<ライブレポート>ZIGGY/ジュンスカらバンドブームのサバイバーが競演【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!】

2023年8月17日 / 14:45

 8月12日、Zepp Osaka Baysideにて【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!】の大阪公演が開催された。

 まだ夏フェスもインターネットもスマホもSNSもなかった’80年代後半、音楽に触れるための主要メディアといえば雑誌とラジオだった。

 【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON!!】は、1988年創刊の音楽誌『BANDやろうぜ』の名を冠し、東名阪のラジオ局3社がプロデュースするフェス。バンドブーム期にデビューした7組が3会場で競演する、その幕開けの大阪公演を観た。

 全席椅子席となったZepp Osaka Baysideが、40代から50代を中心とする観客で埋め尽くされ、MC・ちわきまゆみが「今日はどのバンドも出し惜しみなしの強力なセットリスト!」と煽るなか、開始。

 一番手はJUN SKY WALKER(S)。革ジャンにサングラスの宮田和弥が姿を見せると場内は早くも総立ち。いきなりあの大ヒット曲から始めて、ワンマンツアーでも披露していない曲、名バラード、出たばかりの新曲を織り交ぜてゆく。

 ひと息ついて場内を見渡した宮田が「なにしろ嬉しいのは椅子だよね」と、立ち見が厳しくなった年頃の観客に共感を示すが、このあと、幕間の転換時を除いて、皆、ほぼ立ちっぱなしでバンドの熱演に応えてゆく。

 舞台から捌ける際、ZIGGYの「BURNIN’ LOVE」の一節を宮田がアカペラで唄っていたのも、本フェスならではの交流歴を感じる瞬間だった。

 つづいては、広石武彦がUP-BEATの楽曲をアップデートしてプレイするRESPECT UP-BEAT。シルエットだけでそれと分かる、当時と変わらないスタイルを堅持する広石は「Kiss…いきなり天国」で、一気にグラマラスな世界へと聴衆を引き込んでいく。

 今回はJUSTY-NASTYからLEZYNA(G)、大石“RALF”尚徳(Ds)を迎えた特別な布陣。だがメンバー紹介を終えると、あとはMCもなく、「TIME BOMB」「ONCE AGAIN」そしてラストの「KISS IN THE MOONLIGHT」まで、綺羅星のような楽曲群を歌い切った。

 トリはZIGGY。気取りなく登場した森重樹一がシャウト一発、歌い始めたのは、のっけから「GLORIA」。続いてのMCでは「J(S)W、変わらないね。少年のようだね。でも中身は……オジサンなんだ! UP-BEAT広石くん、男前だったねー。でも中身は……オジサンなんだ!」あれ? 森重樹一ってこういう人だっけ?と戸惑うほど、くだけた語り口に頬が緩む。

 サポートも強力で、派手な手数で叩きまくるCHARGEEEEEE…(Ds)、ボトムを支えるToshi(B)、顔で弾くバンマス、カトウタロウ(G)という盤石のメンバー。「STAY GOLD」「I’M GETTIN’ BLUE」といったシンガロング向きの楽曲を絶妙に配して、最後は「DON’T STOP BELIEVING」でシメた。

 アンコールでは、広石が再会を懐かしみつつも「MC長いよ! あの頃の、僕の知ってる森重さんじゃない!」と指摘して場内爆笑。確かに以前のバッドボーイズ然としたイメージからすると、現在の森重の親しみ易すぎるキャラはギャップがあるだろう。

 さらに森重と宮田が昔話に花を咲かせていると、「皆、立ってるだけでやっとなんだから」と立ち尽くめの観客を気遣う広石にたしなめられる展開に。それは失礼したとばかりに「エビバデー、座ったままクラップユアハンズ!」と森重が始めた曲は初期のR&R「Feelin’ Satisfied」。宮田のブルースハープも冴えわたり、3時間を超えるステージは大団円を迎えたのだが、思い返すと、ふっとシリアスな心情が溢れる場面もいくつかあった。

 たとえば、J(S)Wがこの日も演奏した新曲「そばにいるから」は、歌っている主体、つまりバンドやボーカルがいつかこの世界から消えたとしても、歌はあなたのそばにいると歌っている曲だ。そのエンディングで宮田和弥は三度、マイクを通さない生声で「そばにいるから」と繰り返して歌い、強い印象を残した。

 そして森重は「ミュージシャンが天に召されていく」と音楽家の訃報が続く日々に触れ、「誰も死にたくて死んでくんじゃねえんだぜ」と叫んだ。おそらく本公演の前々日に突然、逝去の報せが届いた、同世代のバンドのボーカリストのことが念頭にあったように思う。’80年代、’90年代の狂騒の季節をくぐり抜け、生き延びてきた者同士にしか分からない何かが胸を突き上げたような、そんな叫びだった。

 本気の演奏と和やかな笑い、互いへのリスペクト。そして年相応の、生きていくことにまつわるビターな感覚を味わいつつも、最高のノリを発揮した観客への連帯と感謝を感じた一夜だった。つづく名古屋・東京公演も楽しみでならない。

Text 大内幹男
Photo 渡邊一生

◎公演情報
【バンドやろうぜ ROCK FESTIVAL THE BAND MUST GO ON !!】
2023年8月12日(土)※終了
大阪・Zepp Osaka Bayside
出演:ZIGGY/JUN SKY WALKER(S)/RESPECT UP-BEAT

2023年8月19日(土)START 18:00
愛知・Zepp Nagoya
出演:GO-BANG’S、JUN SKY WALKER(S)、PERSONZ

2023年9月2日(土)START 18:00
東京・Zepp Haneda
出演:岸谷香、筋肉少女帯、JUN SKY WALKER(S)

https://banyarofes.jp/


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