ気持ちだったに違いない。

 コンサートを終えたばかりの城田に感想を尋ねると、満足げな表情を浮かべて次のように話した。「企画から全体の構成も含めて、プロデュースや演出をさせていただいた中では自分のやりたいものをお見せできたのではないかなと思っています。オーケストレーションして映える曲を選曲して、個人的にも非常に胸アツなアレンジだったと思います!」。

Text by 岩本和子
Photo by 河上良

◎公演情報 ※終演
【billboard classics×SNOOPY『Magical Christmas Night』】
M1 Overture(スヌーピーメドレー)Christmas Time Is Here / Christmas is Coming / Linus & Lucy
M2 Skating
M3 そりすべり(Sleigh Ride)
M4 Benjamin
M5 Just like me
M6 Let it snow
M7 真夏の果実
M8 Christmas is Coming
M9a【兵庫】恋におちたら
M9b【東京】HOME
M10 Promise
M11 洋楽クリスマスメドレ- Winter wonderland / Silent Night / Santa Claus is Coming to Town
M12 メリクリ
M13 夢の種~I’ll be by your side~
EC1 Christmas time is here
EC2 Happy Christmas

2023年12月3日 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール ※終演
2023年12月24日 昭和女子大学 人見記念講堂 ※終演

出演・演出:城田優
ゲストボーカル:
【兵庫】Crystal Kay
【東京】清水美依紗
指揮:栗田博文
ピアノ・音楽監修:宮本貴奈
ドラムス:ジーン・ジャクソン
ベース:パット・グリン
管弦楽:
【兵庫】日本センチュリー交響楽団
【東京】東京フィルハーモニー交響楽団
編曲:
宮本貴奈
萩森英明
岩城直也
舞台スタッフ
松井るみ(美術)
澁谷賢治(照明)
牧嶋康司(音響)
西田淳(映像)
大澤裕(舞台監督)


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