<ライブレポート>中田裕二、ソロ・アーティストとして10周年のアニバーサリーイヤーに”裏ベスト”的選曲で魅了した濃密なステージ

2021年6月21日 / 18:00

 中田裕二が6月19日(土)、ビルボードライブ東京で単独ライブ【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.2“ANOTHER SIDE OF TWILIGHT WANDERERS”】を開催した。

 2021年は、ソロ・アーティストとして10周年のアニバーサリーイヤー。今年3月には初のベスト・アルバム『TWILIGHT WANDERERS – BEST OF YUJI NAKADA 2011-2020 -』をリリース。さらに4月17日には10周年記念ライブを行い、椿屋四重奏(中田がボーカルを務めたロックバンド)が一夜限りの復活を果たしたことでも注目を集めた。この日のライブでは、ファンの間で人気の高い楽曲を中心に、1st/2ndステージでダブりナシの”裏ベスト”的選曲を披露。ロック、AOR、ソウル、歌謡などを融合させた音楽性、“男と女”の感情を深く描いた歌を含め、中田裕二のディープな世界を堪能できるステージが繰り広げられた。

 黒のシックなスーツ姿でステージに上がった中田は、「ようこそ!」と挨拶し、「未成熟」(アルバム『BACK TO MELLOW』収録/2014年)でライブをスタートさせた。中田が奏でるギターリフに導かれ、いぶし銀のバンドグルーヴと「男は眺めて楽しんだ/若さの速度で君はかわりゆく」というフレーズが絡むこの曲は、良質な大人のロックと称するにふさわしい。

 「今日はマニアックな、普段あまりライブでやらない曲も演奏しようかなと思ってます。暗い曲が多めになると思いますが(笑)、楽しんでもらえると」というMCの後は、掴んだと思った瞬間にすり抜ける、“君”との繊細な関係を快楽的なAORサウンドとともに映し出す「誰の所為」(アルバム『Sanctuary』収録/2019年)、ブルーの照明のなかで、ジャズのエッセンスを交えながら、憂いを帯びた朝の情景を歌い上げた「blue morning」(アルバム『アンビヴァレンスの功罪』/2013年)、アコースティックな音像、叙情に溢れた旋律、どこかにあるはずの“僕らの居場所”を巡る歌詞がゆったりと溶け合う「白日」(アルバム『ecole de romantisme』収録/2011年)などを披露。ライブ序盤から、中田にしか描けない音楽世界を生み出していく。千ヶ崎学(Bass)、小松シゲル(Drums/NONA REEVES)、平泉光司(Guitar/COUCH, benzo)、カトウタロウ(Backing Vocal,etc)、sugarbeans(keyboard)による、洗練と野性を兼ね備えた演奏も素晴らしい。

 「前半から昔の曲をやってますが、いかがでしょうか。今日は久々の曲が多くて。リハを6回くらいやってたんですけど、“この頃はチャラついてたな”とか“こんな歌詞を書いてたのか”とか、いろんなことが巡ってきて。皆さんも楽しんでもらいながら、僕自身も楽しんでもらわせてます。」

 そんなリラックスしたトークの後は、幅広いジャンルを融合させた音楽性を味わえる場面が続いた。

 鍵盤によるリフを中心に、ファンク、ソウルのテイストを取り入れた「イニシアチブ」(配信シングル「MIDNIGHT FLYER」収録/2013年)、“ゴージャズな憂い”という言葉が似あうピアノから始まり、6/8拍子のリズムのなかで濃厚なメロディが響き渡る「春雷」(アルバム『MY LITLE IMPERIAL』収録/2012年)、中田のギターカッティングに合わせて観客が楽しそうに手拍子したダンサブルなナンバー「ギミ―・ナウ」(アルバム『thickness』収録/2017年)。00年代以降のネオソウル、シティポップ、AORリバイバルの潮流と自然に重ねりながらも、あくでも自らの美意識を貫いてきた中田裕二。10年間の活動のなかで彼は、唯一無二のポップミュージックを確実に積み上げてきた。この日のライブは、その事実を改めて証明していたと思う。また「10周年のライブのときに人気投票をやって。“え、この曲がそんな人気なの?みんな病んでるね”と思ったりもしましたが(笑)、そんな曲を歌えるのも僕の特権かなと」という言葉も、彼の独創的な作品性を示していた。

 「ずっと男と女をテーマに歌ってきましたけど、もっとも重要で問題なのは(男女の)会話ですよ。論点が永遠に合わないじゃないですか(笑)」というMCに導かれた「長い会話」(アルバム『DOUBLE STANDARD』収録/2020年)、そして、「最後は威勢のいいリズムで!」と観客を煽った「女神のインテリジェンス」(アルバム『MY LITTLE IMPERIAL』収録)を放ち、本編は終了。

 鳴り止まない拍手に導かれ、手を振りながら再びステージに登場した中田は、「まだまだ辛抱の時期が続きますが、僕の音楽に酔っていただいて」と笑顔でコメント。さらにエルヴィス・プレスリーのドキュメント映画(「エルヴィス・プレスリー:ザ・サーチャー~キング・オブ・ロックの魂」)に感銘を受けたことを話し、「次の曲は50年代っぽいテイストがあります。朗々と歌わせていただきたいなと」と「ただひとつの太陽」(シングル「ただひとつの太陽」/2016年)を気持ちよさそうに歌い上げた。熱く、解放的な雰囲気のなか、ライブはエンディングを迎えた。

 2ndセットでも、ファンの根強い支持を得ている隠れた名曲をたっぷり披露。事前に告知されていた通り、“被りなし”の濃密なステージを見せてくれた。1stステージ、2ndステージのアーカイブ配信は、6月26日(土)23:59まで。男の色香と切なさを歌、豊潤なバンドサウンドをぜひ体感してほしい。

Text by 森朋之
Photo:Yuma Totsuka

◎配信情報
【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.2
“ANOTHER SIDE OF TWILIGHT WANDERERS” 】
■オンライン視聴料:¥2,800
■販売期間:6/12(土)12:00~6/26(土)21:00
■視聴可能期間:6/19(土)15:00~6/26(土)23:59
チケット購入URL: https://eplus.jp/yujinakada-stbbl/

【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.2
“ANOTHER SIDE OF TWILIGHT WANDERERS” 】
■オンライン視聴料:¥2,800
■販売期間:6/12(土)12:00~6/26(土)21:00
■視聴可能期間:6/19(土)18:00~6/26(土)23:59
チケット購入URL: https://eplus.jp/yujinakada-stbbl/

◎公演情報
【YUJI NAKADA 10TH ANNIVERSARY SPECIAL LIVE vol.2
“ANOTHER SIDE OF TWILIGHT WANDERERS”】
6/19(土)ビルボードライブ東京 ※公演終了 
1st Stage Open 14:00 Start 15:00 / 2nd Stage Open 17:00 Start 18:00


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