エンターテインメント・ウェブマガジン
11月15日に発売した7th Album『The Goldmine』。アルバムを引っ提げての7th Album『The Goldmine』Release Tourの初日「The Goldmine Release Party」を東京・恵比寿リキッドルームで開催。そのオフィシャルライブレポートが到着した。
【ライブレポート】
サブスクリプション/プレイリスト文化やショート動画での発信が定着したことによりアルバムの存在感が薄まり、今まで以上に単曲での即効性が求められるようになった10年代後半~現在。そんな時代の流れを受け、GLIM SPANKYの二人はニューアルバム『The Goldmine』について、今回のリリースパーティーのMCでも作品を制作中のライブでも、各所のインタビューでも「全曲がリード曲のつもりで、なおかつアルバムとしての世界観をしっかり楽しめるものを」という旨を語っていた。
そもそもGLIM SPANKYはデビュー期から同様のこだわりを持っていたように思う。サブスクリプションの上昇線と、いわゆるサウンドスタイルとしての“ロックらしいロック”の下降線がちょうどクロスする10年代中盤にデビュー。そんな新時代への興味関心と、それでもビンテージなロックが好きだという気持ちの狭間で、現在進行のポップという概念と向き合いながら、ロックの情緒や力強さも掘り下げ、アルバムというフォーマットにこだわってオリジナルなスタイルを生み出してきた。
そして20年代に入り、シーンはさらに激動する。縦割りのジャンルでは割り切れない音楽がデフォルトになり、クロスオーバーという言葉はもはや誰かの個性を示す効力を持たなくなった。しかし、ロックはその中で確実に生きている。『The Goldmine』はそのことを確信させてくれるアルバムだった。ポップで多彩な楽曲群の中で、ロックが、ロックンロールが70年以上の歴史の中で積み重ねてきた奥行き、ロックバンドだからこその肉体性や牽引力が金色に輝き続けることでアルバムになっている。そして今回のリリースパーティーもまた、そんな作品の魅力を存分に感じることのできる、力強く贅沢な時間だった。
松尾レミ(Vo. / Gt)、亀本寛貴(Gt.)に加え、お馴染みのサポートメンバー、栗原大(Ba.)、かどしゅんたろう(Dr.)、中込陽大(Key)の5人が登場すると、ソールドアウト超満員のフロアからは早くも大歓声が。1曲目はアルバムの冒頭を飾るタイトル曲「The Goldmine」。太く力強いリズム隊、空気を破るようなギター、眼光鋭いメロディと歌詞という生々しいロックの衝動と、豊かに、綿密にデザインされた音の良さが光る。続いてアルバムにはjon-YAKITORYのリミックスバージョンが収録されていた代表曲「怒りをくれよ」。重量級アンセムからロックの真ん中を疾走するアンセムへ。突き上がる無数の拳や叫びとともに、場内の熱はもの凄い勢いで上昇する。そこからの「Odd Dancer」では、ダンサブルなグルーヴとサイケデリックなトリップ感のシナジーによりダンスの波が起こる。コントラストの効いたアッパーな曲の3連発で序盤から躊躇なくフロアを揺らした。
ステージいっぱい駆け巡りながら全身でギターを弾く亀本のアクションは、いつもよりハイだったような気がした。近年楽曲の幅が広がったこともあり、ギターを弾きながら歌う従来のスタイルとハンドマイクを使い分ける松尾のカリスマ性も、さらに増大していたように思う。ちなみに松尾が自ら選んだビンテージの衣装もGLIM SPANKYのライブの楽しみの一つだが、この日は久しぶりにスタイリストが製作した衣装を着用。ビートルズのアートワークも手掛けたことで知られる、サイケデリックカルチャーの象徴的美術家、ピーター・マックスの作品が施された貴重な布を組み合わせて作られたものだそう。そんなあらゆる要素から、新作への自信を感じ取ることができた。
続いては亀本が「今日はアルバム全曲やります」と言い、松尾が「もう言っちゃうんだ」と返す掛け合いなど、いつものアットホームなMCが入り、松尾のお気に入りの曲だという「光の車輪」、松尾のルーツの一つである渋谷系のフリーソウルなフィーリングも漂う「ラストシーン」と、新作ならではの爽快なポップソングを演奏。そこから2017年のアルバム『BIZARRE CARNIVAL』収録の「吹き抜く風のように」へ。このセクションは言うなれば風の時間。前述したアンセム3連発による熱気をグルーヴさせながら心地良さへと変えていく。新作で獲得したチャンネルにより、旧作の新たなポテンシャルが引き出され機能するという、常にアップデートをはかりながらキャリアを積んだことによるバンドの魅力を象徴するような場面でもあった。
