【芸能コラム】星野源&高畑充希 実写とアニメーションの垣根を超える俳優たち 『夜は短し歩けよ乙女』『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』

2017年3月31日 / 17:52
『夜は短し歩けよ乙女』 (C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

『夜は短し歩けよ乙女』 (C)森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

 すっかりアニメーションが話題の中心として語られるようになった日本映画界。俳優がアニメーションに出演することが特別視された時代はとうに過ぎ、今では実写とアニメーションの両方で活躍する俳優も多い。そこで今回は、人気俳優が声の出演をしている2作品に注目してみた。

 4月7日全国公開予定の『夜は短し歩けよ乙女』は、“黒髪の乙女”に恋をした大学生“先輩”が、彼女に思いを伝えようとする中で巻き起こる一夜の騒動を描いた作品だ。

 森見登美彦の小説を原作にした本作は、普段見慣れた日本のアニメーションとは異なり、個性的なキャラクターの数々と、アート性の高いファンタスティックな絵柄が特徴。舞台は京都だが、リアルさよりも幻想的なムードが漂うユニークな作品だ。

 この作品で主人公“先輩”の声を担当しているのが、星野源。俳優としては昨年の「逃げるは恥だが役に立つ」や「真田丸」など、生真面目キャラのイメージが強いが、奇想天外なユーモアに彩られた本作では、よりはじけた印象がある。歌手としても活躍する星野の伸びやかな声が作品にぴったりマッチし、ある種のすがすがしさを醸し出す。

 一方、公開中の『ひるね姫 ~知らないワタシの物語~』に主演しているのが、高畑充希。夢と現実を交錯させながら進行する本作は、街の中を駆け回り、バイクで疾走し、宙を舞うイマジネーション豊かなアドベンチャー作品。

 高畑は女子高生・森川ココネと夢の世界の住人エンシェンの二役を、伸び伸びと演じている。本作には他にも、満島真之介、江口洋介、高橋英樹といった人気俳優たちが出演し、実写作品の時とはまた違った印象を残している。

 最近は日常を舞台にした作品も多いが、この2作はいずれも個性的なビジュアルや豊かなイマジネーションなど、アニメーションならではの特徴を生かしており、見応えがある。

 だがそれは、出演者には実写作品とは違った表現が求められることを意味する。アニメーションから実写作品までボーダーレスに活躍する神木隆之介は、キネマ旬報2016年8月上旬号で、声の出演に関して「演じるということに関しては同じくくりですが、その中で対極にあるものだと思っている」と語っている。だから、実写作品とは別物である声の出演を経験することは、俳優としての成長につながるはずだ。

 神木のように実写とアニメーションの両方で活躍する俳優が次々と現れ、声優と俳優の垣根がなくなりつつある現在。実写映画二部作の前編が現在公開中で、テレビアニメーションが4月5日からTOKYO MX他で放送開始となる「サクラダリセット」のように、実写版とアニメーション版を同時期に製作する作品も出てきている。

 このままいけば、いずれ両方を同じキャストで製作する作品が現れることも十分考えられる。もちろん、俳優がアニメーションに出演するだけではない。「真田丸」で人気を集めた高木渉のように、声優から実写作品への進出もアリだろう。

 実写とアニメーションの垣根がなくなることで、より魅力的な作品や俳優が生まれる…。星野や高畑の活躍を見ていると、そんな時代が来るのも悪くないという気がしてくるのだ。(井上健一)


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