最新ライヴハウスシーンがもっと知りたい! 注目の令和のバンド5選 その2

2023年9月25日 / 18:00

最新ライヴハウスシーンがもっと知りたい! 注目の令和のバンド5選 その2 (okmusic UP's)

前回の当コラムで、「今、令和のロックバンドから、新たなライヴハウスシーンが生まれている」と注目の5組を紹介したが。9月8日に開催されたディスクガレージ主催の『The Cub’s Den vol.2』や、9月16日(土)、17日(日)、18日(月)の3日間、35箇所のライヴハウスを舞台に350組のアーティストが出演したサーキットイベント『TOKYO CALLING 2023』を観て、若いバンドと10~20代を中心としたオーディエンスによって、やはり新たなライヴハウスシーンが生まれているのだなと再確認。今回は“注目の令和のバンド5選 その2”として、最近ライヴを見た若手バンドで印象的だったバンドをさらに5組ピックアップ。事件はSNSで起きてるんじゃない、ライヴハウスで起きてんだ!
「FANFARE」(’23)/Jacob Jr.

最初からちょっと贔屓の入ったバンドの紹介で申し訳ないが。2014年に僕と同郷である長野県上諏訪出身で結成された、3人組ロックバンド、Jacob Jr.。今年3月に新メンバーの岡 秀一郎(Gt)が加入し、7月に新体制初の最新ミニアルバム『FANFARE』を完成。『The Cub’s Den vol.2』で彼らのライヴを久々に観て、初めて観た7~8年前のような勢いと衝動溢れるステージに興奮したし、嬉しくなってしまった。決して順風満帆なバンド活動ではなく、紆余曲折あったのも見てきたが、それもまたバンドとして健全な姿。今再び高いモチベーションを持って活動し、最新曲「FANFARE」で《間違えなく今が最高さ》と自信満々に歌う姿は実にカッコ良かったし、若い頃には無かった説得力に溢れてた。ずっと見て来た俺も「間違えなく今が最高さ」と自身を持ってオススメできる、今のJacob Jr.のライヴや音源をぜひ体感して欲しい。
「WONDER」(’22)/ NIKO NIKO TAN TAN

ジャンルを超越した音楽×映像×アートを創造する、クリエイティブ・ミクスチャーユニット、NIKO NIKO TAN TAN。music UP’s最新号の『MUSIC SUPPORTERS』でインタビューさせてもらって、初めて知った彼らだったが。ヴォーカル&シンセに生ドラムに映像担当という特殊な編成から、オルタナティブロックにエレクトロ、ヒップホップとさまざまな要素を含む中に独自のポップセンスが光る音楽性と、その存在全てに興味津々。取材後も過去音源やライヴ動画を夢中になって漁って、『TOKYO CALLING』でライヴを観ることができたのだが、生のライヴもめちゃくちゃカッコ良かった! 楽曲世界に没入させる効果的な照明が施された暗闇の中、Anabebeのワイルドかつ正確なビートと変幻自在なエレクトロサウンドに心躍り、美しく耳心地の良いOchanのヴォーカルにグッと惹かれて。ステージ上にたったふたりしかいないのに、見どころ満載だった彼らのステージ。気付くとフロアで体を揺らして、音と空間にどっぷり浸ってた自分に驚いた。どの曲を聴いても、彼らの一端でしか無いけど、入口として最高に気持ち良くて大好きな「WONDER」から聴いて!
「社会のゴミカザマタカフミ」(’19)/3markets[ ]

