大原櫻子 最新ライブレポート到着、ファイナル公演で魅せた二つの色

2021年6月21日 / 17:30

 音楽活動に加えて、役者としても映画やドラマ、舞台やミュージカルなど幅広いフィールドで活躍中の大原櫻子が2021年6月18日に東京ガーデンシアターにて、全国ツアー【大原櫻子 CONCERT TOUR 2021“Which?”】のファイナル公演を迎えた。

 大原が全国ツアーを開催するのは、全編に渡ってカバー曲にチャレンジした東名阪ツアー【大原櫻子Premium Concert 2020“I am not I”】を挟み、2019年5~7月にかけて行われたデビュー5周年を記念した全国ツアー【大原櫻子 5th Anniversaryコンサート“CAM-ON! ~FROM NOW ON!~”】以来、約2年ぶり。さらに、本ツアーは、2020年2月にリリースした4thアルバム『Passion』の楽曲を中心に構成された「P version」と、今年3月にリリースした最新アルバム『l(エル)』に紐づいた「L version」のダブルコンセプトを掲げ、各会場で1日に2つの異なる公演を行うという新たな試みに挑んだツアーとなっていた。

 16時開演の「P Version」は、草刈浩司(Gt.)、前田逸平(Ba.)、髭白健(Dr.)、小名川高弘(Key.)というバンドメンバーによる明るく軽快なリズムで幕を開けた。オーディエンスのクラップに迎えられた大原は、ポニーテールに赤いリボンと赤い手袋をつけた“赤”をイメージした衣装で登場。キャッチーなダンスポップ「Amazing!」、「Shine On Me」で女性ダンサー二人を従えてエネルギッシュに踊り、いきなり観客の視線を釘付けにすると、最初のMCでは本ツアーを振り返り、「ほんっとに感慨深いです。最終日を迎えることができて夢のようです」と実感を込めて語った。

 そして、歓声が出せないオーディエンスとはペンライトやメッセージボードでコミュニケーションを図り、ファンのリクエストに応えて鶏の鳴き声も披露して場内の空気を和ませると、届きそうで届かない恋心を描いた「未完成のストーリー」ではタンバリンを叩いて盛り上げ、自身が作詞作曲を手がけた片想いソング「Special Lovers」では心地よいハイトーンを響かせた。さらに、デビューのきっかけとなった主演映画『カノジョは嘘を愛しすぎてる』の劇中歌「明日も」はアカペラで歌った後、アコギを力強く鳴らして勢いを上げていくと、高校サッカー応援歌として制作されてヒットした2ndシングル応援歌「瞳」を観客一人一人の心に届けるように真っ直ぐに歌い上げた。

 初の主演ドラマ『びしょ濡れ探偵 水野羽衣』の主題歌で自分を信じる強さを込めたメッセージソング「I am I」から後半戦に突入。ファンキーなR&B「Sing Sing Sing」ではダイナミックなダンスと速いパッセージの歌い回しで熱気を上昇させると、オーディエンスは<ナナナ>の大合唱の代わりにペンライトを大きく振り、事前にダンスレクチャー動画をアップしていた「REALITY SHOW」で観客が1つとなって踊って盛り上がった。しかし、ここで空気は一転。バンドのインストを挟み、一青窈が作詞したバラード「電話出て」では、白いワンピースに着替えた大原が、自身の明るく元気なイメージとは正反対の低音の効いた歌声を繰り出し、心の奥底から湧き上がってきたようなダークな思いを吐露。弱々しい呟きから次第に激情へと歌声とちょっとした仕草でドラマを紡いで切迫したシリアスな空気感を醸し出し、ミュージカルなどでも活躍している彼女ならではの表現力をアピールする一方で、会場に集まったファンに向けて、「あなたと繋がっていることがわかれば、私はどんなことがあって歌い続ける」という強い意思を表明した。

 20時開演の「L version」公演は、緑黄色社会の長屋晴子が書き下ろしたアップテンポのポップロック「透ケルトン」でアグレッシブにスタート。パープルのノースリーブ姿でエレキギターをかき鳴らし、自立した女性の心をパワフルに歌った彼女は、<あなたは一人じゃない>というメッセージも込めたライブの人気曲「踊ろう」で会場に一体感をもたらすと、「こういうご時世の中、足を運んでいただきまして本当にありがとうございます」と挨拶。続けて、「今日は1番の笑顔を生み出したいと思います」と意気込みを語ったあと、「STARTLINE」では堂々とした歌いっぷりで観客を圧倒したかと思いきや、ロマンチックな大人の恋愛ソング「Love Letter」では息遣いを繊細に使いながら色香を漂わせ、デビュー映画の人気曲「ちっぽけな愛のうた」では思春期の葛藤や迷いを繊細かつ伸びやかに歌い上げるなど、楽曲ごとに声色と表情を変えていった。