松尾が「70年代のアシッドフォークやソングライターたちに触発された」と話す変則チューニングを用いた「真昼の幽霊(Interlude)」から「Summer Letter」は、のどかでありながらどこかミステリアスなアコースティックギターの音色が気持ち良い。「Summer Letter」の後半に向けてバンドサウンドが力強さを帯びていく流れで、場内の熱は再びじわじわと高まっていく。そこからMCを挟みR&Bフィーリングな横乗りとロックダイナミズムが交差する「愛の元へ」、「Glitter Illusion」への流れは、曲の多様性とそれらの繋がりを、アルバムとは異なるライブ仕様の曲順で表現したようなグラデーション。今のGLIM SPANKYの懐の深さが伺える。
続く「いざメキシコへ」は、2016年のアルバム『Next One』収録の、アルバム曲でありながらシングル級の人気曲。ライブアレンジのイントロで溜めてからのロックならではのヘビーな四つ打ちが火を噴くと、大歓声とともに乱舞の嵐が。そこから2015年にGLIM SPANKYの名前を知らしめるきっかけになったシングル「褒めろよ」、新作から「褒めろよ」期に回帰したような「不幸アレ」のパワフルなロックアンセムでフロアを撃ち抜く。自分たちの過去をリファレンスに2023年の音を鳴らす。そんな文脈を惜しみなく体現して観客を高揚させる姿が勇ましい。
宴も終盤へ。松尾と亀本が育った長野の田園風景と60年代のロンドンをミックスしてビッグなスケールで鳴らしたようなサウンドに、圧倒的にグッとくるメロディが乗るバラード「形ないもの」は、GLIM SPANKYが20年代に生み出したエバーグリーン。そこから松尾が「みんなで歌いたくて」と話したように、シンプルなコーラスが躍動する「Innocent Eyes」で大合唱が起こり、パーティーの本編を締めた。
アンコールではこれまでのライブでもハイライトを飾り続けてきた「大人になったら」、GLIM SPANKYのアッパーサイドを代表する曲のひとつ「リアル鬼ごっこ」を演奏。もちろん高まる。盛り上がる。素晴らしい。しかし、過去のキラーチューンを「待ってました」という空気はない。誤解を恐れずに言うならば、ここはピークではなくあくまでサービスタイム。『The Goldmine』というまだ生まれたばかりの現在進行形のGLIM SPANKYを心底楽しむメンバーと観客の姿にロックの未来を感じた、最高のリリースパーティーだった。
そして年を跨いで2024年、GLIM SPANKYは全国23か所を回るリリースツアーに出る。となると、このパーティーの模様を詳細に書いてネタバレにならないのか?と思ったが、帰ってからGLIM SPANKYの作品を聴いてみると、アルバムの曲以外のすべてを入れ替えても十分に成立するだけのストックがあることにあらためて気づく。次はどんなステージが待っているのか。楽しみで仕方がない。
TAISHI IWAMI
撮影:上飯坂一
7th ALBUM『The Goldmine』が発売となり、年明けから全国ツアーの本編も始まるGLIM SPANKY。ロック魂が全国に響き渡るに違いない。
<セットリスト>
7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Release Party」
2023.11.30 東京・恵比寿リキッドルーム
01.The Goldmine
02.怒りをくれよ
03.Odd Dancer
04.光の車輪
05.ラストシーン
06.吹き抜く風のように
07.真昼の幽霊(Interlude)
08.Summer Letter
09.愛の元へ
10.Glitter Illusion
11.いざメキシコへ
12.褒めろよ
13.不幸アレ
14.形ないもの
15.Innocent Eyes
<encore>
01.大人になったら
02.リアル鬼ごっこ
アルバム『The Goldmine』
2023年11月15日(水)発売
【初回限定盤】(CD+DVD)
TYCT-69288/¥5,280(税込)
【通常盤】(CD)
TYCT-60219/¥3,080(税込)
<収録曲>
■CD
1. The Goldmine
2. Glitter Illusion
3. 光の車輪
4. ラストシ-ン
※Paravi「恋のLast Vacation 南の楽園プーケットで、働く君に恋をする。」主題歌
5. 真昼の幽霊(Interlude)
6. Summer Letter
7. Odd Dancer
※NHK放送技術研究所「技研公開2023」体験展示起用曲
8. 愛の元へ
9. 不幸アレ
※BS-TBS『サワコ~それは、果てなき復讐』主題歌
10. Innocent Eyes
Bonus track
11. 怒りをくれよ (jon-YAKITORY Remix)
■DVD ※初回限定盤のみ
「Into The Time Hole Tour 2022」@昭和女子大学 人見記念講堂(2022.12.21)
・シグナルはいらない
・ドレスを切り裂いて
・褒めろよ
・HEY MY GIRL FRIEND!!