『TOKYO CALLING』2日目、下北沢シャングリラのトリとしてステージに登場するなり、「こんなに残ってもらえるなんて、信じられない気持ちです。もしかして俺、死んでんじゃねぇか?って」と卑屈なMCで笑わせた、カザマタカフミ(Vo&Gt)。勇ましいドラムとギターイントロから始まり、生きにくさを声高に歌う「レモン☓」でスタートしたライヴに、思わず好感を持てしまった3markets[ ]。HPのプロフィールには、「たとえ思ってても言えないこと、きっと言わない方が誰にとってもいいこと。それを歌詞にする性格の悪い人間たちがいるバンド」とあるが。普段抱えてる不満や不安や怒りや苛立ちや、あれやこれやという感情を、「No Satisfaction」と音楽でぶっ飛ばすのもロックンロール。ライヴが続き、彼の歌は誰よりもピュアで優しいからこそ歌える歌だし、「これは俺の歌だ」と救われる人がどれだけいることか?…などと考えながら聴いてると、自分も浄化されているような気持ちになった。ライヴのラストに披露したのが、卑屈の極みと言える自虐ナンバー「社会のゴミカザマタカフミ」。自分自身をネタにするのはカッコ良いけど、この曲はやりすぎ!と思ったのも正直な気持ち(笑)。
「荻窪」(’21)/ルサンチマン

2018年結成。翌2019年には現役高校生ながら、『ROCK IN JAPAN FES.』に出演を果たすという凄まじい経歴を持つ、東京発のオルタナティブ・ロックバンド、ルサンチマン。若さゆえの衝動や溢れる思いをぶっ放す、ハイテンションかつエネルギッシュなステージングも圧倒的だが。ライヴを観て驚いたのが、4人の演奏力と表現力の高さ。ダイナミックなビートや爆音の中にある、丁寧できく繊細な表現は聴き応え抜群。バンドマンに話を聞くと、「コロナ禍に時間があったし、じっくり観られるライヴが続いたから、必然的にテクニックが上がった」なんて人も多いけど。バンドが大きく成長する大切な時期にライヴができなくて、曲作りや個々のスキル向上に時間を費やしたことが、コロナ明けの大躍進につながってるというのは、ここから時代をリードしていくであろう次世代バンドの特徴かも知れない。《伝えたいことが多すぎるんだ》というあふれる想いが演奏にも込められた「荻窪」は、割り切れない想いや葛藤を歌う悲痛な歌声が胸に迫る、彼らの魅力がギュッと詰まった一曲。カッコ良い!
「ジャージ」(’22)/サバシスター

『TOKYO CALLING』は2日間で15バンドくらい観て、新しい出会いや発見もたくさんあったのに、全てを見終えた後、一番頭に残ってたのが彼女らのステージだった。2022年結成、結成5カ月目にして『SUMMER SONIC』への出演を果たすという、これまた凄まじい経歴を持つ、3人組ガールズバンド・サバシスター。彼女らのライヴは何度か観てるが、超満員の観客の期待に溢れた大きなステージも構えることのない自然体で登場し、楽しそうな笑顔で「ジャージ」を披露する姿はすごくカッコ良く見えたし、どこか嬉しい気分になった。日常を独自の視点で切り取ったユーモアと毒のある歌詞も、一緒に口ずさみたくなるキャッチーなメロディーもすごくいいし。楽曲の構成やアレンジの面白さや、3人の仲の良さが伝わるグルーブや、なちのキュートでキュンと胸締め付ける歌声もすごく良くて。クラスの気になる女子といった感じで、今一番気になってるバンド。例えとして合ってるか分からないけど、サバシスターには普遍的でみんなに愛される「ちびまる子ちゃん」的な魅力があって。あっと言う間にすごい人気者になっちゃうと思うから、「俺はその魅力に気付いてたぞ」と今のうちに伝えておくことにする(笑)。
TEXT/フジジュン 

フジジュン プロフィール:1975年、長野県生まれ。『イカ天』の影響でロックに目覚めて、雑誌『宝島』を教科書に育った、ロックとお笑い好きのおもしろライター。オリコン株式会社や『インディーズマガジン』を経て、00年よりライター、編集者、デザイナー、ラジオDJ、漫画原作者など、なんでも屋として活動。12年に(株)FUJIJUN WORKSを立ち上げ、バカ社長(クレイジーSKB公認)に就任。メジャー、インディーズ問わず、邦楽ロックが得意分野。現在は音楽サイトや、雑誌『昭和50年男』等で執筆。


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