 続くブロックでは、「miss you tonight」や「Carnival!」といったダンスナンバーで会場に集まった大勢の観客の笑顔とクラップを引き起こし、ライブならではのオーディエンスとの一体感を生み出すと、一青窈が作詞した「#やっぱもっと」では<菜の花揺れてる高台>という歌詞に合わせて、フロアがイエローのペンライトで埋め尽くされる場面もあった。そして、彼女が作詞した男性目線のラブソング「抱きしめる日まで」では、コンテンポラリーダンスに合わせて、遠く離れた君とまた会える日まで生きていくんだという思いを切々とドラマチックに歌唱。ここで、彼女はファイナル公演のみのサプライズとして、本ツアーのオープニングSEとして流していたアリシア・キーズ「Underdog」をカバー。<好きなことを諦めないで/絶対に這い上がれるから>というエールソングを真っ直ぐに前を見据えて凛とした姿勢で熱唱し、同じ時代に日々を生きるオーディエンスに生きる情熱と勇気を届けた。

 そして、2公演ともエンディングナンバーは彼女自身が作詞作曲した「チューリップ」であった。全く異なるセトリの中で唯一の共通曲について、彼女は「昨年、大切な友人を亡くしました。その友人へのメッセージを歌にしようと思って作った曲です」と明かし、ギターと歌だけの弾き語りで披露。最後はマイクを外して、生声のみで<今日のあなたがいちばんです>と歌い、「皆さんの明日に少しでも笑顔の花が咲きますように」というメッセージを明るく優しく伝え、会場中を温かい気持ちで満たした。

 全国13か所14公演ながら、ひとつの会場でふたつの全く異なる色のツアーを並行して行い、合計28公演にも及んだダブルコンセプトツアーを見事にやり遂げた彼女は、最後のMCで「こんなに愛おしく寂しいツアーは無いんじゃないかなって思います。歌うことが大好きで、歌ってる時に幸せを感じる私ですが、プレッシャーや不安な気持ちも大きかったです。でも、毎回会場でみんなやスタッフさんが見せてくれる笑顔で乗り越えることができました」と感謝の気持ちを述べ、天に手を高く掲げて「やったー!!」と絶叫すると、観客からは賛辞のこもった割れんばかりの拍手がわき起こるなかで大団円を迎えた。

Text by 永堀アツオ
Photos by 竹中圭樹

◎【大原櫻子 CONCERT TOUR 2021 “Which?”】セットリスト
※2021年6月18日(金)東京ガーデンシアター公演
「P Version」 
M1. Amazing!
M2. Shine On Me
M3. 未完成のストーリー
M4. Special Lovers
M5. 明日も
M6. 瞳
M7. I am I
M8. Sing Sing Sing
M9. REALITY SHOW
M10. 電話出て
M11. チューリップ(弾き語り)

「L Version」
M1. 透ケルトン
M2. 踊ろう
M3. STARTLINE
M4. Love Letter
M5. ちっぽけな愛のうた
M6. miss you tonight
M7. Carnival!
M8. #やっぱもっと
M9. 抱きしめる日まで
M10. Underdog(アリシア・キーズ カバー曲)
M11. チューリップ(弾き語り)


音楽ニュースMUSIC NEWS

【アニサマ2024】Aimer/『【推しの子】』より“B小町”/北宇治カルテットら第2弾出演アーティスト発表

J-POP2024年4月19日

 2024年8月30日から9月1日までの3日間、埼玉・さいたまスーパーアリーナにて開催されるアニソンライブイベント【Animelo Summer Live 2024 -Stargazer-】の第2弾出演アーティスト5組が発表となった。  初 … 続きを読む

リアーナ、待望のニューALについて“ヒットを生み出せそうな素材”があると語る

洋楽2024年4月19日

 2016年の大ヒットアルバム『アンチ』の待望の続編となる通称“R9”がいつリリースされるのか、ジャーナリストやファン、その他多くの人々がリアーナに尋ねているが、進行中だというこのプロジェクトについて彼女は曖昧な、時には矛盾した答えを出し続 … 続きを読む

<コーチェラ2024現地レポ>ノー・ダウト、9年のブランクを感じさせない圧巻のリユニオン・ショー オリヴィア・ロドリゴも飛び入り

洋楽2024年4月19日

 現地時間2024年4月12日~14日にかけて、米カリフォルニア州インディオにて野外音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル2024】のウィークエンド1が、ヘッドライナーにラナ・デル・レイ、タイラー・ザ・ … 続きを読む

斉藤朱夏、ソロデビュー5周年ミニAL『555』リリース決定 新曲5曲を収録予定

J-POP2024年4月19日

 声優、アーティストの斉藤朱夏が、ソロデビュー5周年を記念した5曲入りのミニアルバム『555』を7月10日にリリースすることが決定した。  ソロアーティストとして4枚目のミニアルバムとなる今作は、変化や人生の転機を意味する数字“555”を掲 … 続きを読む

ビリー・アイリッシュ、ラナ・デル・レイがいなければ「Ocean Eyes」はなかったと語る

洋楽2024年4月19日

 ビリー・アイリッシュが、【コーチェラ2024】のウィークエンド1に行われたラナ・デル・レイのステージにサプライズで登場した際、ラナのことを“私を含め、あなたたちの存在理由の半分”と呼んだが、それは冗談ではなかったようだ。  現地時間202 … 続きを読む

Willfriends

page top