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これを書いている今は9月、男闘呼組のいない世界だ。分かってはいたけど、ついにこれを書く時が来てしまった…。昨年7月16日のTBS系『音楽の日2022』から、デビュー35周年目を迎える今年8月末までの、一年という限定期間を終えて解散した男闘呼組。ライヴ活動をメインとした復活というだけに、イベントを含め実に68公演を無事完走! ほとんどの会場が1日2公演だなんて…50代だよね!? 8月16・17・24・25日と4日間に渡って日本武道館で行われた『LAST FOREVER』、そして正真正銘ラストとなったデビュー前の思い入れの地・日比谷野外音楽堂での8月26日『THE LAST LIVE-ENCORE-』より、あまりにも人間くさい彼らの最後のシーンお届けします。ありがとう、男闘呼組!
「YO-YO」(’89)/ アルバム『男闘呼組 二枚目』
振り返ると昨年10月、マスク着用の上、声出しもあやふやな頃に復活ライヴが開催された。あの時、誰もが大歓声で迎えたかった気持ちを必死に抑えて拍手に思いを込め、心の中でメンバーの名前を叫び、マスクの下で涙した。その記念すべきライヴから全国ツアーを通し、大事な盛り上がりの場面で起用されてきた「YO-YO」。34年も前から弱冠20歳前後だった高橋一也(現:高橋和也)が、環境問題をについて提起した歌詞が印象的なナンバーだ。武道館では謎の全身黒光ラバリストが4体(密かにRADIO FISHのメンバーが含まれていたらしい)現れて、メンバーと絡みまくっていたとこも今回の見せ場のひとつとなったが、やはりファンの心に響きまくったのは、この曲お決まりのコール&レスポンスでの高橋の言葉だろう。《YO-YO 男闘呼組 いつまでも 愛してる》《YO-YO 男闘呼組 いつの日か 帰って来い!》ちょ…今まさに解散しようとしているときに、なんてこと言わせてくれてるの!? しかもすんごい嬉しそうに(笑)。“この35年間、男闘呼組と応援してくれた皆のことを一瞬たりとも忘れたことはなかった”と目を赤くした貴方自身の、もはや心の声なんじゃ?という気もしないでもないが(笑)、でもね、例えその気もないのに思わせぶりなこと言ってるだけだったとしても、心の中の押し殺している想いを大声で叫ばせてくれる、それだけでどんなに淋しさが昇華されるか。メンバーへの愛、ファンへの愛、男闘呼組への愛、いつだって愛の人・高橋和也。同じ夢を見れたこと、忘れないよ。いつの日か、必ず帰って来い!!
「Stand Out」(’88)/ シングル「DAYBREAK」
今回武道館公演では、360°座席を開放。つまり、メンバーの背中を見つめる席も存在するということだ。それぞれだとは思うが、個人的にはこの後ろ側はレア席だと思っている。普段は見れない角度からの姿ややりとり、そして何よりメンバーの目に映る光景を知ることができる。今回はそのバックステージに近いドラムの後ろに、高さのあるステージセットを設置。そのステージに、アンコールで登場して来た高橋・岡本・成田の姿が並んだのを見た時、感情が揺れた。そこにいたのは、正装に身を包んだ男闘呼組だった。2022年末、レコード大賞で特別賞を受賞しテレビ出演した際の衣装をベースにした姿に、彼らの“終わり”への敬意を感じずにはいられない。そして、3人の華を定位置から支える前田耕陽の指が、会場に高らかに響かせたメロディーは「Stand Out」! 最初の一音とともに高橋が天に指を突き上げ、何ともドラマティックな瞬間だ。デビューシングル「DAYBREAK」の4ver.あるカップリングのひとつで、揃って出演したドラマ『ぼくの姉キはパイロット!』の主題歌でもあったナンバー。ツアー途中から、あるフレーズがくると成田と顔を見合わせながら、嬉しそうに二人でリズムをとっていた前田。振り返ると必ず目が合うというくらい、いつも三人の後ろ姿を見つめていたのだろう。野音での最後の曲を終えた後、成田が涙を拭き終わるのを待ってから段を降り、肩を抱いて自分は端へ並んだところに彼らしさが表れている気がした。“僕らの一年間の活動で、みなさんとの30年間の空白を埋めることができたでしょうか”隙間もないくらい埋めるには30年はあまりにも長い。ただ、薄れゆく記憶よりも鮮やかな思い出を、きっと誰もがこれでもかというほど受け取ったに違いない。母のような愛でいつも見守る人・リーダー前田耕陽。これからも、男闘呼組という誇りをともに胸に。
「終わらない魂」(’92)/ アルバム『5-1 非現実』
ツアーが終わり、武道館と野音はどんなメニューが演奏されるのか、男闘呼組最後の一曲は何なのか? そんなことを誰もが思い巡らす中で、個人的には「終わらない魂」を予想。SNSでも“ラララ…”を最後にみんなで歌いたい、とこの曲を推す多くの声が。《生きてる事が嬉しくて 思わず君に抱きついた》思えば、そんな場面を何度も見てきたような気がする。だから、最後とはいかなかったけれどメンバーひとりひとりが挨拶をする大切な場面で演奏されたのは、なんだかやっぱり嬉しい。1992年、結果として休止前最後となった、3枚組アルバム『5』シリーズを引っ提げて周ったツアーでは、眩い真っ白なライトの中、少し気だるそうに歌う成田昭次がいた。あれから31年、昨年の再始動時には動かない・しゃべらないだった彼が、メンバーとともにライヴを繰り返す中でステップを踏み・クルクル回り・挨拶は一番長くなった(笑)。ここまで短期間で変われる人間がいるのかというくらい。活動休止後夢の居場所から一番遠ざかっていた人は、一年の月日を経てたくさんの愛情を溢れ出てくる涙に変え、銀テープが舞う中、亡き兄のギターで魂の音色を響かせていた。解散から5日後、成田がインスタグラムを更新。“他のモノでは埋めたくないので、このまま踏み出そうと決めました”きっと胸に空いた大きな穴は、愛しさの証。いつでも胸にいてくれる優しい存在になってくれるはずだ。無意識に愛されることを止めない人・成田昭次。戻ってきてくれてありがとう、貴方の勇気が見せてくれた一年でした。必ずパラダイスで会いましょう!