・It’s A Sunny Day
・美しい棘
・Breaking Down Blues
・時代のヒーロー
・LOOKING FOR THE MAGIC
・Velvet Theater
・レイトショーへと
・怒りをくれよ
・ワイルド・サイドを行け
・愚か者たち
・不幸アレ
・NEXT ONE
・Sugar/Plum/Fairy
・形ないもの
〜ENCORE〜
・EN ウイスキーが、お好きでしょ
・EN By Myself Again
・EN 大人になったら
・EN Gypsy
◎封入特典
「シリアルナンバー入り応募抽選券」
賞品の詳細、応募方法は後日ご案内いたします。
※シリアルナンバーは初回限定盤、通常盤共通。初回生産分のみ封入いたします。
◎配信
https://glimspanky.lnk.to/the_goldminePR
『7th Album『The Goldmine』Release Tour「The Goldmine Tour 2024」』
[2024年]
1月20日(土) 神奈川・横浜ベイホール
1月27日(土) 高知・X-pt.
1月28日(日) 愛媛・松山サロンキティ
1月30日(火) 香川・高松DIME
2月01日(木) 滋賀・滋賀U☆STONE
2月03日(土) 鹿児島・CAPARVO HALL
2月04日(日) 熊本・熊本B.9 V1
2月06日(火) 静岡・浜松窓枠
2月09日(金) 千葉・柏PALOOZA
2月10日(土) 福島・郡山HIPSHOT JAPAN
2月15日(木) 鳥取・米子AZTiC laughs
2月17日(土) 岡山・YEBISU YA PRO
2月18日(日) 広島・広島CLUB QUATTRO
2月20日(火) 京都・磔磔
2月24日(土) 新潟・NIIGATA LOTS
2月25日(日) 石川・金沢EIGHT HALL
3月01日(金) 北海道・札幌PENNY LANE24
3月03日(日) 宮城・仙台Rensa
3月08日(金) 福岡・DRUM LOGOS
3月10日(日) 愛知・名古屋市公会堂 大ホール
3月20日(水祝) 大阪・NHK大阪ホール
3月24日(日) 東京・日比谷野外大音楽堂
3月30日(土) 長野・長野市芸術館 メインホール
<チケット>
・〜2024年3月8日(金)福岡DRUM LOGOS
オールスタンディング ¥5,000 (整理番号あり/別途ドリンク代必要)
・2024年3月10日(日)名古屋市公会堂〜2024年3月30日(土)長野市芸術館
全席指定 ¥5,500
※未就学児入場不可 (小学生以上チケット必要)
※学割あり (当日学生証提示で¥1,000バック)
J-POP2024年11月25日
INIの新曲「Make It Count」が、2025年1月スタートのTVアニメ『どうせ、恋してしまうんだ。』オープニングテーマに決定し、音源を一部使用したPVが公開となった。 『どうせ、恋してしまうんだ。』は、家族のように育った4人の … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
ニッポン放送で特別番組『僕が見たかった青空 有楽町の夜空』が12月8日25時40分より生放送されることが決定した。 「乃木坂46公式ライバル」として、秋元康総合プロデュースのもと結成された“僕が見たかった青空”。11月13日に4thシン … 続きを読む
洋楽2024年11月25日
アデルが、2022年11月から2年間にわたり米ラスベガスのシーザーズ・パレスのザ・コロシアムで行ってきた定期公演を終え、感動的な別れを告げた。現地時間11月23日、彼女は【ウィークエンズ・ウィズ・アデル】の最終公演でファンに「次にいつステ … 続きを読む
洋楽2024年11月25日
アリアナ・グランデは、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で首位デビューした楽曲数においてトップの座にいるが、彼女はこの記録を独占しているわけではない。 現地時間11月22日、MTV UKがTikTokに投稿した動画で、31 … 続きを読む
J-POP2024年11月25日
11月29日公開となる映画『正体』の本編映像とヨルシカが書き下ろした主題歌「太陽」のスペシャルMVが解禁された。 『正体』は、染井為人の同名小説を映画化したサスペンスエンタテイメント。主演は横浜流星、監督は『余命10年』『青春18×2 … 続きを読む