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終わりなき歌を口遊(くちずさ)むカナリアは、今ここに3年の時を経たうえでより自由な空を求め、籠から放たれ力強く羽ばたき始めたようだ。
PENICILLINのギタリスト・千聖が、バンドとは一線を画するかたちで“MSTR(ミスター)”と名のり、ここまで20年にわたり牽引して来ているソロプロジェクト・Crack6が、このたび6月6日に『カナリア最終楽章:CODA』と題したアルバムを発表することになったのだが、この作品が世に出るまでには長い紆余曲折があったのだという。
「このアルバムに最終楽章というタイトルがついているのには理由があって、もともとは2019年6月にCrack6としての次なる展開を考えたうえで作った『カナリア』というシングルを出した際、そこからアルバムやツアーにつながっていく流れというものも既に考えていて、時期としては2020年6月にアルバムを出したいというヴィジョンも明確にあったんですよ。でも、みなさんもご存知の通りコロナ禍の発生によって一時は音楽制作もストップせざるを得なかった時期がありましたし、ツアーをやろうと思ってもなかなかスケジュールを組めない状況になってしまって、やむなく一旦そこでカナリアにまつわる動きは止めることになったんです。つまり、カナリアには鳥籠の中でしばらく待ってもらうことになりました」
ただし、それでもCrack6が活動そのものを完全に止めることはなかった。エンタテインメント業界全体が停滞の様相をみせていた時期でさえ、2021年には『Brake the Darkness』『SPEED FREAKER』、さらに2022年にも『FIGHT BACK!!』『聖域~Sanctuary~』という計4作のパンフレット付CDをリリースしたうえで、全国規模ではなかったもののライヴ活動もコンスタントなかたちで継続してきていたのである。
「2021年と2022年にCrack6として出した作品たちは、敢えてカナリアとは別の方向性で作ったものたちでしたね。あと、2021年から2022年にかけてはこれもコロナの影響でPENICILLINの方の30周年というのが少しズレたかたちで重なってきてましたから、オリジナルアルバム『パライゾ』もそうだし、ベスト盤『30 -thirty- Universe』も作る必要があったんですよ。それもあって、Crack6としてのアルバム制作がさらにズレ込んだという事情もあるんです。結果としては、当初のプランから行くとまる3年経ってようやく今回『カナリア最終楽章:CODA』を出すことが叶いました」
そんな待望の今作は、カナリアというひとりの女性を主人公としたコンセプト性の高い内容が特徴的なものとなる。しかも、各曲を通して描かれてゆく物語の根底にあるのは“恋愛”という人間にとって普遍的なテーマで、ひいては人生における幸福論を追求していくことにもなっていったそう。
「2019年当時に、Crack6として新しいことをやってみたいなと考えた時に浮かんだのがテーマに沿ってコンセプチュアルなアルバムを作ってみたいということで、そのときに題材として取りあげてみたかったのが、それまでCrack6ではあまり表現してなかった領域の“恋愛”についてだったんです。可憐な小鳥が恋をして、いろいろな経験をしながら逞しく生きていくという物語を音楽で描いていくのが面白そうだったし、今回あらためてカナリアを久しぶりに籠から出してみた時には、ただ恋愛のストーリーを綴っていくというだけではなくて、もっと深いところで人にとっての幸せとは何なのかとか、人それぞれにとっての幸福論みたいなところまで表現するようにしていきたいな、と思ったんですよ。ある意味、そこは一旦しばらく籠にしまっておいたからこそ生まれた部分なんじゃないかな、と感じてますね」
ちなみに、この『カナリア最終楽章:CODA』は物語の面でも、制作的な面でも楽曲たちがほぼ時系列に沿って並べられているそうなのだが、なんと1曲目の「Your Name…」に限っては主人公・カナリアが“人生の終わりに何を想うのか”というところから、逆算的にストーリーが展開していくのだとか。もちろん、今作の始まりとなったシングル曲のアルバムヴァージョン「カナリア-CODA ver.-」も収録されており、その他にもカナリアとその恋人の男性の視点が1曲の中で交錯する「アオイユメ」をはじめとして、巧みな情景描写および心理描写のおりなす愛のドラマたちが、聴き手の心をカナリアながらに鷲掴みしていくことになるのだ。
「あのシングルを出した段階では、最後に「Rain Dance -CODA ver.-」でまだ若かったふたりは別れてしまっていたんです。だけど、このアルバムではそこから男性側が別れたことを後悔している「デラシネ-CODA ver.-」という曲があったり、そこからまたさらに時間が経って怒りや悲しみが想い出に変わっていく「アネモネ」があったりしつつ、「What’s is TRUE?」では大人になったふたりが再会して愛が再燃する場面というのもあるんですよね。ただ、それでめでたしめでたしっていうシンデレラストーリにはなってません。大人の恋愛ってもっと複雑だし、お互いにいろんな事情とか背景もあったりするだろうから、そう簡単にいくものではないんじゃないかな?と思うんですよ」