「FOREVER」(’89)/ アルバム『男闘呼組 二枚目』
“解散”それは“解き放たれ散らばる”という意味だ。多感な時期をともに過ごし、同じ夢を見てぶつかりながらもともに歩んできたこれまでは、そんな言葉ひとつで散ってしまえるものではない。たとえ形は失くなっても、きっと何も変わらない。ただ、幕が閉じるだけ。 これは過去にあるバンドが解散した時ライヴレポートで書いた言葉なのだが、この時脳裏にあったのは、“男闘呼組とは?”と問われて“一番刺激的な年齢を一緒に過ごしてきた、間違いない存在”と答えた岡本健一の言葉だった。今、そっくりそのまま彼らに捧げよう。今回、武道館公演のタイトルは『LAST FOREVER』。解散なのに“FOREVER”か…泣かせてくれるじゃん。てことは、今考えればこの曲がラストナンバーというのは言うまでもないが…リリース当時、まさかこの曲で解散するなんて誰が想像しただろう。武道館、ダブルアンコールでサポートメンバーなしの4人だけでステージに戻り、アコースティックで奏でた「FOREVER」。そして、野音では予定にはなかったトリプルアンコールで。歌いながら最初に声を詰まらせたのは岡本。グッズのレプリカではなく、30年以上前のFC会員証ネックレスをいつも大事に身に着けていたのも…一見クールに見えるのに、時々こうして彼の熱さを再認識させられる。“メンバーの誰かが動けなくなる前に、皆の前で解散した方がいい”形あるものはいつかは終わる。悲しいお別れになる前に、4人が全力で注げるまま、綺麗なまま、永遠になってくれたのだ。静かに熱い愛で、希望を決して消さない人・岡本健一。貴方の祈りがきっと届いているその未来で、間違いない夢のその後を待っています!
「MY LIFE」(’90)/ シングル「DON’T SLEEP」
実は、今回最後の5公演でこの曲は演奏されていない。別れの日が近づくとともにSNSに出現したタグがある。“#お願いMYLIFE”もちろん全てのファンが望んでいたとは限らないが、100曲以上ある持ち曲の中で「MY LIFE」がそのように支持されていたのは正直意外だった。5th.シングル「DON’T SLEEP」のカップリングでオリジナルアルバムには収録されていない。《MY LIFE 夢を見ていたい MY LIFE いつも願う》という歌詞が、長い時を経て再び集結した本人たちの想いを代弁しているようで、そしてそうあり続けてほしいと願う、そんな心理なのかもしれない。 そういった気持ちを知っていたかのように、武道館公演にてエンドロールが終わり、客電が付くとともに場内に流れたのがこの曲だった。余韻の中で聴く「MY LIFE」はそりゃあ沁みるに決まってる。解散公演の野音はキャパ3000人、どう考えたって武道館でお別れをしなければいけない人が圧倒的大多数なのだ。ただ、野音で「FOREVER」が終わった瞬間の高橋の“全てが終わってしまった…”というような、空虚感にも似た淋しげな表情を除けば、まったく趣の異なる両会場でのライヴ、どちらが自分にとっての“ラストライヴ”だったとしても、悔いのない内容だったと感じている。あの頃の4人と現在の4人が一緒に作り上げたラストステージ。男闘呼組からの最後の言葉は“また会おうねー!”でした。武道館、階段を下りて消えてゆく4人の肩先に光っていたのは、きっとこの先も続く長く曲がりくねった道を、変わらずに肩を寄せ合い微笑み合う未来のはず。観測史上最も暑かった夏は、男闘呼組とともに終わった。ただし、難攻不落の再始動を無事終えた四銃士の魂は、永遠に終わらない。
TEXT:K子。
K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最愛のバンドが胸に空けた大きな穴とこれからも生きていく。
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