さすがは百戦錬磨の人生を歩んできているMSTR。Crack6の提示する恋愛模様は単純なお花畑ラブストーリーとは全く異なる複雑さとリアルさを備えていて、そこにこそ醍醐味があると言えよう。曲のタイトル通りにスウィートなテイストの漂う「アップルパイ」にしても、第一印象では艶っぽくアダルトな内容に感じられる「HEAVEN」、そしてアルバムの最後をしめくくるアッパーチューン「CODA」についても。どれもじっくり味わえば味わうほど、曲たちはたくさんのことをわたしたちに伝えてくれるはず。
「「HEAVEN」っていう曲タイトルになっていて、詞もセクシーな内容ではあるんだけど、その中では「これは本当の幸せなのか?」って自分たちの幸せの在り方に疑問を感じてたりとか。「CODA」にしても、ここには「この曲と歌詞を聴いてどう感じるかはあなた次第です」という投げ掛けを込めてあるんですよね。特に「CODA」は自分自身がコロナで活動が思うように出来なくなった時期に作っていたものだったせいか、恋愛だけじゃなく「生きてるといろんな困難やトラブルはある。でも、見えない敵に負けるな!」っていう、まさにあの当時に自分が感じていたリアルなメッセージも入っちゃいました」
もちろん、そうしたストーリー性のみならず音楽的な面でも『カナリア最終楽章:CODA』には多彩なエッセンスがちりばめられており、たとえば「アオイユメ」ではEDM、「Rain Dance」では80年代の香りが漂うスラッシュメタル、「アップルパイ」では小粋なモータウン、「HEAVEN」ではスリリングでモダンな音像、はたまた「CODA」はパンクなアグレッシヴさも堪能することが出来るため、Crack6の懐の深さというものをこの全10曲からは存分に感じられるに違いない。
「作りながらも「何時これを出せるのかわからない」という時期があっただけに、今回こうしてアルバムを完成させられたことや、それをCrack6の20周年という大きな節目に出せることはクリエイターとして本当に感無量です。最初に着手してからは3年が経ってるだけに、シングル曲たちは今やライヴでおなじみになってたりもしますが、既存曲に関しては今回“-CODA ver.-”というかたちでJIRO 6がドラムを新録している曲もあり、ちゃんと1枚を通して『カナリア最終楽章:CODA』という新しいアルバムを作ることが出来ました。恋愛をモチーフとした幸福論、人生論を表現出来たことに対する手応えも凄くありますから、あとはこれをツアーで実演していくことでカナリアの世界をもっと深めていきたいですね。みんなにとっても、ライヴで体験して初めてわかることが出てくるだろうし、僕も実際にやってみないとまだわからないことがあるんじゃないかと思っていて、それが今からとても楽しみです!」
当然、6月から7月にかけて開催される全6ヵ所7公演の[Crack6 TOUR 2023 「カナリア最終楽章:CODA」]は必見となるが、このツアーが終わった後にもCrack6の20th Anniversaryな日々はまだまだ続いていく。
「今回のツアーが20周年のお祝いの始まりです。ここから20周年企画は続いていくので、よかったらみなさんも一緒にお祝いしてください(笑)」
なお、今作『カナリア最終楽章:CODA』のラストソング「CODA」でMSTRが最後に歌いあげるのは〈~僕は 終わりなき歌をうたう~〉という確かな意思表示が感じられる一節。終わりなき歌を口遊(くちずさ)むカナリアは、今ここに3年の時を経たうえでより自由な空を求め、籠から放たれ力強く羽ばたき始めるのだ。
文章:杉江由紀/写真:菅沼剛弘
アルバム『カナリア最終楽章:CODA』
2023年6月6日(火)発売
SRPM-2007/¥¥3,600(税込)
※豪華ブックレット(16ページ)付き
<収録曲>
※詳細はオフィシャルHPをチェック
【インストアイベント情報】
New album 「カナリア最終楽章:CODA」対象インストアイベント
6月10日(土) 16:30~ littleHEARTS.新宿店:トーク&特典お渡し会
6月10日(土) 19:00~ タワーレコード新宿店:トーク&サイン会
6月24日(土) 12:00~ littleHEARTS.大阪店:トーク&サイン会
6月25日(日) 12:00~ 名古屋fiveStars:トーク&サイン会
6月30日(金) 19:30~ タワーレコード渋谷店:アコースティックミニライブ&トーク&お見送り会
【ライブ情報】
『Crack6 TOUR 2023 「カナリア最終楽章:CODA (カナリア コーダ)」』
6月11日(日) 高田馬場CLUB PHASE
6月17日(土) 西川口Hearts
6月18日(日) 川崎Serbian Night
6月24日(土) 大阪RUIDO
6月25日(日) 名古屋ell.FITSALL
7月01日(土) 渋谷REX
7月02日(日) 渋谷REX
開場17:00/開演17:30
※7/2(日)REXのみ開場16:30/開演17:00
<チケット>
スタンディング:¥8,500(税込/D別)
※未就学児入場不可
※チケット発売中
※詳細はオフィシャルHPをチェック
【PENICILLIN information】
■LIVE情報
『30th anniversary tour real final 渋谷公会堂』
7月17日(月・祝) LINE CUBE SHIBUYA
開場17:15/開演18:00
全席指定
<チケット>
・一般発売(先着)
6月17日(土)10:00
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